ベートーヴェン 交響曲第9番ニ短調作品125 エディット・ヴィーンス(S) ウテ・ワルター(A) ライナー・ゴルトベルク(T) カール・ハインツ・シュトゥリチェク(Bs) ドレスデン交響合唱団 ドレスデン国立歌劇場合唱団 シュターツカペレ・ドレスデン 指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット REC:1985(DELTA 14 566) 2007年ももう終りに近づいた。年末恒例の第9であるがやはり一年の締めくくりに聴いていこう。 今年はブロムシュテット/シュターツカペレ・ドレスデンの演奏を。ブロムシュテットは、1975〜80年にかけてベートーヴェンの交響曲全集を名門シュターツカペレ・ドレスデンをとともに正攻法のスタンスで指揮した虚飾のない堂々とした燻し銀の名演がある。 今日聴いたのはこの全集に含まれない別録音。1985年、3月に行われたゼンパーオーパー再建記念のライヴ録音である。演奏はやはり(というか当然)シュターツカペレ・ドレスデン。 ライヴだけあって勢いが違う。極めてタイトなリズムと尋常でない緊張感に包まれた稀有の名演である。端整な雰囲気を残しつつもまるで一筆書きのように一気に突き抜ける様はブロムシュテットの70年代の全集の録音からはあまり想像できなかった。 しかし細かな部分に関して入念に演奏していく雰囲気はブロムシュテットの手堅いタクトに起因するものであろう。 今年年末に発売され最も話題に上がったフルトヴェングラーの指揮によるバイロイト祝祭管との(EMIとは別録音)第9も聴いてみた。 これはやはり神がかり的な開放感あふれる四方に放射される演奏である。それに対しこのブロムシュテット/SKDの第9は抑制された感じがあり直線的でもっと切実な雰囲気がある。なんというか完全な喜びを感じていないようなそんな切迫した緊張感に満ちている一種異様な「歓喜の歌」である。 とにかく素晴らしい演奏であるのだが内側に何かを内包しながら(何を内包しているかは良くわからないがとにかく非常に切迫した何か)一気に駆け抜けていくそんな演奏である。 今年は世間一般に決していい年とはいえない一年ではなかったであろうか。意味のわからぬ事件やまったくをもって理不尽きまわりない出来事、隠蔽や偽装に満ちた稚拙すぎる世相。 このような何か良くわからないが決していい予感がしない「何か」を内包したまま、皆がその一抹の不安を感じさせる「何か」をきちんと検証もせずに見て見ぬ振りをして今年を終え来年に突き進む姿にこの演奏がとてもよく重なる。 さて、この何かいやな予感がする「何か」を内包したまま年を越して来年はどのような一年になるのだろうか? 何はともあれ、とにかく心身ともに健康で私も含め私に関わる全ての人が来年は今年よりもちょっぴり幸せになっていただきたいものである。
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