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マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調
ポーランド国立放送交響楽団
指揮:アントニ・ヴィト
REC:1990(NAXOS 8.550528)
廉価盤の雄、NAXOSレーベルからの一枚。NAXOSはどうした事かマーラーの第8交響曲だけを録音しない。そうすれば全集になるのに。最近、女流指揮者のR.オルソンという人が第10交響曲の全曲版を録音したらしいが第8交響曲については何の音沙汰もない。
ちなみにこのNAXOSレーベルでマーラーの交響曲の指揮を担当しているのはポーランドの名匠アントニ・ヴィト(2〜6、10番)とハンガリーの指揮者ミヒャエル・ハラース(1,7,9、大地)。オケは大地の歌(アイルランド国立響)以外はすべてポーランド国立放送交響楽団。本日はこの中からヴィトとポーランド国立放響による第5交響曲。
この演奏をただの廉価版と侮る事なかれ。録音も大変素晴らしく、演奏も実直で端整なものである。
第1楽章は中庸なテンポでじっくりと音楽を展開していく。大幅なテンポの変化はないが雰囲気におけるギアチェンジがまことに上手く聴いていて飽きない。
第2楽章は抑揚が効いた音楽になっていて管楽器に聴かれる音の伸びとその響きに感心する。また弦楽器の端整さが光っている。派手さはないが手堅く要所を締めつつも時に大胆に奏でられる音楽は聴いていてある種の安心感すら漂う。
第3楽章。テンポが非常に中庸でなんの特徴もないのにかかわらずここまで音楽としての流れを感じさせるのはそこに澱みのないしっかりとしたリズムがあるからに違いない。とても聴きやすくとにかく退屈しない。極めて質の高い演奏が展開されていく。細かい部分に対しこれみよがしな雰囲気も皆無で全体の流れが大変スムーズだ。
第4楽章は大変叙情的に演奏されている。もう少し弦楽器に艶やかさと滑らかさがほしいところだ。終楽章も落ち着つきを持ちつつもふつふつと湧き上がる熱狂を徐々に表面に出していきながら熱狂的なフィナーレへ安定した歩幅で突き進む。
とにかくこの演奏には秀でた特徴や派手さは皆無だし細かい部分における技術に関してはやや不足の面があるかもしれない。しかしながら充実感に溢れたサウンドとその実直で端整な音楽は熟練の指揮者だからこそなせる技であり、誠実に音楽に取り組んでいるポーランド国立放送交響楽団の演奏にあると思う。両者の職人的な音楽に私は惜しみない拍手を送りたい。
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NAXOSはCD文庫だなんて発売当初国内販売元は遠慮し言ってましたが、イギリスの有名オケの録音があったり、天才ピアニストの録音があったりと驚きます。すべてこんな調子じゃないのでみんな良いとはいえませんけどね。最近はもっと安いCDが出てきましたね。あんまり安いといろいろな面で心配ではあります。消費者としてはありがたいですが。。
2006/1/8(日) 午前 7:34
makoto様>コメントありがとうございます。私のような貧乏人にとってNAXOSはまさに救世主です。知らない音楽もたくさん録音してくれますしね。今後ともNAXOSをはじめ廉価盤レーベルには頑張っていただきたいです。
2006/1/8(日) 午前 8:26
このCDは筆者も持っています。何気にジャケットが『黄金の騎士』だったのと、タワレコでナクソス790円セールをやっていたのとで、ついつい買ってしまったのです。アダージェットは、録音のよさも手伝ってか、かなりの好印象です。でも、やっぱりテクニックも脆さは気になります(笑)
2006/1/9(月) 午後 7:03
camelrider様>コメントありがとうございます。このNAXOSのシリーズのジャケットは確かすべてクリムトのものであったはず。マーラーとクリムト。ウィーンを中心として展開された世紀末芸術を代表する二人であるし、絵画と音楽ですが、どこか作風が似ていると思います。
2006/1/9(月) 午後 10:16