ヤマハ2スト気まぐれ日記(時々TWと山遊び)

「あなたがコメントした記事」欄に過去にコメントした」記事が載った場合、勝手ですが削除する事を容赦下さい?(_)?

小説 第十二章その8

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全1ページ

[1]

第十四章 もうひとつの旅
 
 降りしきる雨、男は佇んでいた…。
 
 全身がずぶ濡れになり、身体は小刻みに震えていた。
 
 「僕はどうしてここに来ているのだろう…」
 
 男は考え込んだ…。
 
 「自販機であの缶コーヒーを見てから僕は…いつの間にここに来てしまった…」
 
 小さな公園に佇む男の目の前には小さなテントがあった。
 
 「ここに戻ってきて…彼女に何て言えばいいのだろう…もしかして拒絶されるかも…」
 
 男は深い溜息を付いた…。
 
 “これが本当の正しい答えなのだろうか?”
 
 “全てを捨て…何もない場所から未来の無い人生を始める事なんて…”
 
 “あ〜〜っ!やっぱり僕はバカな男だ!!何をやっている!!いま戻ればまだ社会に復帰出来る!”
 
 「よしっ!戻ろう…」
 
 悩む男…その時小さなテントが小刻みに揺れ、男の身体は固まった…。
 
 “ど、どうしよう…”
 
 ゆっくりと降りるテントのファスナー…そこから彼女の顔が…。
 
 男の心臓が大きく高鳴った。
 
 ゆっくりと顔を上げる彼女は目の前に居る栗っこを発見すると、目がキラキラと輝き始め、嬉しそうな表情をした。
 
 「ただいま…みなみちゃん」
 
 彼女の表情を見た瞬間、僕の行動に間違いが無かった事を確信した。
 
 気が付くと僕の胸元に飛び込む彼女…そして僕は彼女をそっと抱きしめた…。
 
 打つ付ける雨が僕達を手荒く祝福してくれた…
 
 そして僕のこれからの人生に新たな階段が開かれていった…。
 
 身近な幸せを大切に…そして身近な幸せを感じて…。
「なんか静かになっちゃうね…」
 
「えっ!そう?僕はもともと口数少ないから…」
 
「嘘ばっかし…」
 
さっきまで何気なく交わしていた会話が今じゃ重々しい。
 
だだ、駅舎の出入り口の方向からは外の光が差込み、その方向へ足を進めていた。するとその向かっている方向から、誰かがこちらに向かって歩いて来た。
 
それは白い巨体の男だった。
 
二人の間に緊張が走った。
 
僕の右手は臨戦に備えて拳を固く握り締め、徐々に巨体の男との距離が…。握り締めた手には汗がにじみ、もはや接触するまでに迫った。
 
「あのー」
 
“ドキッ!”
 
巨体の男に呼び止められ、飛び出しそうな心臓を抑えながら、決戦の覚悟は出来ていた。
 
「なっ、何か?」
 
「この先に新幹線 が停まる駅 があるのですか?」
 
「え…ええ、この先ですよ」
 
蛍光灯の灯りが輝く、ホームの方向を指差すと、巨体の男は一礼しホームのある駅舎の奥へと向かっていった。
 
振り返ると、巨体の男の背にはまだメモが貼り付けられたままで、それを見た僕と彼女はバイクまで一気に走り、辿り着くと大声で笑い合った。
 
「みなみちゃんって本当にいじわるー」
 
「でも、栗っこくんはもっと悪い事しようとしたでしょう!」
 
「ハハハ!そうかも、でもまだ嫌らしい笑いを浮かべていたよ!あいつ」
 
「えー!それって嫌だなー、もっと貼り付けちゃえば良かった!」
 
笑い声が途絶える事が無い二人は、その流れに乗ったままにヘルメットを被り、TWとセローのエンジンを始動させた。
 
「じゃあ行くよ」
 
「国道一三号にぶっかったところでお別れだね」
 
その言葉に僕は静かに頷き、TWを発進させた。
 
雨に濡れた峠の道、身体中に打ち付ける冷たい雨。このバックミラーに彼女の姿が映っているのもあとわずか。でも…今なら笑ってさよなら出来そうな気がしていた。
 
樹林が生い茂る道を抜け出すと、そこには大河のように横たわっている国道が現れた。右に行けば福島県に抜け、その先には東北自動車道。僕が立ち向かい、勝ち取らなければいけない現実がある。左へ行けば米沢へと戻り、まだ残されている彼女の夢が続いていた。
 
そして僕が描いていたシナリオが完結する時が来た。
 
“苦労して彼女を捜し出し…感動の再会”
 
“キャンパーの不思議な空間を二人きりで過ごす…”
 
“…そして別れの時、彼女の姿が見えなくなるまで見送る…いつまでも”
 
激しく交通が行き交う国道の手前で、二台のバイクが止まった。
 
「今度は僕が見送るから、みなみちゃんが先に行っていいよ!」
 
「私こそ、栗っこくんが視界から見えなくなるまで見送るから、先に行っていいよ!」
 
互いに見送りを主張し、収拾がつかなくなり。握った右手を上下に動かし、じゃんけんを誘うと、彼女も握り締めた右手を出して、見送り役を決める事になった。
 
その勝負の結果は、僕がチョキ…彼女はグー。
 
「しょうがない…僕が負けたから先に行っていいよ!」
 
「何言ってるの!私が見送り役でしょ!」
 
最後まで途切れることが無い笑顔。
 
「じゃあ!また!」
 
「じゃあ!また!」
 
別れの言葉を交わすと、雨の国道を福島に向かって走り出した。
 
バックミラーにはいつまでも彼女の姿…。
「栗っこくん、ここは私が払うからね!」
 
その様子に気付いたのか僕の前に割って入ると、企みの笑みを浮かべながら彼女はレジへと向かい。支払いを済ませると瞬く間に反転し、その側に腰掛け注文待ちする巨体の男の背に何かを貼り付けた。
 
“メモ用紙のような…紙切れ?”
 
「みなみちゃん、あの男に何をしたの?」
 
「まー見てみて!」
 
押し殺している彼女の笑顔に、僕は男の背に張られた紙切れに目を細めた。
 
そのうちに近くに座るアベックがメモに気付き、小声で笑い。素知らぬ振りする店員も口元と肩が小刻みに震え、笑いに陥るのを必死にこらえていた。
 
「あっ!あのおにーちゃんスケベ“ヘン…クマ?”なんとかだって!」
 
家族連れの子供が巨体の男を指差し、大声を上げ。その声に気付いたのか、巨体の男はしきりに後ろの方向を気にし始めた。
 
「逃げろ!」
 
彼女は僕の手を取ると、一目散に走った。暖かで細い手に引かれ、水溜りを弾き、砂利に足を取られそうになりながらも、気が付くと駅舎の中へと走り込んでいた。
 
「ハハハ!みなみちゃんやったなー」
 
切れる息、座り込んだ二人。
 
「でも、栗っこくんは一触即発だったぞ!」
 
「やっぱ、ばれてた?」
 
上目遣いで彼女を伺うと、そこから戒める視線が投げられていた。
 
「ばればれ、暴力なんてダメ!」
 
「ごめん…」
 
その言葉に、深く落ち込んで行った。でも、次の瞬間彼女は静かに僕を見つめ…。
 
「栗っこくん…ありがとう…」
 
暖かで大人っぽい口調にハッとして顔を上げると、すぐそこに彼女の深い眼差しがあり、僕はその瞳に吸い込まれそうになっていく…。
 
“もし理性とゆうものが飛んでしまい、この身体と心を彼女に委ねられたなら、きっと全てが変わってゆく”
 
身体は彼女の方へ接近していき、僕の両手が彼女の背を回り込もうとした時。
 
「ねぇ!栗っこくん!新幹線見に行こう!」
 
そこにはもう、いつもの彼女がいて、僕は一瞬で力が抜け落ち、周りこんだ両手はだらり地に着いた。でもそれが一番彼女らしかった。
 
立ち上がって、ホームを目指し、埃にまみれた長い駅舎を歩いた。
 
鉄骨の骨組みに外壁が貼り付けられただけで、駅舎は簡素な造りをしていた。その天井は高く、地面には砂利が敷かれ、建物の奥の中央部にはポッンと蛍光灯の灯りが輝き、その場所には一段盛り上げられた駅のホームらしいものがあり、人気は無く静まり返っていた。
 
「新幹線 が停まるのに無人駅 ?」
 
「うん」
 
改札口は無く、ましてや駅員も居ない。ホームには僕と彼女しか居なかった。だだ、この場所には蛍光灯の灯りと、空欄だらけの時刻表が立っていた。
 
「新幹線は来るのはあと一時間後か…」
 
時刻表をなぞっている彼女の肩は落ちていた。でも、僕は妙な諦めがついた。
 
「うん、行こうか…」
 
別れへと向かう道、僕の中に感情が重くのしかかっていた。それは昨夜あれからずっと考えていた事。
 
“彼女と別れる時、泣いてしまうのじゃないかと…”

全1ページ

[1]


.
qaq*64
qaq*64
男性 / AB型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
友だち(14)
  • KR-1
  • 機械小僧
  • シゲキ
  • N特急
  • shoorz
  • 親子
友だち一覧

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

Yahoo!からのお知らせ

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
11/30まで5周年記念キャンペーン中!
Amazonギフト券1000円分当たる!
話題の新商品が今だけもらえる!
ジュレームアミノ シュープリーム
プレゼントキャンペーン

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事