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やがて納屋の奥へと入ると友人はある一角で止まった。
「ちょっと見てくれよ!フフフ!」
そこに置かれていたのはかなりいじられた一台のバイクだった。
それは、エンジンの裏側からボルトに至るまで磨きこまれ、乗られた形跡など全くなかった。
「フフフ!すげーだろー!エンジンから足回りに至るまでぜーんぶ手が入っているんだぞ〜、この一台を仕上げるのにすんげーバイク集めたぞー!!」
「回りに転がっているバイク…この一台の為に?」
「フフフ!そうだよ、このZちゃんの為さ〜!フフフ!」
一台のバイクに喜びを抑えきれない友人。
でも周囲に転がるバイクが自分に似ているようで、僕は素直に笑う事は出来なかった。
「おー!すっかり忘れていたよ!フフフ!自動車探しているのだったよね」
そう言うと友人は更に納屋の奥へと入り、突然足が止まるとポンと自動車の屋根を叩いた。
「フフフ!どうだ?型は古いけど、まだまだ走るぞ〜」
「うん…そうだなー」
その車を一回り覗き込んだ。
「ふーん、CDやエアコンも付いている…装備だって悪くないな」
その自動車を購入しようとした時だった。側に転がり埃まみれのバイクに目が止まった。
「これ動く?」
あーこれ?この太いタイヤZちゃん使えるかと思ったけど、全然役に立たなかった奴だ〜」
そう言うと友人は、横たわって宙に浮いた後輪を蹴ると、太いタイヤはカラカラ音を立て回っていった。
「走るのじゃないかな〜?」
「うん、じゃあこれにする」
「こんなのでいいのか〜?」
友人は目を丸くし、僕は転がっているバイクにニコッと微笑んでいた。
これが僕とTW200との初めての出会いだった。
あの時…TWと出会った時、こんな駄目になった僕をどこかへ連れて行ってくれそうで…そうTWが言っていたようで…。
振り返ると、そこにあの時のTWがいた。
“さあ何処へ行く?”
僕を待ちわびるTW200。キックを踏み降ろすとTWは元気に目覚めた。
心臓の鼓動のように一回一回刻む排気音。それはとても心地良く、僕の心を落ち着かせていた。
“いよいよ発進だ!”
ギアを入れ、後方へ視線を送ると、彼女からは親指をぎゅっと立てた右手がスーッと突き出され、それを合図に僕と彼女との旅が始まった。
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小説 第八章
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