|
|
ドゥカティ L-ツインの考察
[ リスト | 詳細 ]
|
|
|
|
|
ドゥカティ社のエンジンで私が最も興味を惹かれるのは、特異なデスモドロミックバルブ機構とL型と呼ばれるシリンダー配列である。ドゥカティエンジンの代名詞としてもうひとつ、乾式クラッチがあるがその整備性を除けばメリットは少ないというのが私の見解になる。 クラッチ板がオイルを攪拌せずロスが少ない、あるいはクラッチハウジングの小型軽量化というメリットが強調されるようだが、その排気量と出力を考えれば損失は微々たるものだろう。 そして何よりも、単板ではなく多板の乾式クラッチは、扱いに神経を使うものである。 916系の4バルブ水冷エンジンにも、乾式クラッチが採用されている。 発進時にジャダーが出やすい乾式クラッチを公道で使用する場合、とくに消耗が激しいのはクラッチハウジングである。そしてハウジング交換のたびにクランクケースカバーの分解が前提となるのであれば、整備性という面から考えても乾式であることのメリットはほとんどなくなってしまうのだが・・・ |
|
分解作業に入る前に、デスモドロミックというバルブ開閉機構について触れておく。 デスモドロミックとは、バルブの開閉にコイルスプリングを使用せず1本のバルブに対しふたつのロッカーアームによって強制的に開閉を行う機構である。その作動については動画を参照していただきたい。 当初シングルエンジンのみを生産していたドゥカティだが、他社製の高出力ツインに対抗するために、エンジンを高回転化し出力を稼ぐ必要にせまられる。ホンダの場合はエンジンの多気筒化という選択をするのだが、ドカティのF・タリオーニは、シングルエンジンのままデスモドロミックへのトライをはじめる。1956年、3本カムのトリプルノッカーが採用されたデスモレーサーが世界GPに投入されて以来、半世紀以上、ドゥカティはデスモとともにある。 デスモドロミックの特徴はひとことで言うと「バルブスプリングを持たないこと」である。 このため、エンジンを高回転化する上で大きな利点が生まれる。 ■高回転域でのバルブサージングが発生せずカムへの追従性に優れるため、バルブタイミングを 厳密に管理できること。 ■バルブスプリングを持たないため、バルブ開閉のフリクションロスが極端に少ないこと。 いずれも、多気筒化せずに高回転化を果たすには決定的なメリットとなるが、その裏で □バルブスプリングを使用しないために密閉力が弱いこと。 □バルブシートを利用したバルブの冷却能力の不足。 というデメリットもうまれる。 ドゥカティは現在でも、バルブクリアランスの調整サイクルを極端に短く設定する必要があり、冷却についてはバルブガイドを積極的に利用することで一応の解決を見ているが・・・充分とは言い難い。 通常のバルブ開閉システムが、ホンダのVTECをはじめとする可変バルブタイミング機構の多彩なバリエーションを持つにいたったのに対し、デスモドロミックはカムの数を減らしたこと以外、大きな進化を遂げていないとも言える。 しかし、ホンダが1968年に発表したドリームCB750fourが世界的なオートバイエンジンの流れを変え、それまで第一線を走っていた英国製ツインが次々に姿を消していく中で、ツインのまま4気筒高回転エンジンの国産車勢に対抗できたのはドゥカティのみであり、それはこのデスモドロミックという機構がもたらした最大の恩恵ということができる。 |




