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ワーグナー
1.楽劇『ローエングリン』〜第1幕前奏曲
2.楽劇『ジークフリート』〜森の囁き
3.楽劇『神々の黄昏』〜ジークフリートのラインへの旅
4.歌劇『タンホイザー』〜序曲とバッカナール
5.楽劇『マイスタージンガー』〜第1幕前奏曲
NBC交響楽団
指揮:アルトゥーロ・トスカニーニ
REC:1954(MUSIC&ARTS CD-3008)
トスカニーニがステレオ録音を残していたなんてはじめて知った。なんでもこのCDに収められている演奏のほかにもトスカニーニの指揮によるステレオ録音が残されているということらしいのだが現在入手できる音源はこれのみらしい。
この「ファイナル・コンサート」は1954年4月4日にニューヨークのカーネギー・ホールで演奏されたものでワーグナーのプログラム。すでに引退を考えていたトスカニーニが(引退を自分の中で決定的に感じ、または余儀なくされた)演奏中に自分が今なにをやっているのかわからなくなってしまい演奏が混乱したことで有名な『タンホイザー』〜序曲とバッカナールの演奏も収められている。
以前からトスカニーニの締まったワーグナーがとても好きだったので「ステレオ録音」ということもあったかなりの期待で聴く事にした。
1曲目の「ローエングリン:第1幕前奏曲」は集中力の充満した緊張感漲る名演。
2曲目の「ジークフリート:森の囁き」は強奏部における音の混濁が音の輪郭を不明確にしていて少し残念。
3曲目の「神々のたそがれ:ジークフリートのラインへの旅」はトスカニーニらしくなく意外にもテンポやリズムがゆるく堂々とどっしりとした感じ。しかし音楽中盤からの叩き込むような音楽の流れはやはりトスカニーニそのものだった。素晴らしい集中力とカンタービレ。筋肉質な音楽。言う事なしだ。(蛇足ではあるがこの音楽はクナッパーツブッシュのウィーン・フィルとの演奏が忘れられない。)
4曲目は件の「タンホイザー:序曲とバッカナール」。音の骨格ははっきりしている硬質な演奏にこのタンホイザーはやはり違和感を覚える部分もある。ただじっくりと歌わせる部分における演奏は見事というほかない。危機感迫る一切の妥協のない美しさに引き込まれる。この演奏のどこで「混乱」が生じたのかは、なんとなく想像はついたが最後までとりあえず演奏されているしよほど気をつけていなければよくわからないだろう程度のものだと思う。
5曲目は「ニュルンベルクのマイスタージンガー:第1幕前奏曲」。この演奏には個人的にかなりの期待を寄せていたが、100%満足のいく演奏ではなかった。期待値が高すぎたのかな。ややサウンドやリズムが脆弱すぎる気がしたので。ただ終盤における音楽の高まりはなんだろう。音が凝縮されていくようで引き込まれる。
さてこのステレオ・ライヴ盤の本当の意味での価値は演奏内容にあると言うわけではないと思う。RCAから大量に出ている残響のない8Hスタジオの録音とはまた違う、カーネギー・ホールにおける音響の中でトスカニーニという偉大な指揮者の演奏を音質は貧相であるがステレオ録音で聴くことの出来る点にあると思う。
ただやはりトスカニーニの骨頂とは8Hスタジオにおけるあの乾いた音響の中で感じる事の出来るひときわタイトで筋肉質な音質から繰り出される驚異的な緊張感に満ちた演奏にあるということを逆説的にこのステレオ録音を聴いて強く感じた。
このCDの演奏に関して専門的な素晴らしい含蓄に富んだRボーダーさんのコメントがあるので(TBしてますが)改めてここに紹介させていただきます。
http://blogs.yahoo.co.jp/rboarder30/1131503.html
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