ブルックナー 交響曲第7番ホ長調 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 指揮:ダニエル・バレンボイム REC:1992(WARNER 2564 61891-2) 先日聴いたヴァント、ケルン放響の演奏が輪郭のしっかりとした演奏に対しこのバレンボイム、ベルリン・フィルの演奏は芯のしっかりとした演奏といえる。しっかりとした芯から放射される豪華な響きは天下一品である。バレンボイムの音楽運びは実にじっくりと丹念なものになっている。ヴァント/ケルン放響の演奏に比べ各楽章とも1〜2分遅い。 基本的にオーソドックスな演奏スタイルで以前に聴いた第5番などよりテンポの設定に違和感がなくバレンボイムのブルックナーにしては聴きやすさがある。 第1楽章、第2楽章ともベルリン・フィルという世界随一のオーケストラを擁した演奏はまさに堂に入ったといえる名演である。第2楽章のスケールの大きさは特筆に価する演奏である。版の明記がないが第2楽章のクライマックスにはシンバル、トライアングル、ティンパニが挿入されたバージョンでの演奏でありノヴァーク版を基調とした演奏であると推察される。 バレンボイムらしさがよく出ているのが第4楽章である。練習番号のFの部分から非常に印象的な力強いフレーズがある。そこにはimmer marking gestrichenという記譜がありとても感動的なフレーズであるのだが、バレンボイムはテンポを強烈に落とし個性的に演奏する。この旋律は練習番号のPからも再度出てくるのだがそこも同じようにテンポに揺らぎを与える。このテンポの揺らぎはヴァントではないものであった。 Immer:同じように、依然として、Marking:がっちりした、威勢のいい、gestrichen:弾く、一音ごとに弓を返して弾く。考えてみればimmer marking gestrichenは「すべての音を同じように一音一音弓を返ししっかりと弾く」という意味でありテンポに関しての指示は基本的にはないのかなと思うのであるがバレンボイムは歴然とテンポを落とし演奏する。 それなのに練習番号のSからは一転してテンポは速くあっさりと持っていく。70分に及ぶこの交響曲のフィナーレに関してはこの交響曲の問題(というより構成上の問題ゆえの演奏の難しさ)はあるにせよそれはないだろうと突っ込みたくなるくらいのあっけない幕切れ。 この辺の言及に関しては全体のほんの一部に過ぎないがバレンボイムのブルックナーの演奏に対するスタンスが如実に現れた例として言及しておくことにする。ちなみにバレンボイムはこのブルックナーの第7交響曲に関して「叙事詩的な第7番(レコード芸術1999年1月号67ページ)」と発言しているということを考慮しても交響曲としてではなくまた別の次元でこの楽曲を捉えているということはこの部分を聴いても全体を通して演奏を聴いても納得できるということである。要するにこの演奏(第5交響曲も第6交響曲もそうであったが)、特に終楽章においては聞き手にとって好き嫌いがあってしかるべきスタンスであると考える。
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