ベートーヴェン
ピアノ三重奏曲全曲(2)
1.ピアノ三重奏曲第2番ト長調作品1−2
2.ピアノ三重奏曲第7番変ロ長調作品97「大公」
3.ピアノ三重奏曲第8番変ロ長調WoO.39
セラフィン・トリオ
REC:1996(ART NOVA 74321 51621 2)
ベートーヴェンの記念すべき最初の出版作品の中のひとつ。3つのピアノ三重奏曲作品1の第2番の楽曲。作品1の中でも一番人気のない曲がこの第2番であるようだ。
人気のなさとは裏腹に楽曲は構成もしっかりとしたバランスのいい4楽章からなっていて、さながら交響曲である。アダージョの序奏に続いて軽快なアレグロが奏される第1楽章。歌にあふれた穏やかな第2楽章。しっとりとした感じの旋律が印象的な少しアンニュイなスケルツォ。第4楽章は楽しげでエネルギッシュな旋律で彩られていてフィナーレにふさわしい、堂々とした音楽になっている。
人気はないかもしれないが個人的には満足の一曲であった。
ベートーヴェンのピアノ三重奏曲の中で最も有名なのがこの「大公」である。「大公」とはオーストリア・ハプスブルク家の神聖ローマ帝国皇帝レオポルド2世の末子であるルドルフ大公(ルドルフ・ヨハネス・ヨーゼフ・ライナー・フォン・エスターライヒ:1788〜1831)のこと。
ルドルフ大公が15歳のときにベートーヴェンがピアノ教師として出会ったのをきっかけに、その後も長く親交を深めた。ベートーヴェンが経済的に困窮すると「幽霊」三重奏曲を献呈されたエルデーディ伯爵夫人などとともに援助を行うなどしたベートーヴェンの重要なパトロンである。
ピアノ三重奏曲第7番変ロ長調作品97は1811年の作でルドルフ大公に献呈された。そのため「大公トリオ」と呼ばれて親しまれている。
ルドルフ大公の音楽的な才能はなかなかのものがあり自ら作曲した作品も多い。またピアニストとしての腕前も相当の水準にあったといわれこの作品もピアノの活躍する楽曲になっている。ベートーヴェンの室内楽曲の中にあってもこの「大公」三重奏は大変有名で古今のピアノ三重奏曲の中にあっても最高傑作といわれている。
その評判にふさわしくスケールの雄大さ、気高い品格、円熟と優雅さを兼ね備えた非常に内容の濃い音楽になっている。
ピアノ三重奏曲第8番変ロ長調WoO.39
アレグレットのみの単一楽章の楽曲。この楽曲はベートーヴェンの心の内側をのぞくことの出来る作曲者の素直な心を表現した可愛らしい小曲であると思う。
この曲はベートーヴェンの書いた差出人不明のあの有名な「不滅の恋人」への手紙の相手と目されるアントーニア・ブレンターノの愛娘、マクシミリアーネ・ブレンターノとという少女に贈られた楽曲である。
「大公」がやや公的な音楽だとすればこの第8番の小さな楽曲はまったく私的な音楽であるといえよう。ベートーヴェンの一面を窺い知るに最も興味深い一曲である。
セラフィン・トリオの演奏も癖がなく耳に馴染みがよく聴きやすい。私のようなベートーヴェンの三重奏曲初心者にはもってこいなのではないだろうか。
画像はルドルフ大公。ウィキペディアから拝借。
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