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第十一章 十月九日 福井県三国町
白い波しぶきが舞い上がる日本海。二人の男が防波堤に腰掛け、熱いコーヒーをすすり荒れ狂う海原を眺めていた。
「熊さんのナビゲーションがいいから、一日で福井に到着だ!」
「キャンピングカーでバイクの後…着いて来るの…大変だったのじゃ…」
「ハハハ!これも熊さんの腕が良いからさ!」
「マイクさんに…言われると照れるな…」
楽しく響いていた会話は一瞬途切れ、男達は再び静かに海を見た。その視線の先には激しい音と共にテトラポットに打ち砕けながら男達に飛びかかろうとしている白い波。
「…マイクさんがあの伝説のキャンパー…ジンさんですよ…ね?」
「やはり熊さんは分かっていたのか…」
ニコッと微笑み熊さんを見るマイクさんの目は真っ直ぐだった。
「マイクさん…マイクさんの旅…そのパシルの為に続けて…いるのですか?」
マイクさんは穏やかな表情で両腕に抱かれたパシルを撫でた。
「ああ…そうだよ」
うつむいた熊さんの顔に波しぶきがふりかかった…。
「…世界の悲しみ…背負うキャンパー…ジン…その悲しみが降り掛かった愛犬パシルを救う為に旅…続ける…」
その熊さんの言葉にマイクさんは穏やかに微笑んだ…。
「熊さんはまだまだ旅を続けるのか?」
「はい…」
「あの罪は熊さんのせいじゃないぞ…あれは時代が起こした過ちだからな!」
「マイクさん…俺の事…知っていたのですか」
「ああ」
ニコッと微笑みあう二人の男…荒れ狂う波、穏やかに眠るパシル…
「俺の罪…人々の心から消えるまで…旅を続けようと…」
「そうかーじゃあまだまだ旅は続くな…」
そこから無言の時間が続いた…
「そう言えば栗っこくん…今日…答え見つかるかな?」
「きっと見つかるさ!」
熊さんは眉間にしわを寄せ、不安そうな顔をしていたが、マイクさんは確信したかのようにきっぱりと言い切った。
二人に絶え間なく降りかかる波しぶき。顔を拭い、マイクさんは再び口を開いた。
「みなみちゃんと一緒なんだから、大丈夫さ!」
「そうだ!そうかも…でも…みなみちゃんと一緒だと…もう一つ別の答え見つけるかも…」
「かもな…好きという答えも…でも行き着く答えは、俺と熊さんが求めたモノと同じになるはずさ…」
マイクさんの口元はニヤッと微笑み、熊さんは上空を見上げた。
「マイクさん、この雲だともうじき雨が降りそうだよ」
「よしっ!雨が降る前に出発するか!」
男達は旅立ちの支度を始めた。
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小説 第十一章
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