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プロコフィエフ
1.ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ヘ短調 作品80
2.ヴァイオリン・ソナタ 第2番 ニ長調 作品94bis
3.ヴァイオリンとピアノのための5つのメロディ 作品35bis
4.無伴奏ヴァイオリン・ソナタ ニ長調 作品115
竹澤恭子(Vn)
アレクサンダー・マッジャー(Pf)
REC:1994[1〜3]1995[4]
ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ヘ短調 作品80
この作品はソ連に帰郷した時期に作曲されている。ちょうど「アレクサンドル・ネフスキー」を作曲していた時期(1938年)に第1楽章のいくつかのスケッチを残していたがしばらく作曲は中断され7年後の1946年に再度このスケッチを基に作曲が開始され同年完成しD.オイストラフのヴァイオリンによってモスクワで初演されている。
大変研ぎ澄まされた神経質な音楽だ。決して分かり易い音楽とはいえないがこのぎりぎりのところで音楽としてつなぎとめられているような微妙な均衡が漂う音楽である。
単純と難解が複雑に入り混じったプロコフィエフの独特のこのなんともいえない世界観が端的に感じる事のできる楽曲だ。
暗鬱とした中に極めて鋭い感性を内包した第1楽章。前衛的な色彩の濃いリズミックで快活な第2楽章。音が音楽の中にとろけていくような耽美的でその造形が曖昧なのにもかかわらずしっかりとした意思を備えた極めて不安定かつ不確定の美に包まれた白眉の第3楽章。壮大なスケールで躍動する音楽と第1楽章のテーマにゆっくりと回帰していく第4楽章。
そのどれもが極めて微妙な緊張関係の上に成り立っていて少しでもバランスを崩すとすべてが崩壊しそうなほど繊細な音楽。
この微妙な均衡を素晴らしいセンスと力強いタッチでしっかりと説得力のある演奏を聴かせてくれた竹澤恭子というヴァイオリニストには驚嘆する。素晴らしい平衡感覚だ。ひとつの音を紡ぎだすと同時にその次の音が意識される。見通しの良い演奏。始まった時点ですべての構成やバランスが見事に展開されていく。
ピアノのアレクサンダー・マッジャーも素晴らしい。このふたりのアンサンブルの均衡はプロコフィエフのこのヴァイオリン・ソナタの要求するすべてが再現されている。
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