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手に負えなくなった犬や猫などを手放すとき、動物団体の前や動物病院の前に置いておけば助かる可能性が高いのではないかと安易に考えて、置かれる側の負担や迷惑を省みずに、これらの場所にすてるケースが見受けられます。

このような悪質なケースで捨てられた犬や猫などを発見した人が遺棄事件として警察に通報しても、いろんな理由をつけられて、結局、遺棄事件としてまともに取り上げてもらえないという話を聞きます。

動愛法の条文には「遺棄」としか書いておらず、「遺棄」の解釈について争われた過去の裁判例もありません。
解釈・判断する人がおらず、拠りどころとなる文献などもないため、警察や動物行政関係者も「遺棄」に該当すると言い切れないのではないかと想像します。

そこで、私の意見を述べます。
ちょうど動物遺棄罪の成否に関する意見書をつくったところで、その内容は一般化できると思われることから、若干の加工をした上で公開します。

                        2012年(平成24年)8月2日

                   動物遺棄罪に関する意見書
                  
                               弁護士 細 川 敦 史  
                                

 この度、Aの施設が立地する敷地内に猫が棄てられた事件に関し、愛護動物の遺棄罪(動物愛護管理法第44条3項。以下、「動物遺棄罪」といいます。)の成否について意見を求められたので、当職の意見を以下のとおり申し述べる。

第1 結論
 猫を動物愛護団体の施設が立地する公園敷地内に棄てた場合、「愛護動物を遺棄した」に該当し、動物遺棄罪の構成要件に該当するものと思料する。

第2 理由
1 はじめに
 本件事件について動物遺棄罪が成立するかを検討する上では、いかなる行為を「遺棄」というのか、すなわち、人に対する遺棄罪(単純遺棄罪・刑法第217条、保護責任者遺棄罪・同第218条)と同じく、保護法益や、抽象的危険犯か具体的危険犯かを検討する必要がある。
  
2 人の遺棄罪の保護法益
 人の遺棄罪の保護法益は、「人の生命の安全」という個人的法益であるとされている。
 そして、「遺棄」といえるためには、「要扶助者を移置するだけでは足りず、それによって、要扶助者の生命に危険のある状態を作り出すか、危険を増加させる性質を有する行為であることを要する。しかし、法文上具体的な危険の発生が明記されていないから、本罪は生命に対する抽象的危険犯と解すべきである。」とされている(大谷實『新版 刑法講義各論』)。
 但し、他人の適切な救助が予想されるなど(例えば、捨子した後に他人が救助するのを見とどけてから立ち去る場合)、社会通念上およそ生命の危険が発生しないとみられる場合には、本罪を構成しないとされている。

3 動物愛護法の目的、動物遺棄罪の保護法益
 これに対し、動物愛護法は、「動物の虐待の防止、動物の適正な取扱いその他動物の愛護に関する事項を定めて国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資するとともに、動物の管理に関する事項を定めて動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害を防止することを目的とする。」と定めている(第1条)。
 すなわち、動物愛護法では、動物の生命・身体の保護は、直接的・究極的な目的とはされていない。わが国の国民の間に一つの法規範にまで高められた動物愛護の精神を一つの社会的秩序として保護しようとするもの、すなわち、「動物愛護の良俗」という社会的法益を保護しようとするものである。動物愛護法は、いわゆる風紀法と言われるゆえんである。
 そして、動物遺棄罪の保護法益は、動物愛護法の目的と同様、動物の生命・身体の安全そのものではなく、前記「動物愛護の良俗」であるとされている。

4 動物遺棄罪における「遺棄」の解釈
 以上の保護法益の解釈によれば、動物遺棄罪は、遺棄動物の生命・身体に対する危険があるかにかかわらず、対象動物の移置ないし置き去り自体を「動物愛護の良俗」を害する行為として処罰の対象としていると解すべきであり、そのような解釈が自然である。
 また、人の生命の安全を保護法益とする遺棄罪でも、捨子を救助するのを見とどけずに立ち去った場合は成立するのに、社会的法益を保護法益とする動物遺棄罪の場合に、同様の行為をしても成立しないとするのは、明らかに均衡を欠く。

5 「動物愛護の良俗」に限らない保護法益
 さらに、動物を遺棄した場合、例えば棄てた場所が動物愛護団体の前であっても必ず拾われるとは限らない。その場所から離れ、犬であれば野良犬となって人の生命身体に危険を及ぼす可能性があり、また、猫であれば野良猫となって人の生活に迷惑を及ぼすおそれがあるところ、動物遺棄罪を適用することでこれらを防止する必要がある。
 不妊去勢手術がされていない犬猫が遺棄された場合は、容易に繁殖して地域の生態系に影響を及ぼすおそれもあり、これを防止する必要もある。

6 まとめ
 以上のとおり、動物遺棄罪は、当該遺棄される対象動物の生命の安全を守る側面よりも、社会的法益としての「動物愛護の良俗」が強調されている。それに加え、動物が放たれた場合の動物による人に対する問題を防止する付随的な目的もあると考えられる。
 そうであれば、対象動物を棄てる行為そのものが「動物愛護の良俗」という社会的法益を侵害するものであり、また、将来人に対する侵害を引き起こす行為として、社会的非難が相当し、動物遺棄罪を構成すると考えられる。
 よって、動物遺棄罪の成立には棄てた場所は関係なく、動物愛護団体など、一般的に保護されると考えられる場所に棄てた場合であっても、「愛護動物を遺棄した者」に該当する。

7 おわりに〜動物遺棄罪の存在意義 
 動物を棄てる者は、動物が苦しんだり死なせることの良心の呵責から解放されたいとの身勝手な思いから、他者の迷惑を省みず、いわゆる動物愛護団体の前に棄てるケースが非常に多い。
 しかるに、このような典型的な動物遺棄の行為態様についても「遺棄」に該当しないとするならば、動物遺棄罪が成立するのは、人気のない山奥に棄てた場合など極めて限定的なものとなり、同罪は、まさに「絵に描いた餅」として存在意義のないものになってしまう。
 ひいては、動物愛護団体など保護して適切に取り扱ってくれそうな場所に棄てておけば犯罪にならないとして、これまで以上に動物の遺棄を助長することにもなりかねない。
 安易な遺棄を防止するとの観点からも、本件については動物遺棄罪に該当するものとして、積極的に検挙・立件をすべきである。
                                         以  上

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2012/8/17(金) 午前 9:49 八街のブリダー 返信する

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細川弁護士 こんにちは♪
私も環境省に意見書を送ろうかと思っています。先生の意見書を参考にさせて貰いますね(●^o^●) 削除

2013/1/29(火) 午後 1:09 [ shinobu ] 返信する

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