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ヤマハ2スト気まぐれ日記(時々TWと山遊び)

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小説 第十章その6

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「それ、どうしたの?」
 
「ちょっと借りちゃった」
 
いたずらに笑う彼女に、僕は巻き込まれていった。
 
「まー、栗っこくん!乗って!乗って!」
 
パイプで組まれた荷台が差し出され、そこへ腰掛けると、一輪車はちょこんと持ち上がった。
 
「じゃあ、行くよ!」
 
彼女の押す力、両足がアスファルトを強く蹴張ると、一輪車はゆっくりと走り始め、やがて後方から弾む呼吸と共にぐいぐいと加速し、頬いっぱいに浴びる風のシャワー、ゴツゴツとダイレクトに感じる路面の感触、流れゆく景色のスリリングなスピード感、必死になって一輪車に掴まる。
 
“この道は!”
 
気付くと辺りは暗闇。ここはさっき二人が歩いた渓流へと続く細道。やがて険しく長い坂道に差し掛かると、後方から聞こえていた弾んだ息が荒れた切れ切れなものとなり、一輪車の速度はみるみる落ち、坂を登りかけた所で彼女は力尽きてしまった。
 
「ハア!ハア!」
 
「ハハハ!残念、僕が運転するから乗って!」
 
座り込んでいた彼女が荷台に腰掛けると、僕は一輪車を持ち上げて、坂道からの発進となった。
 
両足に力を込め、一歩二歩アスファルトを蹴っ張ると、一輪車は右へ左へと大きく蛇行を刻みながらゆっくりと登り始めた。
 
「がんばれ!がんばれ!」
 
“この感じ!”
 
彼女から送られる声援、額から汗がほとばしり一生懸命一輪車を走らせる。まるで僕がさっきのおばあさんになったように…。
 
「もうちょっと!がんばれ!」
 
その声援に押され、切れ切れの息でも必死になって登っていく。
 
「やったー!すごい!すごい!」
 
坂を登り切ると歓喜が飛び、余韻に浸る間もなく一輪車を反転させ、今度は坂道を下っていった。
 
「うわー!すごいスピード!」
 
歓喜が再び飛び、彼女の長い髪がなびく。足が追いつけぬほどスピードは上がり、一輪車は暗闇を一気に駆け抜け大通りへと戻った。
 
「栗っこくん、すごい!すごいよ!」
 
荷台からは無垢な笑顔が送られていた。たが、立ち止まった瞬間、体内を停滞していたアルコールは一瞬にして身体中を駆け巡り、その場に座り込んだ。
 
「大丈夫?」
 
「うん、大丈夫…」
 
心配そうに顔を覗き込む彼女の前、格好良く立ち上がろうと両足に力を入れたが、意思とは反対に身体は大きく横へ振られ、路上へ吸い込まれそうになった。
 
“!?”
 
その瞬間、倒れ込もうとした僕の手首を彼女がギュツと掴み、僕の身体は引っ張り上げられた。
 
「やっぱり大丈夫じゃない!」
 
叱られて力無く笑っていた。
 
「さあ、行こう!」
 
彼女に手を引かれ、コインランドリーへと歩き出した。頬に感じる柔らかな風、左手には暖かな感触。走ったせいなのか?酔っているせいなのか?心臓が高鳴っていた。でも、いつまでも感じていたい心地良い気分。
 
その時、彼女の胸元からメロディーが流れ、結ばれた左手は解かれた。
 
「あっ!もしもし…うん…今どこ?」
 
携帯電話の向こうの相手と会話を始めた彼女は良い表情をしていた。
 
昨夜はあれほどまで葛藤したのに、今夜はその表情をいつまでも見守っていたかった。

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