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前回に引き続き、ベートーヴェンの話題である。
ベートーヴェンの交響曲第1番は、余り聴かれないのではないだろうか。 3、5、6、7、9番等が圧倒的に好まれているのに対し、1、2、4、8番はどこか日陰の存在である。 と言っても、私は1、4、8番は結構好きなのである。一般的には余程名演に出会わない事には、取っ付きにくい曲ではある。 特に1番は、最初のシンフォニーと云う事もあって、意外に軽んじられているのではないだろうか。 この曲はハーモニーを聴くべき曲である。第1交響曲の1楽章の序奏の出だし、一発目からハーモニーで始まる。 そして同じようにハーモニーが転調しながら羅列されて、最後にやっと主題のハ長調に辿り着く。主題部のリズミカルなメロディが始まってもすぐに掛け合うように木管のハーモニーが被って来る。この曲はハーモニー重視なのだ。 従って、オケは綺麗にハモる事が要求される。聴き手もそこの所を良ーく聴き分けなければならない。そして、オケの音色の特徴も聴き所となる。 今回はその1楽章を取り上げる。 最初はコンヴィチュニー/ライプツィヒ・ゲヴァントハウスOである。
ゲヴァントハウス管はコンサートのオケとしては世界最古のオケである。そしてこの演奏の録音当時は、古い楽器の音色がまだまだ健在であった。そう云うハーモニーを感じ取りながら聴くと一層楽しい。 コンヴィチュニーは木管のハーモニーを生かすのが上手い指揮者である。顔に似合わず音楽センスは良いのである。音楽は柔らかく大らかに流れるが、時として、これはベートーヴェンだぞ、と言い含めるように「バスッ」とティンパニを打ち込んで来る。誠にツボを押さえた名演である。 クレンペラー/フィルハーモニアO。
フィルハーモニア管は、EMIの録音用オケとして誕生した。戦後、演奏会活動が出来ないカラヤンがせっせと録音していたのがこのオケだ。 クレンペラーは木管のハーモニーを殊更重視していた指揮者である。当然、木管のハーモニーが活躍するこのベト1が悪かろう筈もなく、美しい演奏を繰り広げてくれる。 木管のみならず、トランペットとホルンのハーモニーも美しく現れてくれるのが嬉しい。ドクトル・クレンペラーは音楽が歌いたがっている場面でも、全く動じない。あくまで冷静沈着に音を積み重ねて行く。その手法が、実にこの曲の構造的美点を露わにしてくれているのである。 ショルティ/シカゴSO
ショルティのベートーヴェンはゴツい、と云う印象があるが、この1番はなかなか良い感じのハーモニーで始まる。 シャキシャキしたリズムはショルティ流、低弦の唸りや太鼓ドンドンなのはCSO的重厚表現である。 私は、ショルティは1番や8番は向いていると思っている。この人、意外とハイドンやモーツァルトに適性を示している。ベートーヴェンも第9などはオドロオドロしく襲い掛かってくるが、この曲あたりだと、それ行けドンドン祭も気持ち良く聴こえる。 録音エンジニアのケネス・ウィルキンソンは、ちょっと乾いたクッキリ系の感じがする特徴がある。イッセルシュテットの録音では5、8番を担当していたが、この録音も若干響きが少なくクッキリ系であった。 これも余談だが、ショルティ/CSOのベートーヴェンの一発目は、ウィルキンソンとパリーの組んだ第9であったが、これを聴いた時は思わずのけ反ったのを思い出す。狭い部屋の中でティンパニが轟きわたったのである。 シュミット=イッセルシュテット/VPO
余り語られる事は無いようなのだが、このイッセルおやじの第1は名演ですぞ。 くすんだようなVPOのハーモニーとイッセルおやじの微動だにしない構成力が上手く噛み合っている。 これを録音したエンジニアはゴードン・パリーと云う人だが、良い仕事してます。全集の中では1、2、4、7番を担当しているのだが、これら全て名録音と言って過言ではない。ハーモニーを美しく捕らえているのはDECCA録音としては異彩を放っている。 VPOとすれば何の変哲も無い演奏なのだが、録音の良さも加味して名演と呼んで差し支えないと思う。 ブロムシュテット/ドレスデン・シュターツカペレ
このオケはそもそも歌劇用オケであるが、正真正銘世界最古の歴史を持つ。しかも何とも頑固に音の伝統を引き継いでいる。 とにかくこのオケの技量は凄い。個々の奏者の技術がそれぞれに際立っている。それが集団で演奏するのであるから舌を巻いてしまうのである。ハーモニーもアンサンブルも、微塵の乱れも無く音楽を紡ぎ出す。 ブロムシュテットはこのオケの伝統の凄味を、ストレートに提示してくれている。 ベートーヴェンとはこう云う音楽を作ったのだと、素直に理解させてくれる稀有な演奏だ。 クリュイタンス/BPO
私にとって、ベートーヴェンの第1で、これぞ極め付け、と云う演奏がある。それがこのクリュイタンス盤なのである。 一体全体これ以上の第1があるのだろうか。魔法のようにこの麗しい音楽の世界に誘ってくれる。 BPOの音色はいつもながら私好みなんであるが、クリュイタンスの柔軟性が歌心を伴って夢のような幻想世界を現出させている。 私はこの演奏に惚れてしまったのである。これを凌駕する美しさの演奏を私は聴いた事が無い。 録るも録ったりEMI。柔らかく広い音作りが実に演奏にマッチしているではないか。 50年代のEMIのベートーヴェン交響曲全集は、シューリヒト/パリ音楽院Oとクリュイタンス/BPOがあって、これは組み合わせが真逆ではないかと囁き合われたのだが、このクリュイタンスの第1を聴くと、これが正解だったんだと腑に落ちるのである。 シューリヒト/VPO
シューリヒトとBPOの取り合わせのベートーヴェンのステレオを死ぬ程聴いてみたいと思うが、第1に関してはこのVPO盤がDECCAにあるので良しとしなければならない。 シューリヒトもまた、木管のハーモニー重視の人だ。出だしの渋いハーモニーからして、この演奏は只者ではない事が理解される。 このジットリとした潤いのある演奏は、このコンビ以外では考えられない。VPOの奏者が実に気持ち良さ気に歌いまくっているのが判る。低弦を押さえて木管の響きをどこまでも表出する腹芸を聴く時、私の細胞が喜んでいるのを感じる。 最後に・・・
古楽器でのベートーヴェン演奏と云うのがあって、第1も良く素材にされているのだが・・・ 私はさっぱり良いと思いません。パリパリ、ガサガサした感じで、潤いが無く、楽しくないのだ。 |

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またしても大量の音源を前にして、たじろいでおります。
ゆっくり聞かせていただきますが、ベートーヴェンの1番だけでいったい何種類のLPが棚に並んでいるのでしょう。
一般的な家庭であれば食事の支度もしてもらえず、居間に入った途端、さっきまでの家族の賑やかな会話がピタッと止まるという仕打ちを受けても文句は言えないと思うのですが。。。
2011/3/27(日) 午前 0:19
1番は、8番とのカップリングが多かったのですが、少年時代、1&8番で1枚¥2500を買う時に大いに逡巡したのを思い出します。
2011/3/27(日) 午前 0:43
quo*tzさん、こんにちは。
少年時代の2500円は、さぞや大きな決断(笑)だった事でしょう。
の小さなYou Tubeではありますがゆっくりとベートーベンを楽しませて頂きたいと思います
。
ご自宅の大量なコレクションに驚きましたが少年時代から地道に集め続けてきたものだったんですね。
私は、今だに千円以上のCDを購入するのにも何日も考えてしまうので
ケイタイ
[ ミキ ]
2011/3/27(日) 午前 11:54
私の最初の1番は、バーンスタイン/NYPの9番との箱入り2枚組(4,000円)で、なぜか本命曲よりも1番の演奏の方が気に入ってしまい、9番はもっぱらカラヤン盤になってしまいました。
最初のコンヴィチュニー盤は、意外にもザッハリッヒな演奏で少々驚きました。
頭の中の勝手な想像で、もう少し古めかしい演奏かと思っておりました。
クレンペラーはやや悠然とし過ぎ、ブロムシュテットはせかせかした感じがあって、この二人は個人的にはあまり好みではなさそうです。
ショルティは、近寄ることが少ない指揮者ではありますが、この中では群を抜いてレンジが広く感じる音ですね。
演奏そのものもあるでしょうが、この録音の良さでかなり得をしている気がします。
シュミット=イッセルシュテットは、こうやってあらためて聞いてみるとVPOが実に自然に演奏しているように聞こえます。
VPOがやりたいことを、邪魔をしないでそのままやらせている感じがして、それでいて音楽の力強さを感じさせますから、やはり名盤でしょうね。
2011/3/27(日) 午後 1:21
これだけ並べていただいて、一番気に行ったのがクリュイタンスです。
フランスの指揮者とBPOということで、断片的にしか聞いたことがなかったので、かなり入手しやすい状況になっていますから、機会をみてまとめて聞いてみたくなります。
これはいいですね。
シューリヒトは、確かにさらさらと流れるように音楽が進んでいきますね。
あまりに引っかかりがなくて、かえって物足らないところもあります。
しかし、こうやってみるとフルトヴェングラーの1番は、格段に重たいですね。
2011/3/27(日) 午後 1:21
ピリオド楽器、ピリオド演奏というのは、私もまだなじめません。
バッハあたりのでも奇妙な感じがしますのに、先だって図書館で金聖響氏のブラームスなるものを借りてきて、1楽章の途中で終わってしまいました。
買っていたら怒り狂っていたところです(笑)
2011/3/27(日) 午後 2:52
ミキさん
そっかー・・・携帯で聴いてるのか・・・
出来ればなるべくPCで聴くと良いんですがね・・・
私の持っているipodなんか酷い音ですよ。昔のラジオの方が良い音だと思います。ちなみに2万円のイヤホーンなんですけどね。やっぱりダメなんです。
2011/3/27(日) 午後 5:19
gustavさん、いつもながら詳細なコメント感謝致します。
コンヴィチュニーの演奏は、「古色蒼然」なんぞと云う表現をされる事が多いので、いつの間にか古めかしいと云うイメージが付き纏っているように思います。酒呑み過ぎて早死にしたので大昔の人のようなイメージがありますが、イッセルおやじと同年代の人です。
ゲヴァントハウスの前任者でおっかない顔をしたアーベントロートが剛毅な爆演をしたのに比べて、どちらかと云うと優しく訥々とした演奏をした人だと思っています。
クレンペラーはドクトルですから、録音では分析的な表現をしているように思います。でも、50年代初期のMONO録音では躍動感溢れる情熱的演奏をしております。私はMONO時代の方が好きですね。
ブロムはせかせかと感じますが、これはオケのせいですね。オケが全く緩み無く完璧に細部まで弾きこなしているのでせかせかと聴こえますが、テンポ自体はそんなに速い事はありません。このオケの技量を聴くには面白いと思います。
クレンペラー盤のシヴィルとブロム盤のダムの違いなんかが聴き取れるとより一層楽しみが増えます(笑)
2011/3/27(日) 午後 5:42
イッセルおやじに関しては全くその通りでございます。VPO初のステレオでのベートーヴェン・シンフォニー・コンプリートの指揮者として白羽の矢が当たったのは、そう云う意味があったと思います。
そして、いつもながら好みが一緒なのですが(笑)クリュイタンス盤は素敵です。BPOの回し者かと疑われそうですが、良いものは良いんです。同じフォルテでも、ティンパニの入っている部分と入っていない部分の鳴らし分けなんかは、上手いし感動的です。木管の柔らかい歌い方やストリングスの音の刻み方、どれをとっても群を抜いていると思います。
シューリヒトは大昔の人です。トスカニーニ、ワルター、メンゲルベルクと云う人達と同じ世代に入れて良いですね。
クレンペラー、フルヴェン、クナッパーツブッシュよりは古いですね。ですから、VPOも安心して古臭い音出してますね(笑)
フルヴェン先生は、やはり特殊な人ですよ。独特の世界があって、その世界に踏み込んで行かないと理解出来ない、みたいなところがあります。みだり矢鱈とお勧めは出来ない部類の演奏が多いです。
でも、激辛ラーメンみたいに、忘れた頃に無性に食べたくなる(
2011/3/27(日) 午後 6:33