クラシック音楽とうさぎの日常

久々に。秋が深まるのでしばらくブラームスで。

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マーラー:1.交響曲第5番嬰ハ短調
     2.交響曲第6番イ短調「悲劇的」

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ロリン・マゼール
REC:1982 (SONY 90DC 100-2)

 マーラーは1897年から1906年までウィーンの宮廷歌劇場の指揮者としておよそ10年間活躍した事がある。またこの時期の1898年から1901年の間ウィーン・フィルの首席指揮者としてコンサートを指揮した。ゆえにマーラーとこのウィーン・フィルとは大変つながりが深い。
 このウィーン・フィルと(初めてでかつ未だに唯一)マーラーのシンフォニー全曲を録音したのがロリン・マゼールだ。1982年から1984年までウィーン国立歌劇場の総監督に就任しウィーン・フィルとの関係も密になった時期にこのマーラーのシンフォニーの全曲録音ははじめられた。1982年の第5番に始まり1989年の第8番に終わった。
 今日聴くのはその始まりとなった第5交響曲だ。ちなみにこのCDは第6交響曲とのカップリング盤である。
 完璧に近い演奏である。さすがウィーン・フィル。音質は最高だし、何もいうことはない。終始丁寧で気品に満ちた演奏。マゼールも微妙にアゴーギグを効かせるなどしてそこかしこに工夫を凝らし音楽に生命を与えている。
 第1楽章はやや遅めのテンポ設定を保ちながら音楽そのものが雄弁と語るようである。激しく乱雑になりがちな第2楽章も品格を保ちながら熱っぽく演奏される。第3楽章は特に素晴らしい。冒頭のホルンもウィーン・フィルのあのマイルドでふくよかな音色が美しく大変素晴らしい。演奏時間の長いこの楽章であるがこの演奏は聴いていて飽きない。ありとあらゆる部分において、まるで手品のような工夫が施されている。微妙なテンポの揺らしやリズムの強調、強弱の変化など、とにかくこの楽章は他のどの演奏よりも凝っていてしかもそれが自然で素晴らしかった。
 第4楽章。最高級のシルクをなでるような繊細で優しく柔らかな音色に言葉がない。ただ演奏そのものはやや平坦で感情の変化や音色の移ろいに乏しさもある。
 終楽章もいたって丁寧で気品に満ちている。やや気持ちを抑えながら本当に上品に音楽を「紡いで」いくようだ。完全無垢、潔癖とも言っていいだろう。美しい演奏だ。
 ウィーン・フィルの音色を堪能できる名演だ。マゼールのまるでマジシャンのような棒さばきも聴きもの。バーンスタインともインバルともシノーポリとも違う。どのカテゴリーにも入らない。強いていうならばベルティーニからアクや実直さをすべて取ったような無菌室的演奏、優等生的な演奏、インテリな演奏。そういったところか。
 「無菌室」「優等生」「インテリ」。個人的にすべて大嫌いな言葉だ。だからこの演奏は素晴らしいが好きではない。あまりの上手さに(何の関係もないのに)嫉妬してしまう感じ。上手すぎて可愛くないといった感じ。
 しかし上手い。ある意味もっと評価されるべき演奏だろう。


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