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「はあ〜、悔しいなー、もう少しで米沢だったのに」
TWから降りると、僕は力なく道端に座り込んだ。
「残念…もう少しだったね」
僕の肩をポンと叩くと彼女は隣に腰掛けた。
「でも私、あーゆーのって嫌じゃないなー。あれって人生のもあるでしょ!例えるなら挫折かな〜。私なんか挫折を乗り越えこーんなに人間が大きく…」
「みなみちゃんの大きいって態度じゃ…」
僕をフォローしてくれている彼女に、なぜか僕からは天邪鬼な言葉が出ていた。
「なんて事を言う!」
次の瞬間、彼女の拳が僕の肩口へと飛んだ。
「いてて!」
「それは天罰です!」
底抜けな笑顔を見せる彼女に、僕の心に差していたへこみも一瞬で吹き飛ばされていた。
そんな二人のすぐ側には磐梯山が荒々しい山肌を見せそびえ、反対側に眼を移すと広大な吾妻連峰の山塊が横一面に連なり、山頂は紅く色付き紅葉の気配を感じていた。
眼の前に広がる湖の穏やかな湖面には、優雅に雲が流れていく景色を映し出し、気が付くと彼女がくわえたタバコがフワリ青空へ舞い上がり、その蒼い煙の行方を僕は何処までも追っていた。
いつもは見逃してしまうもの…身近にある何気ないもの…それらを僕は心地良く感じていた。
そんな気持ちに浸る僕の膝の上には、今までの旅の行程が蛍光ペンで記された彼女の地図が広げられていた。
「そこを走っていた頃は、まだ旅が始まったばっかで、周りを見る余裕がなく一生懸命走っていたな〜」
「へぇー、今のみなみちゃんからは想像つかないなー」
「北海道でのんびりしているうちに、そーなったのかなー」
そう言うと彼女はニコッと笑い。
僕は北海道という地名に妙に納得させられていた。
彼女が煙草を吸い終えると、進路は再び喜多方へ…。
そしてマイクさん…熊さんの言っていた言葉の意味がほんの少し分かったような気がした。
日差しは僕と彼女の頭上に注がれ。
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小説 第八章
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