(週刊現代10・16号「君たちはそれでも男か」より抜粋)
民主党内では、9月27日に73名の議員有志が「那覇地検による中国人船長釈放問題についての緊急声明」を発表。この声明では、那覇地方検察庁が「独自の判断によるものとして」釈放したことを批判する内容になっているが、その内容はなかなか複雑だ。
「官邸が検察独自の判断を強調している以上、我々が直接、官邸の判断がおかしいというわけにはいかない。しかし、検察にすれば政治判断をさせられたという不満があるでしょうから、こうした声明を出すことで、検察側から『自分たちは釈放するつもりはなかった』という声を引き出す狙いもある」(声明文を出した議員有志の一人)
この議員有志の顔ぶれを見ると、先の代表選で小沢一郎元幹事長を支持したとみられる親小沢系議員が多いことに気付く。そこには反小沢系で固められた閣僚たちへの反撃に、事件を利用しようという戦略も見え隠れする。
「政治主導」とは笑止千万
ただし、ことは領土問題に直結する国家観の対立である。党内の新小沢か、反小沢かといった小競り合いとはスケールが違う。
「菅総理は困難を前にして逃げた」
「船長の釈放後に、中国側が謝罪と賠償を要求すると言いだした時、外務省の報道官に最初に反論させている。これは釈放を那覇地検に発表させたのと同じ構図です。菅総理以下、政府首脳が右往左往していて明確な方針が出せないから、とりあえず官僚たちに矢面に立ってもらったということ、国が領土を奪われるかどうかを巡って、大国・中国と全面対決しているのだから、菅総理は国連総会を途中で切り上げてでも帰国して、総指揮をとるべきだった。それなのに、国難に正面から向き合わずに逃げる総理の姿を露呈してしまったのです」
(日本国際フォーラム理事長・元外交官 伊藤憲一氏)
情けないのは最初から弱腰だった仙谷氏、逃げる総理だけではない。事件発生当時の外相だった岡田克也幹事長、海上保安庁(海保)を所管する国交相から横滑りした前原誠司外相ら、当初は強硬姿勢を主張していた人々にしても、外交戦略を重視して対応を決めていたのか疑わしい。
尖閣諸島沖で、衝突事件が起きたのが9月7日、この時、ドイツに外遊中だった岡田氏は、「粛々とやるべきだ」と電話で指示。前原氏も海保の士気にかかわると逮捕を主張した。逮捕を主張すること自体は間違っていないが、2人ともその後、この問題のことなど忘れてしまったかのように放置していたのである。
<ケ>
岡田氏は必ずしもそうとは思えないが、前原氏はウケを狙って行動しているように思える。
「こう言えばカッコいい。俺って目立つだろう」
しかし確固たる信念もないから、腰砕けになる。永田メール事件などいい例だ。振り上げたこぶしを下ろす場所がわからない典型的な勘違い野郎。
仙谷がかわいがるわけだね。
(続き)その最大の理由が、民主党の代表選。岡田氏などが中間派議員の地元をアポ無し訪問して菅支持を訴えている間に、中国側は確実に態度を硬化させていった。1年生議員を取り込むために、事件翌日にレストランをハシゴして夕食会を開いた菅総理の姿を見れば、自国民を拘束された中国が怒りたくなる気持ちもわかる。
自民党シャドーキャビネット外務大臣で、外交部会長の小野寺五典議員が語る。
「逮捕を決めたのに、事件の証拠となる漁船をさっさと返したことからもわかるように、初動対応から間違っている。岡田さんも前原さんも、菅さんの票集めで頭がいっぱいだったのでしょう。しかも、事件発生と同じ9月7日には衆院外務委員長だった鈴木宗男さんへの実刑判決が確定し、外務委員長が実質的に不在になる事態があった。我々は民主党に対して、この問題は急を要するから、委員長代理を立てて外務委員会を開催すべきだと何度も要求しました。それなのに民主党は『いや、とてもそれどころじゃない』と言って、逃げ回った。民主党の代表選という身内のイベントのために、国益を大きく損なった。その無責任な対応が、日本外交の戦後最大ん敗北を生んだのです」
小野寺氏が海上保安庁に確認したところ、民主党政権になって、尖閣諸島周辺で操業する中国の漁船が急増したという。新政権の出方を見ようとしたのだろう。初めは領海内には入らないように中国政府も厳しく取り締まっていたが、民主党政権が何ら反応しないのをいいことに、徐々に行動をエスカレートさせてきた。そして事件があった日は約130隻が周辺で操業しており、そのうち領海内に入っていたのが約60隻。衝突事件は起こるべくして起こったのである。
今回の弱腰の対応で、中国は完全に味をしめたに違いない。最初こそ強気なことを言っても、最後は完全に屈服する。それが日本という国だ、と。前原氏はその後も会見で、「(衝突は)故意である可能性が高い」などと強調しているが、もはや時すでに遅し。岡田氏にいたっては「検察の判断を尊重する」と、あくまで政治的圧力はなかったという大嘘の前に屈服した格好だ。これでは『原理主義者』の名折れである。
「菅政権の閣内がバラバラだということがはっきりしました。前原氏が強硬姿勢の一方、仙谷氏と柳田(稔)法相は口裏を合わせ政治介入はありませんでしたと言いながら軟弱な姿勢に終始した。閣内が一致せず、方針すら出せないのに検察や海保に任せっきりだと言うなら、『政治主導』という看板を下ろした方がいい」(政治評論家・三宅久之氏)