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音盤再生家の音楽話
音盤再生と音楽についての話

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ベートーヴェンの第5とチャイコの6番が舞い込んで来た件りは前記事に書いた。
今回はベートーヴェンの第5交響曲、コンヴィチュニー指揮のライプツィヒ・ゲヴァントハウス管の60年録音の話である。


私は古いタイプの人間なので、コンヴィチュニーのベートーヴェンが好きである。
60〜70年代、猫も杓子もウィーン・フィルかベルリン・フィル、と云う状況の中で、一際存在感を放って居たのがコンヴィチュニーと云う恐ろしい容貌の指揮者であった。処が、これは凄い音楽家だわい、と感服しながら聴いて居る頃には、この恐ろし気な楽長は既に物故して居た。
トスカ爺やフルヴェン先生を振り出しに、クレ爺やクリュイタンスのべトーヴェンを只管聴いて居た時期、遂にSイッセルシュテットの全集が出た。
当時イッセル親父は、私にとっては未だ未知の存在で、これ又随分と怖そうなゲルマン顔の指揮者は、顔だけで充分良い演奏だろうと思わせるオーラを纏っていた。頭がクラクラする程、この全集が欲しかったが、如何せん、ガキの手に届く代物では無かった。
一年越しで金を貯め、これを買うぞ、と決めたのがコンヴィチュニーの全集である。

イメージ 1

この広告の村田氏の「これがベートーヴェンの交響曲の本来の姿である」と云う一言に絆された訳である。
この中の第5、評判は高いが如何せん音が悪い。後年、PHILIPS盤を買ったがそれでも第5ばかりは音が悪い。
そうなると、どうにかしてこの音盤からマトモな音を引き出したい、と手を変え品を変えて音盤再生に取り組む事となった。

当ブログでも散々言って来た事であるが、何十万の針を使おうと、良い音盤一枚には叶わない。何百万のプレーヤーを買う位なら数万のオリジ盤を百枚買う方が良い。素材の良さには何物も敵しない。
これぞと決めた演奏があるなら、とことん良き音盤に拘るべきだ、と言ったら、反応したのがShuさんであった。
コンヴィチュニー盤がそんなに音が気に食わぬのなら、これを聴きなさい、と態々送って戴いた。

コンヴィチュニーの音盤に関しては、ネット上でも色々な説(情報)が飛び交って居て、64年以前の録音は全てモノラル録音である、と云う極論も有る事は承知して居る。STEREO表記の物は全て擬似ステ盤である、と言うのだ。
が、しかし、私の耳はどうしてもこの論説を受け入れない。モノラル、初期ステレオ、擬似ステレオと、聴き続けて来た耳には、どうしても受け入れ難いのである。
ドイチェ・シャルプラッテンにステレオ機材が導入されたのが64年である、と云う情報が、徳間の某氏から流れた事に起因して居るのであるが、それが事実であるかどうかと云う机上の論説を捻り回すよりも、実際の音盤を聴く事の方がハッキリと確認出来る筈である。しかし、それがそう簡単な事では無いのである。同じ演奏の、最初期のMONO盤と最初期のステレオ盤を入手すると云うのは言う程簡単では無い。DECCAやEMIと言った西側大手レーベルに関しては私も早くから確認済みである。そう云う確認作業の中で、同じMONO盤でもイコライジングの違う盤が存在する、と云う事実を確認して来た。
しかし、東独エテルナとなると簡単では無い。出回って居る物の多くはセカンド、サードと言ったプレスで、そうなると著しく音質が変化して仕舞う。
このような愚痴を察知し、その耳で確認してみなされ、と、大変な労力を費やしてくれたのが件のShuさんである。誠に頭が上がらない。

送られて来たのは
68年のSTEREO盤(黒ステ盤)
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64年のSTEREO盤(Vステ盤)
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67年のMONO盤(V字盤)
イメージ 4

の3種である。

何分、60年当時のETERNAの状況が正確に把握出来無いので、断言は出来ぬが、68年の黒ステ盤はステレオ盤の3rdプレスではないかと推測して居る。
64年のVステ盤はステレオ盤オリジナルの可能性が高い。
67年V字MONO盤は2ndプレスと思われる。

因みにオリジナルMONO盤のジャケはこれである。
イメージ 5




最初に昨年の記事で紹介したPHILIPS盤を聴く事にする。
これでも永年苦労して辿り着いた再生音である。当初は全く如何んともし難い音質であったが、イコライジング補正する等して本来のゲヴァントハウス管の剛毅な音色、演奏に再現して居る心算である。以下のETERNA盤と比較して戴きたい。
かなり再現した心算ではあるが、定位感に乏しく、音は拡がって聞こえるものの擬似ステと言われても致し方無い。
私はゲヴァントハウス管の実演に接した事は無いのだが、乏しい実演体験の中から、ゲヴァントハウス室内管の音色を参考にこうであろうと云う再生音を導いた。




68年の黒ステ盤である。
高域の抜けは悪いが定位感は初期ステレオ盤レベルには出て居る。これであれば強引に擬似ステレオであると断ずる訳には行かぬ。
上記のPHILIPS盤と全く同じ再生環境であるから、残念乍ら貴重なETERNA盤だと言って有難がると云う所までは行かない。聴き易くはあるが如何にも古いステレオ盤と云う感じで、これであれば国内盤で充分事足りる。




64年のVステである。
上記の黒ステ盤に比べると、明らかに音域が拡がって居るのが判る。定位感も若干ではあるが良く聞こえるが、これは音域が拡がった為にそのように聞こえるのであって、基本的には同じステレオマスターによるものであろう。
低域方向への伸びは明らかに此方の方が優れて居り、ティンパニの打ち込み等も程良く響く。
しかし、矢張りこれでも高域は頭打ちで、音場の狭さが如何にも古い録音だと痛感させられる。





67年のV字MONO盤である。
こうなると、最早別物である。いきなり高域が抜け、視界が開けたように感ずる。高域が伸びると云う事は、低域が深々と伸びる。この謎はどう解釈して良いのか解らぬが、スーパーツィーターを使うと低域が伸びると云う例の現象と同じである。
これは全く違和感が無い。恐らくオリジナルMONO盤であれば、もっと広帯域で生々しい音がする事であろう。
モヤモヤ感が無いのが嬉しい。煩わしさが無く素直に音楽に入って行けるのだ。これは御薦めである。



と云う事は…
益々混乱して仕舞うのだが、59年録音の7番の素晴らしい音質を聴くと、到底擬似ステとは思えず、今回の5番は明らかにMONO盤優位である。
ステレオ録音にPHILIPSの機材を使用した可能性もあり、一概にMONO録音&擬似ステ、と云う結論にはならないであろう。
59年録音の7番、60年録音の6番は非常に良い音質のステレオを聴く事が出来るのである。
今回の検証からすると、初期ステレオ録音&MONOカッティングと云うのが正解だと思うのだが…

  • 顔アイコン

    MONO盤が、この中では他を圧して聴きやすく、しっかりした音なのに驚きました。
    実は私は、これをLP時代にはまともに聴いておらず、
    CD時代になって初めて、良さを認識した口です。いまその独ベルリンクラシックス盤のCDを聴き直しているのですが、全集中特に5番だけ音が悪い印象はなく、確かに幾分高域の伸びは良くないものの、くっきりして聞きやすいステレオ音です。
    現在ベルリンにあるマスターテープを使用したと思われますが、これを聴く限り、一概にステレオマスターの音質が不調だったとも言い切れない気はします。

    [ yositaka ]

    2017/4/25(火) 午後 6:18

  • 顔アイコン

    Quontz先生、

    記事に取り上げて下さり大変恐縮に存じます。誠に有難う御座います。

    コンヴィチュニーのベートーヴェン交響曲は全集をCDで入手し、その後復刻のフォンタナ盤のLPを購入しました。先生の記事を読んで5番はそこまで音が悪いものか?とCDとLPを聴き比べたところ音の良し悪しの程度は別として、音質の違いはハッキリと分かりました。それでは、と、まずはエテルナの黒ステ盤を入手し、フォンタナとの格差に驚き、それなら、とVステ盤を探し回ってようやく見つけたところ、弊員にとりましては驚愕の高音質でひっくり返りました。では、V字モノ盤はどうかな? と比較的入手しやすい同盤を購入し聴いてみたところ、なかなか音質の良いモノラル盤だな、、、くらいの印象でしかありませんでした。。。

    [ sho*ch*odd*o*okoo ]

    2017/4/26(水) 午前 4:07

  • 顔アイコン

    そうなんです。実は弊員にとりまして、このV字モノ盤は、「ついでの1枚」だったのです。。。

    自分は音質についてこんなにも不正確な判断しか下せていなかったのか??? と考えると、本当に恥ずかしくて、逃げ出したいくらいです。。。

    弊員のモノラル再生システムは、先生に教わりながら自分なりに試行錯誤しながら組み上げていったもので、それほど悪いものではないと思うのですが、先生の今回のMP3の高音質の前では、全くぐうの音も出ません。数百万円のプレーヤーを買うよりも高音質な数万円の音盤を100枚求めるべき、とのお言葉は仰る通りですが、同時に音盤とオーディオ技術は正に再生道の両輪、、、弊員にとって成長するべきことが果てしなく広がっていることを再認識致しました。。。

    そしてそして、このV字モノ盤が最初期盤ではなく、なんとセカンドバージョンだったとは。。。全くの調査不足でした、大変失礼致しました!

    (前記事に続く連投でほとんど睡眠を取られていないのではないでしょうか? お体何卒ご自愛下さい)。

    Shu

    [ sho*ch*odd*o*okoo ]

    2017/4/26(水) 午前 4:08

  • yositakaさん

    私も全く同じ考えです。ベルリンクラシクスのCDの音質は、修正されたものでは無く、オリジナルマスターが非常に良い状態である事を意味して居ます。下手なレコードより余程良い音質です。
    何分断定は出来ませんが、PHILIPSのステレオ録音機材を使用し、ステレオ録音されたものと推測して居ます。
    当時の状況から鑑み、MONO盤を先行させたのは無理からぬ事です。我が家でもステレオセットを導入したのは65年位でした。
    しかし…流石に60年代のMONO盤は良い音がしますなぁ…
    マタチッチのエロイカやコンヴィチュニーのブル4のMONO盤を聴き直してみようと思ってます。

    quontz

    2017/4/26(水) 午後 1:34

  • Shuさん
    長文コメント有難うございます。
    引き続き悲愴アップしたいと考えて居ます。

    音盤集めに大変労力を傾注されて居ります事、敬意を表します。
    私が探し切れて居ない音盤を是非探してみて下さい。そして出来ればブログなんぞで評してみては如何でしょう?
    以前yositakaさんに紹介戴いた、ドヴォルジャーク新世界交響曲の、シルヴェストリ指揮フランス国立放送の旧録音(米ANGEL)です。

    quontz

    2017/4/26(水) 午後 2:06

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