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前回、グスタフ・マーラーについて、書きましたが、その中で紹介した『亡き児(子)をしのぶ歌』について少し書きたいと思います。この曲は詩人リュッケルトの詩を元に作曲した歌曲集です。原詩はリュッケルトの作った425篇から成る詩集であり、彼の子供のうち2人が16日の内に相次いで死ぬという悲しい出来事があったという逸話があります。
この詩集から5篇を選び作曲した当作品が完成した4年後、今度はマーラーとアルマ夫人の間に出来た4歳の娘マリアを病気で失うという悲劇が生まれました。その様子は、マーラーをモデルとしたルキノ・ヴィスコンティ監督の『ベニスに死す』の中にも取り上げられています。(母娘とともに平和に暮らしていたグスタフ・アッシェンバッハの娘が突然死去し棺桶にて運ばれていく)また、これは余談ですが、この映画の中でアッシェンバッハ教授が心を寄せる美少年タジオの母親役を演じたシルバーナ・マンガーノはビスコンティ監督の『ルードビヒ 神々の黄昏』の中でリヒャルト・ワーグナーの妻コジマ(フランツ・リストの娘)を演じています。マーラーはウィーンを代表する名指揮者でありましたが、ワーグナーの死後、ウィーン音楽界を牛耳っていたコジマが反ユダヤ主義(マーラーはユダヤ人です。)を取っていたので、多くの苦難があったそうです。
ちなみにマーラーの死後、夫人のアルマは建築家のグロピウスと再婚。娘マノンを儲けますが虚弱で19歳という若さで夭逝してしまいます。その娘の死を悼み、家族と親交のあった作曲家アルバン・ベルク(歌劇ルル等で著名な作曲家です。)がヴィオリン協奏曲(ある天使の追想に)を作ったのは余りにも有名です。とても美しい曲で好きな曲です。
マーラーの亡き児をしのぶ歌で好きなのは第3曲『Wenn dein Mütterlein." - 「きみのお母さんが戸口から入ってくるとき」』です。女性歌手では名歌手シュヴァルツコップが歌った名盤もありますが、やはり父親が追想している雰囲気が醸し出される男性歌手盤がお薦めです。自分はバリトンのフィッシャー・ディースカウの歌うCDを持っています。
第3曲「おまえたちのおかあさんが戸口から歩み入るとき」
Wenn dein Mütterlein
Tritt zur Tür herein
Und den Kopf ich derhe,
Ihr entgegensehe,
Fällt auf ihr Gesicht
Erst der Blick mir nicht,
Sondern auf die Stelle,
Näher nach der Schwelle,
Dort wo würde dein
Lieb Gesichtchen sein,
Wenn du freudenhelle
Trätest mit herein
Wie sonst, mein Töchterlein.
Wenn dein Mütterlein
Triff zur Tür herein
Mit der Kerze Schimmer,
Ist es mir, als immer
Kämst du mit herein,
Huschtest hinterdrein
Als wie sonst ins Zimmer!
O du, o du, des Vaters Zelle,
Ach, zu schnelle
Erloschner Freudenschein!
おまえたちのお母さんが
戸口に歩み寄り、部屋に入ろうとして、
私が頭をめぐらせ
振り返り見るとき、
最初の私の一瞥の視線は
お母さんの顔ではなく
むしろ敷居のそばの、
その場所の
おまえたちの愛らしい顔が見えるその場所へ
もし、おまえたちが晴れやかな喜びに満ちあふれ
お母さんと一緒に入って来るならば、
いつもどおり何も変わらない
私の娘たちであるのに
おまえたちのお母さんが
戸口から中へ歩み入り
蝋燭のうす明かりと一緒に
それがいつものようだと感じさせるには
もし、お母さんの後ろから
おまえたちがすばやく追いかけて来るならば
それはいつもと何も変わらない部屋の中であるのに
おお、おまえたち、おお。おとうさんの分身、その細胞よ。
ああ、本当にたちまちに
あまりにも早く輝かしい喜びの光を消し給うたのだ!
最後に、今教育テレビで2人のリヒャルトと称して、ワーグナーとシュトラウスの特集を見ています。シュトラウスの曲も好きで映像では、『サロメ』『エレクトラ』『ばらの騎士』を持っています。仕事柄、ゴールデンウィークにまとまった休みは取れないのですが、是非通しで聴く時間が欲しいです。
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