小説

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全1ページ

[1]

〜5話〜

マスターはキュッキュッと音をたてながらカップを磨いていた。





磨く手をしばしば休め、その度にある一点をじーっと見つめた。






今まで生きてきた短い様で長かった人生を振り返っても





何を考えているか読めない人間は二人目だ。






僕には大抵人間の考えている事が分かる。






誰からでも





いろんな相談をもちかけられた。






臨機応変に適当な解答、僕なりの考えを与えた。








人間は相談するが、





それは既に決まっている心に最後の押しが欲しくて解答を求める。






ただ肯定してもらうことで安心を得るために。






マスターは手を止めてこちらに話しかけてきた。







「キミどうしてここに来たの?」






あっけにとられる。






どうして?って、どうして?







店は利益を得るために、客を引き寄せて金をえる。






ぼくの考えはおかしいのだろうか…。







「たまたま目に入りまして…」






「そうですか」







店主はコップを念入りに磨きながら軽く返事を返してきた。






不思議でしょうがない。






利益を上げるために11時まで店を開けているだろうに…。





さらに不思議なのは、自分に対してかもしれないが、





全く店主とのやりとりに苛立ちや疲れがなかった。


開く トラックバック(16)

〜4話〜

さっきまで暖かく




優しく吹いていた風は




夏を追い払うように僕の背中を刺していった。





何食わぬ顔で僕を切り刻んでゆく。





それは僕にとってただの風であって、アルコールの入った体にはちょうどよかった。












(その日、砂埃の舞い狂う強い風が吹いていた)















月光は僕の影を作りだし、その黒いボクは足並みを揃えて少し前を進んでいった。





僕の足を地面に引っ張り込もうとする、黒いボクがそこにはいた。






一件の明かりが何故か明るく光りはなっていた。






こんな所に喫茶店があったか不思議に思ったが、あまりの輝かしさに無意識で入店してしまった。







外から見えた明るさほど明るくなく、むしろ落ち着きのある暗さがあった。






コーヒーのいい香りが店じゅうに広がっていた。






しかし誰も店にはいない、お客はもちろん店主さえもいなかった。






カランカラン






と鈴のなる音に反応してでてくる様子さえなく、ぼくだけが取り残された感じさえあった。






「あの〜、すみません!」






中から返事はない。






僕は後に引くのは嫌いなタイプなので、必ず一杯飲んで帰ろうと決意した。





「は〜い。」





白い髭。






体は大きくて威圧感さえある。






「いらっしゃいっ。」

〜3話〜

さっきまで明るかった舞と、まるで熟年離婚を宣告された弱々しい夫のような僕は並んで歩いた。




周りからはマンネリ化したカップルのように見られているのだろう。




舞は喫茶店の近くになると気が付かれぬようペースを少し落としていた。




その度に僕は入らないことを願った。




結局、改札口まで無言できた。




舞は僕の3駅さきに住んでいるので嫌でも一緒に帰らなくてはならなかった。




僕が切符を買っていると舞は定期で先にホームに入っていた。




舞の後ろ姿は悲しみと不安で疲れているように見えた。




このまま街中に走って逃げたい気持ちを押さえて、ホームに入った。




「話ってなに?」




こちらを向いて待っていた舞に話しかけた。




お互いが言いたいこと、言われる事を分かりながらの問いかけは、ばかばかしかった。




…。




長い沈黙が続いた。




「私ね新歓の時こうちゃんに初めて会って、何か冷たい人だなって思ったの。」




仕事に疲れたサラリーマン達は家に早く帰りたいのか早足で階段を降りてゆく。




「でもね会う度にこうちゃんの事ばかり見てたの。

こうちゃんって何も自分のこと話してくれないから目で見たことしか分からないの。

そんなこうちゃんの事もっと知りたいし、そばで支えたい。だから付き合ってください。」




ついに本人から言われてしまった。




やはり本人を前にしても面倒くさいとしか思えなかった。




「モテる奴はつらい」と言う言葉があるけれど、僕にとって全くその通りだ。









(あの頃は人を愛することにすべてをそそいだ)








「ありがとう。

でもおれ一人で生きていこうって思っているんだ。

舞の気持ちは嬉しい。

でも、俺と付き合うことでマイナスの事しかないと思うんだ。

ただ苦しんでぼろぼろになる友達なんて見たくない。

今の明るくてかわいらしい舞を失いたくない。

そのためには俺なんかを愛してくれるのではなく、もっと舞にふさわしい男を愛して欲しい。」





言い終わる前に舞の目には涙が浮かんでいた。




くだらない感情だ。



自分でも本当の事言っているのか分からない言葉に対して…。




線路を滑るように走る電車が時々鳴らす甲高い音。




電車の揺れと共に動くサラリーマンの首。




今日乗ってきた時間の2倍は長く感じた電車の束縛からやっと解放された。




一応舞に別れを告げ降りた。




戸が閉まる時、




「ずっと同じ気持ちでいるから。」

2話

〜金曜日〜



電車で10分揺られて集合時間30分前に着いた。



僕はどんな相手でも30分前には、待っているのが当たり前だった。



スーツを肩に掛け歩いているサラリーマン達は次々に居酒屋に吸い込まれていく。



大学生らしき若者達は大声を発しながらしゃべっている。



メガネをかけデパートの紙袋を持ちながら談笑しあうおばちゃん達。



カラオケの勧誘をしている二人。



あっという間に時間は過ぎ、だんだんメンバーは集まってきた。



翔がやって来た。



翔は僕の所にすぐに来るなり頭を下げた。



「晃一、ごめん。舞にしゃべっちまった事話しちまった。」



なんて正直者なのだろうか、僕には決して真似のできない行動だ。



「だからそこんとこよろしくね。」



よろしくねって、あまりに予想通りの行動には苛立ちさえ感じた。



最近よく思う。



なぜ翔は僕にくっついてくるのだろうか。



翔は昔の僕みたいに誰にでも明るく人当たりがいい。



そんな翔がどうして僕を友達に選んだのだろう…。



僕には心を許す相手は徐々にへり今では0に等しい…。



本音を言えば翔に対しても本当の自分を見せた事なんて無い。



ただ一度も…。



「かんぱ〜い!!」



今日の飲み会は舞主催の同学年だけの飲み会。



辺りを見回す僕。どこを探しても舞は見つからなかった。



「舞は?」



隣ですでに呂律のまわりがおかしくなっている翔に聞いてみた。



「バイトが延びちゃて遅れるから先に始めておいてって」



あまり会いたく無い僕には訃報だった。



舞は30分遅れてやってきた。



舞は目の前に座り注文をしている。



「こうちゃん来てくれたんだっ。良かった〜。」



安堵の表情はかなりかわいかった。



なぜこの女に惚れないのか自分にも不思議でしかたなかった。



舞はカクテル一杯でほっぺたを赤くして、いつもの様に話し続けた。






(公園のベンチに掛けて話し合ったあの頃…)






二次会に行く者は次の行き場を話している。もちろん舞も行くものだと思っていた。



「こうちゃん、話あるから一緒に帰ろう」



さっきまで子供みたいな目をしていたのに今は、そんな面影さえない。



こういう時は断ることをしたことが無い人間のように頷くしかなかった。

〜1話〜

僕は大学生である。

誰もが羨ましがる最高の時期である。

しかし、僕は何か物足りない毎日を戸惑いながら生きている。

これといった夢もなく、やりたい事はあっても時間と金が無く行動に移せない。

一番つらいのは彼女が今いないことだ。

彼女いない歴4年の僕にとってなによりつらい事実である…

大学生になってからは彼女を作ろうと努力はした。

しかし、結果がついてこなかった…


「こうちゃん飲み会来週の金曜に決まったから、ちゃんと来てよね〜」

笑顔で舞が予定帳を片手に話しかけてきた。

僕の名前は、内山晃一。

近所の中学、高校、大学と進学してきた。

近場に中堅の進学校があり近場にこれもまた中堅の大学があって悩まず進学した。

「晃一は舞のことどう思う?」

翔はまた聞いてくる。
「だから何とも思わないって言ってるっしょ…。何回聞いても同じだよ」

「そっか」

翔はお節介好きの変わり者である。ある日を境に同じ質問をバカみたいに繰り返すようになった。

実際なんでしつこく同じ質問をしてくるかは分かっている。
「晃一って彼女ほしいって言ってるよね?」

…。

「じゃーなんでだよ?舞は美人だし、性格だっていいだろ。
…もう我慢できないから言うけど、舞は晃一のことずっと好きなんだよ。
舞には言わないでって言われてたから言わなかったけど…」

翔は黙って離れていった。

僕はなんとも思わなかった。

普通なら彼女募集中で、

直接ではないけれど美人で性格がいい女の子に告白されたら、

うれしいにきまってる。しかしかえって面倒なことになってしまった。

翔は根っからの正直ものである。

つまり僕に話してしまったことを舞に話してしまう。

また悲しませてしまう…人との付き合いがふかくなると様々な障害がうまれる。

いつから僕は人との付き合いに壁をつくりながら接するようになったのだろうか…。

昔は誰もが口をそろえて

「明るいね」

「悩みないでしょ」

だとかとにかくポジティブな事しか言われなかった。

だからといって今が暗くなったわけではない。

昔の名残だろうか…。


だから無駄なプライドかが先行して昔の自分と比べて本当の姿を出せなくなって
しまったことにもやの晴れない気持ちでいる。

「時間は全てのものを変えてしまう」

…そう思えば気は楽になるが、一度強く考えてしまった故ちょっとした事で再び、オイルをかぶったペンギンの様にただただ広い何かをさ迷う。

決定的に違うことは、ペンギンは人間が助けてくれる。

僕には助け舟を出してくれる者はいない。

僕は人助けが大嫌いだ。人のために自分を犠牲にする…考えただけで頭の奥がきしきし締めつけられる。

人間は一人では生きる事はできないと言われるけど、最終的には人間は一人ではなかろうか。

全1ページ

[1]


よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

いまならもらえる!ウィスパーWガード
薄いしモレを防ぐパンティライナー
話題の新製品を10,000名様にプレゼント
いまならもらえる!ウィスパーうすさら
薄いしモレを防ぐ尿ケアパッド
話題の新製品を10,000名様にプレゼント
ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事