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北京五輪は終わったが、同時に起きたロシアのグルジア侵攻問題はくすぶり続けている。
くすぶるどころか、ロシアに対する怒りと警戒心は旧東欧や国連を舞台にさらに燃え広がりそうだ。
米大統領選の勝敗をかけた民主党、共和党の全国大会にも深刻な影を落としている。
現職のブッシュ大統領も、今ごろはプーチン首相を信用してきたことを悔やんでいるのではないだろうか。
ロシアを信じて痛い目にあった大統領は前にもいた。
真っ先に浮かぶのは1979年のカーター大統領だ。
6月、ウィーンでブレジネフ・ソ連書記長と第2次戦略兵器制限条約(SALT2)の調印にこぎつけ、成果を世界にアピールしようとした。ところが、わずか半年後にソ連軍がアフガニスタンに電撃侵攻し、カーター外交の面目は丸つぶれになった。
大統領は「ブレジネフ氏が私にウソをついたとは信じられない」と嘆いたそうだが、「信じられない」発言は指導者にあるまじき無邪気さをかえって露呈し、自らの傷に塩をすりこむ結果となった。
翌年、大統領は
「緊張緩和は終わった」と怒りをぶちまけ、SALT2批准の棚上げやモスクワ五輪ボイコットを決定。
米ソ関係は坂道を転がるように悪化した。
カーター氏だけを責めるわけにはいかない。第二次大戦末期のルーズベルト大統領も、ヤルタ会談でスターリン書記長を信用してみごとにだまされた。
老練なチャーチル英首相の真剣な忠告にもかかわらず、
ソ連に有利な欧州分断を容認し、その後約半世紀に及ぶ冷戦のスタート時にソ連に大きく後れをとる羽目に陥った。
プーチン大統領(当時)と初の首脳会談を行った2001年6月、ブッシュ大統領が「プーチン氏の目をみつめて、彼の魂を感じることができた。率直で信用できることがわかった」と感心してみせたのは有名なエピソードだ。
大国間外交で指導者同士の個人的信頼は大切だ。それは否定しないが、価値や思想の異なる人を気安く信用すると大ケガをしかねない。それも歴史の教訓である。
ブッシュ氏と違って「だまされないぞ」と言いたいのか、共和党大統領候補に内定したマケイン上院議員が昨年末、米紙に語った言葉が面白い。
「私もプーチン氏の目をみつめた。そこにK、G、Bの3文字が見えた」。
KGBはプーチン氏の出身母体でもある旧ソ連国家保安委員会の略称だ。
冷戦とソ連は過去に去ったが、大ロシア主義は消えていない。
旧治安勢力が占めるプーチン・メドベージェフ体制下で、むしろ新たな拡張主義が強まっていると指摘されてきた。「周辺国がロシアにたてつくのは許さない」という戦略の発動だろう。国際社会はこんな暴挙を許してはいけない。
先に北大西洋条約機構(NATO)に加盟したバルト諸国に続いて、ウクライナやグルジアも早期加盟を訴えるのは、ロシアに近いだけに危険を肌身に感じてきたからだと思う。
ポーランドなどがミサイル防衛(MD)配備歓迎に転じたのも同じ理由に違いない。
マケイン氏は2年以上前からウクライナ、グルジアの危機を警告してきた。両国のNATO加盟協議加速や「主要国首脳会議(G8)からロシアの排除を」と呼びかけてきたのは正しかった。
だまし合いに満ちた国際政治の現実は、五輪のスポーツ精神とは違う。
次期米大統領も、日本の首相も「信用する前に、だまされるな」のリアリズムを忘れてほしくないと思う。(たかはた あきお)
ソース(MSN産経ニュース):
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/080829/erp0808290317000-n1.htm
(コメ)
福田は完全に見下されている。
しかし、対抗できるような人は誰がいる?
今日の「サンデースクランブル」で、青山氏が「われわれは現在のロシアを知る必要がある」と言っていたが、まさにその通りだろう。
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