クラシック音楽とうさぎの日常

久々に。秋が深まるのでしばらくブラームスで。

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「エッセンシャル・シベリウス」:4

エッセンシャル・シベリウスと題されたシベリウスのボックスCDからの一枚。管弦楽はラハティ交響楽団。指揮はオスモ・ヴァンスカ。

1.交響曲第1番ホ短調 作品39
2.交響曲第4番イ短調 作品63

ラハティ交響楽団 
指揮:オスモ・ヴァンスカ
REC:1996,1997


交響曲第4番イ短調 作品63


 シベリウスの交響曲の中でもっとも難解で陰鬱とした作品だ。作曲されたのは1910〜11年。シベリウスはこの時期に喉の不調をうったえておりその原因が腫瘍であると診断された。シベリウスはその分野で世界的権威であったベルリンのフレンケル博士のもとで手術を受け無事に成功した。

 このような事情の中で生まれた交響曲だけに(シベリウス自身がこの交響曲を「心理的交響曲」とも言っているのだが)死への恐怖や生への畏敬の念が深く刻まれた交響曲といっていいだろう。

 またこういった内面的な事象とは別にこの病を克服した1909年に義兄のエーロ・ヤルネフェルトと北カレリア地方のコリ山地へ旅行している。この旅がシベリウスに与えた影響は大きくこの旅についてシベリウスは「生涯で最もすばらしい経験のひとつ」と記している。このあたりからもこの第4交響曲がコリ山地で強いインスピレーションを得たことによって作曲されたことも間違いないだろう。

 このような外面と内面の微妙な均衡によって成り立つ極めて不安定で繊細な楽曲は聴く者を遠ざける事だろう。人間の心情の不安定さと厳しい自然への畏怖の念が込められた極めて内向きの陰鬱な音楽。

 まさにそれは人間の無限なる心理の中を浮遊し彷徨するような交響曲だ。旋律や和音がモザイクのようにつなぎ合わされていくようで淡く暗い表情を持った楽曲である。

 第1楽章は冒頭から非常に不安定な和音で始まりその彼方から重苦しく意味深いチェロの旋律が聞こえてくる。心にかかる暗く暗鬱とした心情をそのまま表現するかのような雰囲気の中、瞬間的に晴れ間が見られるような爽やかな旋律がまさに人の心を映し出すようだ。
 
 第2楽章はオーボエがスケルツォ風の明るい民謡風の旋律が大変印象的だ。この交響曲中もっともリラックスできる軽快な音楽。
 
 第3楽章は大変深淵とした心の闇というか北欧の厳しい山脈の彼方を見るような重く苦しい音楽だ。その深く暗い闇に微妙に差し込む一条の光がこの音楽を照らしまたその光は消え行き極めて重力の大きい深い闇があたりを覆うようだ。この第3楽章こそこの第4交響曲の一番の深部であり本質の部分であると思う。
 極めて濃い音楽。音楽がよどみなく心の深部を内へ内へ流し込んでいく。

 第4楽章はまた息を吹き返したかのように生命力に溢れた快活な音楽だ。この楽章で象徴的にかつ印象的に奏でられる楽器が「グロッケン」。
 
 この「グロッケン」を演奏するにあたりシベリウスはオリジナルでは「グロッケン」と指定していたらしい。これは今でいうところの「チューブラベル」に相当する。「チューブラベル」とはNHKの「のど自慢」でお馴染みのあの「鐘」である。ところが演奏者としてはこの「チューブラベル(鐘)」ではいまいち音程が悪い。ここで登場したのが「グロッケン・シュピール」。要するに鉄琴だ。いつのまにか鉄琴で演奏することが通例となりシベリウスも(意に添ってか反しては知るべくもないが)「グロッケン・シュピール」と記譜したようだ。

 したがってこのシベリウスの第4交響曲の第4楽章は指揮者や演奏団体によって「チューブラベル(鐘)」を使うか「グロッケン・シュピール(鉄琴)」を使うのか分かれる所である。まれに両者を併用して演奏しているものもあるようだ。
 
 全曲を覆う暗さを演出するのであれば不安定なベルで演出すべきで、不安定さから安定へ心の救いをこの楽章で求めるのであればはっきりとした美しい音色の鉄琴を採用すべきであろう。
 
 
 この難しい心境の吐露をヴァンスカ/ラハティ響の演奏は繊細で極めて美しい音色で表現している。暗さが浮かび流麗な流れの中で音楽が展開されていく。
 
 これほど難しく曖昧で不安定な楽曲をそのまま美しい音色の水彩画で表現したそんな演奏だ。この音楽の本質をしっかりと見据え自然に表現できている。主観が入り、音楽にしようとするとすなわちこの第4交響曲はその時点で音楽になることをこの音楽自身が拒絶するようだ。その意味においてもヴァンスカ/ラハティ響の演奏は素晴らしい。

 ちなみに件の第4楽章はこの演奏ではグロッケン・シュピール(鉄琴)で演奏されている。

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