リムスキー=コルサコフ 交響組曲「シェエラザード」作品35 フィルハーモニア管弦楽団 指揮:ロヴロ・フォン・マタチッチ REC:1958(EMI SAN-16[080511-250BOMM]) 先日に続きクロアチア出身のロヴロ・フォン・マタチッチの指揮する演奏を聴く。今日聴くのは一大交響スペクタクルの「シェエラザード」。「英雄」を聴いたときも記したようにマタチッチは、もともと歌劇場の指揮者としてそのキャリアをスタートさせている。そのためであろう、「シェエラザード」の持つ劇的な音楽を語ることに成功している。 演奏はおおらかな雰囲気を作りながらもその場面場面ではしっかりと音楽が情景を刻んでいるのがよくわかる。まさに劇的な雰囲気を自然に作り上げている。大きなうねりはもちろんのことその中にある小さな気泡までがしっかりとその場面を語っているのである。この感じを自然に導き出すのがこのマタチッチという指揮者の素晴らしさなのだろう。 強奏部の音質の悪さ、旋律や音程の不安定なところなどマイナス要因も多々あるがその要因を考慮に入れても、音楽が全編に渡って語っているという点は特筆すべき演奏で素晴らしい音楽になっている。 この場で私が「語る」というのはやや抽象的な言い回しであるが、その場面においてその旋律の持つ意味が如実に音楽から感じられるという事を意味している。これは実に音楽にとって重要な事であるはずなのに最近はあまり内面に突っ込んだ今日のような演奏を聴いてこなかったので感動してしまった。 特にこの「シェエラザード」という音楽は登場人物をなぞらえた旋律の持っている独特な雰囲気や情景を思い起こさせるような場面などの音楽が全編に渡って奏でられておりその場面場面で雰囲気を大きく変え、かつその場面での旋律に相当の意味を加えて演奏をしていかねばならないという面がある。 多々ある「シェエラザード」の録音ではどちらかといえば音楽の持つ外面ことさら強調し綺麗に飾って豪華にこしらえた音楽が多い。したがってこのような演奏はこの音楽の持つ本来の意味を曖昧に放置したままのものが多い。その中においてこのマタチッチの「シェエラザード」外面は決して綺麗ではないかもしれないが音楽の内面を実に真摯に描ききってこの「シェエラザード」の持つ本当の魅力をたっぷりと教えてくれる素晴らしい演奏といえる。 オケはフレキシブルさではナンバーワンのフィルハーモニア管。録音された1958年という時期はカラヤンやクレンペラーなど著名な指揮者が多くフィルハーモニア管の指揮を振っていたはずで脂も乗り切っていた時代である。当盤では細かなミスが目立つがそれ以上に気迫あふれる名演を聴かせてくれる。 本当にオペラを見ているように音楽が場面を想像させ旋律が台詞を語っている。聴けば聴くほどにシェエラザードの世界に自分が迷い込んだような気になる。 このCDはかつてレコードチェーン店の新星堂が企画したEMIの古い録音を廉価で復刻させたものの一枚。実に素晴らしい企画である。 参考
マタチッチによるロシア管弦楽曲 http://blogs.yahoo.co.jp/qq473ms9/51600718.html マタチッチによる「英雄」 http://blogs.yahoo.co.jp/qq473ms9/56298502.html バティスのシェエラザード http://blogs.yahoo.co.jp/qq473ms9/48232681.html ストコフスキーのシェエラザード http://blogs.yahoo.co.jp/qq473ms9/51550361.html |

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