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ヤマハ2スト気まぐれ日記(時々TWと山遊び)

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小説 第十章 その1

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第十章       二人の夜
 山形県小野川温泉
 
福島県と山形県の間に横たわる巨大な峠、大峠。その何処までも深い山塊の懐へ入り込んでいくTW200とセロー。深緑が続く道を駆け登っていった。
 
気が付けば、太陽の日差しは肩口の方向から差し込み、もう夕刻の時間になっているのを感じた。
 
眼の前には大きくうねるカーブの連続。
 
シフトダウンでカーブに突入すると、少し遅れ後方からもシフトダウンする音が響き。カーブを駆け抜け一気に加速すると、繰り返すかのように少し遅れ後方から元気に弾けるバイクの音が耳に届いた。
 
それはまるで路上で奏でる輪唱のように…。
 
 
“もうすぐだ…ここを越えると…”
 
峠のピーク付近に近づくとトンネルの連続が続き、その最も長いトンネルを抜けた。
 
そこから眼の前を塞いでいた巨大な山塊は消え、道の下りの勾配へとなっていた。一気に山の麓をめがけ駆けていった。
 
するとたちまちの間に山間に囲まれた小さな温泉街へ辿り着いた。
 
「今夜のキャンプ…この公園はどうかな?」
 
温泉街の入り口に整備された公園。そこに停められた二台のバイク。
 
彼女の表情を伺いながら、僕も一緒に公園を眺めていた。
 
「へぇー」
 
公園を見渡し終えると彼女の表情は瞬く間に輝いた。 
 
「わぁー!ちっちゃい公園だけど立派な東屋があるし、芝生がきれい!それになんたってトイレが水洗だ〜!大感激だよ!!」
 
キラキラと輝く彼女の瞳に映っている小さな公園。
 
鮮やかな緑が広がる芝生と、その中央には東屋が建てられ。側では渓流が賑やかにせせらいでいた。
 
そんな彼女の表情を見ていると、表情を伺っていた僕の顔もニコッと輝いた。
 
「ここに決定!ありがとね!栗っこくん!!」
 
彼女の人差し指がビシッと公園を指すと、次の瞬間僕の両腕を掴み、キラキラとした眩しい笑顔で僕を見つめた。
 
そんな彼女の顔を何故か見れない…。
 
“顔から火が出そうだ…”
 
「さ〜あ!今夜の宿組み立てるよー!」
 
彼女の号令と共に早速キャンプの準備が始まった。
 
東屋を挟み、それぞれテントを組み立てる二人。
 
「みなみちゃーん、せっかくだから温泉にでも入らない?」
 
「栗っこくん…ひょっとしてここ混浴…?」
 
「大丈夫だよ、男女別々だから!」
 
「あー良かった、栗っこくんってスケベそうだったから」
 
いたずらに笑う彼女に僕は小声で囁いた。
 
「どーせ大した身体じゃないのに…」
 
「何か言いました!」
 
小声で囁いたはずが、彼女にしっかりと聞かれ、彼女の方を向き、すぐに謝った。
 
「ごめん!ごめんなさい!」
 
「うん、今回は初犯だし特別許してやるか!」
 
腕組みしながら、小さくなった僕を満足そうに、そしていたずらそうに見ている彼女。だけど、次の瞬間、僕達はなぜだかクスクスと笑い合っていた。
 
“なぜだろうか?こんなに心の底から自分自身を出せるのは?”
 
“キャンパーの雰囲気?…それとも彼女と一緒だから?”
 
“もしかして僕は彼女の事を…”
 
「ねえ、栗っこくん!コインランドリーってここにある?」
 
「たしか、共同浴場の側にあったなー」
 
「じゃあ、温泉に行くついでに洗濯だ〜!」
 
「うん!」
 
静かな温泉街の片隅で二つの声が弾んでいた。
 
早速、組み上がったばかりのテントの中で、それぞれ温泉に行く支度を始め、僕は素早く準備を終えてテントから出た。
 
締め切った彼女の小さなテントは微妙に揺れていた。
 
“みなみちゃんはまだか…”
 
微妙に揺れていたテントのファスナーが静かに降り…。
 
「これに着替えてもいいかな…」
 
少しだけ開いたファスナーからは、ジーンズの裾を大胆にカットしたホットパンツが出され。テントの隙間からは彼女の恥らう表情と、その先には彼女の細い首からしなやかに延びていく鎖骨が…。
 
その光景に僕の眼は釘打たれてしまった。
 
「そーかー、やっぱりダメかー」
 
僕は返す言葉を忘れてしまい、彼女は再びテントの中へと消えてしまった。
 
“その長い足が見たい!いや、じゃなくそのホットパンツ似合うよ!”
 
出そうとした言葉が空回りになってしまった…。
 
後悔先に立たず…。
 
「じやーん!どう?見てみて!」
 
次の瞬間、満面笑みの彼女と肩口から袖を取り去ったGジャンに、膝から裾を切り取ったジャージ姿に着替えてテントから現れた。
 
「どーって言われても…ヘン!」
 
「失礼なー!これでも気合入れたのに!」
 
僕は下を向き素知らぬ振りをし、彼女の頬はたちどころに膨れていた。
 
でも、初めて見る彼女の姿は妙に似合っていた。
 
共同浴場とコインランドリーに向かう歩く二人。
 
もう太陽は山の向こうに隠れ、西の空は真っ赤に色づいていた。
 
山間の小さな温泉街は湯煙に包まれ、わずか数百メートルの通りに密集して並んだ旅館や土産物屋の窓明かりが燦々と輝き、日の落ちた通りに彩を放ち、そこを旅館の浴衣をまとった人達がちらほらとまばらに歩き、どこか長閑な光景が展開し、僕達はその光景の中をゆっくりと歩いていた。
 
その二人が歩く足元の側溝からは、硫黄に香りがする蒸気がふわり舞い上がり、それが彼女の膝小僧にじゃれてゆき、視線を少し上げると、柔らかい動きで前後する、健康的に焼けた細くきゃしゃな腕が、誘惑するかの様に直ぐ側に迫っていて、僕の視線が奪われてしまった。
 
「栗っこくん!どうかした?」
 
「えっ!あっ…いや、みなみちゃんの腕…綺麗に焼けているなーって」
 
動揺している僕に、彼女は全然気付かず…。
 
「あっ!これかー、私ってもともと肌の色が黒いんだ。ほら、ここもこんなに!」
 
何の躊躇も無くジャージの裾をまくり上げると、そこからは彼女の小麦色の太腿があらわになった。
 
「ねっ!」
 
「う…うん…」
 
眼のやり場に困りながらも、視線はそこへ行ってしまう…。
 
ゆっくり呼吸をしながら高鳴る気持ちを抑えながら歩いた。
 
やがて、旅館と旅館との狭い空間に押し込んだコインランドリーに到着した。
 
コインランドリーの中へと入って行く彼女、僕はコインランドリーの入り口の前にちょこんと座り、空を見上げていた。
 
“栗っこくん、頭で考えるより、その身体で体験した方がよく分かるぞー!明日になったらその答えの見えるさ!”
 
“身近な現実…あの心地良いキャンパー達の作り出す雰囲気…”
 
まだかすかに蒼さが残る空に、星が一つ輝いていた。
 
“明日になったら僕は…全て分かるのだろうか?”

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