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gustav師匠から尻を叩かれ、喝を入れられたので、青い呼吸をしながら背中の痛みに耐えて書いて居る次第。
どうも、最近調子が良くなった、と記事を書き始めると途端に激烈な発作に襲われると云う状況が何度も続いて来たので、昨今の体調の事は触れない事とした。

最近は寝ながらタブレットでネットを巡ったり、音楽を聴くなんぞと云う横着な状況に成って仕舞い、真摯に音楽と相対して居ない。
が、イヤフォンとかヘッドフォンで聴くと、自分のアップした音源が思ったような音に聴こえて来ない事に立腹して仕舞い、身体に良く無い事甚だしい。
そもそもPCに繋いで居るスピーカーはONKYOのS-9900と云う33cmウーファー2wayの大物である。こいつをモニターにして収録して居るので、小型SPやイヤフォン、ヘッドフォンでバランスが取れる道理が無い。
これは何としてもヘッドフォンで調整した音源を収録すべきと思い立った。
イメージ 1

ネット環境は人それぞれ、十人十色であろうが、殆どの場合は小型のスピーカーを繋いで居る事と思う。
小型にしろ大型にしろ、スピーカーの場合は高域を調整(補強)して聴いて戴ければ幸甚である。
ヘッドフォンの場合は概ね調整無しのフラットで御聴き戴ければ良いかと思います。

昨今、風聞に接するに、レコード復活の兆し有りとの事だが、阿呆の様に高いプレーヤーやカートリッジ。音質調整が不備なアンプ等々の状況を踏まえると、烏滸の沙汰(おこのさた)である。
音盤によって再生方法が異なる、なんぞと口走った処で誰が耳を傾けよう。

今回は態と録再特性は調整せず、RIAAのみで収録した。
針による差違を確認する為である。
音盤の詳細は、体調の事もあり省略した。パーソネル等の情報は、御面倒でも御自身で確認戴きたく存じます。

収録曲はJAZZ2曲、クラシック2曲。
最初はアート・ペッパーの代表盤、meets The Rhythm SectionからYOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO
次はコルトレーンのBalladsからSAY IT
次にベートーヴェンの第5から1楽章、ワルター/コロンビア響
最後はブラームス4番から1楽章、ケルテス/VPO
何事も初心忘るべからず、である。誰もが耳にした名盤を選んだ。

再生針は、DENON DL103FL、DENON DL103SA、London Maroon、Grace F14Ex、の順である。


CONTEMPORARYのmeets The Rhythm Sectionはロイ・デュナンの録音である。Lチャンネルのペッパー、Rチャンネルのリズムセクションのセパレーションを確認して戴きたい。
音盤はワーナー・パイオニアの再発物だが、非常にバランスの良い出来栄えである。サックスの曇りが取れる様に高域を補って聴いて戴きたい。

1-1.DENON DL103FL でのペッパーYOU'D BE
   オリジナルのDL103よりはシルキーで上品な表現力。低域の踏ん張りは103ならではの安定感がある。反面金属系の音は上品に丸められて、聴き易くはあるが暖か過ぎ、冷たい金属の響きに物足りなさを感じる。



1-2.DENON DL103SA でのペッパーYOU'D BE
   グッと帯域が広がり音場感が増す。大変良く出来たカートリッジだ。金属のタッチも良く表現出来て居る。



1-3.London Maroon でのペッパーYOU'D BE
   所謂DECCA針だが、帯域を欲張らず美味しい所をシッカリ聴かせる。非常に音楽的で、音の輪郭をきっちりと描く聴かせ上手なカートリッジである。



1-4.Grace F14Ex でのペッパーYOU'D BE
   プロ用の特殊なカートリッジなので、在るべきものが在るべきように聞こえる。音盤に刻まれて居る情報を余す処無く拾い上げて来る。その分ノイズも情け容赦無く再生されるので音盤の手入れを怠ってはならない。




コルトレーンのBalladsは言う迄も無くIMPULSEのゲルダー録音だ。音盤は日コロのabc Impuls盤。
タイナーのピアノの響きの出方で針の特徴が掴める。
コルトレーンのサックスの曇りが取れるように高域調整して戴きたい。


2-1.DENON DL103FL でのコルトレーンSAY IT
   例によってシルキーで聴き易く、低域も厚く出るが、金属性の音やピアノの余韻に関しては優し過ぎて食い足り無い。


2-2.DENON DL103SA でのコルトレーンSAY IT
   103系の足腰の強靭な鳴り方であるが、MCカートリッジ特有の減衰率の高さから、ゲルダーの響きの美しさの表現にはちょいとキツい。


2-3.London Maroon でのコルトレーンSAY IT
   肩の荷が降りたようにゆったりと無理無く音楽に浸れる。矢張り聴かせ上手なんである。ピアノらしい硬質感も上手く表現し、強調感の無い音楽表現は流石である。


2-4.Grace F14Ex でのコルトレーンSAY IT
   スタジオの空気感迄をきっちりと拾い上げて来る。ゲルダーのインパルス録音はこのように広い空間表現が魅力となって居る。




ワルター/コロンビアの第5なんぞは誰もが耳タコだろうから、余計な講釈は要らぬであろう。しかし、一言弄するならば、マックルーアは音場感に相当な気を遣って居ると云う所を御聴き取り戴きたいのである。
音盤はSX68カッティングのSONY盤。高域はJAZZよりも更に高目に調整して戴きたい。


3-1.DENON DL103FL でのワルター・ベト5
   相変わらずのシルキーサウンドで、かなり距離感のある俯瞰的な描き方である。




3-2.DENON DL103SA でのワルター・ベト5
   視界が広がり細部もかなり拾えて居る。しかし、103系の腰の強さが少々鬱陶しく感じるのが残念。



3-3.London Maroon でのワルター・ベト5
   何時ぞやも述べた事があるが、何故かDECCA針はCBS盤と相性が良い。
DENONと比較すると、一気にストレスが取れ、音楽の躍動感が増す。



3-4.Grace F14Ex でのワルター・ベト5
   帯域が広く、滑らかで申し分が無いのだが、DECCA針の方が面白く聴けるのは如何なる事であろう。相性と言うしか無い。





ケルテスのブラ4は私の愛聴盤である。これはVPOのブラ4のベスト盤と言っても過言では無い。録音は名匠ロック。大きな音場感が見事である。
音盤は英DECCAの全集盤。
DECCA盤はRIAAと相性が悪く、本来は再生特性の調整が必要であるが、先述の通り態とRIAAで収録して居るので、高域補正で凌いで戴きたい。


4-1.DENON DL103FL でのケルテス・ブラ4
   何かシャキっとしない。国内London盤のようなもっさりとした感じが拭えない。



4-2.DENON DL103SA でのケルテス・ブラ4
   少しは芯が入った感じがするが、103っぽいもっさり感が付き纏う。



4-3.London Maroon でのケルテス・ブラ4
   DECCA盤だからDECCA針、と云う訳では無いが、一気にストレスが取れ、自然な響きに近付く。



4-4.Grace F14Ex でのケルテス・ブラ4
   矢張りクラシックはGraceが合う。これが私が永年聴き馴染んでいるVPOの音色である。この空気感が何物にも代え難いのである。





流石にストレスが溜まって来たので、ffss補正したものを最後に貼って置く。カートリッジはGrace F14Ex。
















此の処オーディオに関する話題から遠ざかって居る。昨今はオーディオ自体も人々から離れている。
要するに、ショルティもバーンスタインもオーマンディもカラヤンも居ないのであるから、音盤も売れない。何時の間にやら主要レーベルも姿を隠し、名も無き演奏家の演奏がネットで流れる。
まともな音盤が出て来ないのであるから、まともなオーディオも登場しない。
或る一定以上の年齢の音楽愛好家は、古の名演の希少盤を探しては悦に入って居る、のが関の山である。
JAZZはもっと悲惨で、巨匠ゲルダーが亡くなった瞬間に、過去の遺物と化して仕舞った。JAZZ愛好家は、60年前に一瞬花開いた文明の遺跡を発掘する考古学者。世界遺産を旅する観光客の気分である。
良き音源が出て来ぬからには、良きオーディオも出て来ぬ道理である。


米国のShuさんからカラヤンの71年録音、チャイコ6番の英EMIオリジナル盤を送って戴いた。
イメージ 1
何時も私はDGの76年盤が良いと喧伝して居るのだが、gustav師匠は71年盤が良いと譲らぬ。そんな議論を読み、疑問を抱いたのはShuさんである。自ら音盤を取り寄せ、御自身の感性で結論を下された。
ここはgustav師匠の勝ちだと云う結論である。
私が米Angel盤を聴いて居ると云うので、耳をかっぽじって良く聴きなされ、と態々英EMI盤を御送り下さった訳である。

耳をかっぽじって良く聴いてみた。
EMI盤は独Electrolaで録音。トーンマイスターはギューリッヒだ。当然DGのヘルマンスとは違った理念、手法で収録されて居る。
ここを踏まえなければならぬ。
それと英EMI独特の、過剰な迄の低音のデフォルメも考慮に入れなければギューリッヒの理念を聴き取れない。
私の聴き方は、音盤鑑賞とは出来上がった音盤自体が作品として聴かねばならぬ、と云う信念に基いて居る。であるから、ギューリッヒの伝えたかったカラヤンの悲愴と、ヘルマンスの伝えたかったカラヤンの悲愴とが、決して同じ土俵上の相撲であるとは考えて居らぬ。

ギューリッヒは、無指向性マイクを遠くから使って音を拾い、360度全方向からの音を録った。意識したのは、『丸い』音の空間である。であるから、実際にカラヤンの演奏を生で聴いたgustav師匠が、「生のBPOはこんな音だ」と仰るのは全く正しき捉え方なんである。
ヘルマンスはと言えば、マルチマイクで各パートの音を丹念に拾い、個々の奏者の技量までも克明に堪能する事が出来、それがホールの壁に美しく反響して行く「美音」を以てカラヤンの凄腕を訴えたのである。
その結果、76年盤では、各楽器を自在に操り、曲の持つ真相迄を抉り出した比類無きPathetiqueを表現した。


英盤を御送り戴いたShuさんには、ターンテーブルシートにはラッカー原盤を使いなされ、と余計なアドバイスをした。
拙記事を御読みの方で、まだ御試しで無い方が居られたら、一度是非試して戴きたい。実に顕著に効果が認められる事でしょう。
折角、英盤を御送り戴いたので、この盤を用いてシートの差異を聴いて戴こうと云うのが本記事のネタである。

私自身は特注のガラス製シートを使って居る。プラッターに合わせた円形ガラスの片面にラッカーコーティングしたものだ。
イメージ 2
これはEMTの927を聴き、ガラスターンテーブルの効用に気付き、咄嗟に閃いて、クラシック音楽ファンのガラス業者に趣旨を説明し、作って貰ったものだ。

そして、これがLPのラッカー原盤である。
イメージ 3

写真では両者の差は定かでは無いが、ラッカー盤の作りは見事なものである。一見ラッカーコーティングされて居るとは思えぬ程の平滑性だ。これにLPの原型をカッティングするのであるから当然の事であるが、非常に厳密な作りだ。
そして、中身はアルミ製なので、スタビライザーを使用する事で僅かなしなりを生ずる。この僅かなしなりで音盤と、よりフィットする。これがミソである。


検証、収録に使用したのは
GRACEのF-14 BROADCAST Excellent US-14 RubyⅡ
シェルはGRACEの放送局用でマグネシウムビスで装着
リード線は写真とは違ってGRACEの純銀単線使用
イメージ 4

プレーヤーはPIONEER PL-50  ボディには砂状トルマリンを充填した重量級の砂上の楼閣システム
イメージ 5

尚、カラヤン関連の動画は、順調に削除されて仕舞うようなので、御早目の鑑賞を御奨め申し上げます。


最初はハネナイトゴムのシートでの再生
これについてどうこう述べる訳では無い。ハネナイトを使用した時にはこのような音質である事を確認して戴きたいのである。本説はシートの違いが再生音質に如何なる変化をもたらすかと云う事である。
EMI盤自体は、某東芝盤とは異なり、確りと輪郭を描きながらも豊かに広がる音場感が確認出来、全く違和感は無い。要するにギューリッヒの音作りが理解出来無い者が下手な音盤を作ると、某東芝の如き有様になると云う事なのである。



次は件のラッカー原盤での再生
前者と比すと明るく視界が開け、高低に音が伸びて行く。音楽に張りが出来、弾むような躍動感が再現される。図太いだけの低域では無く、良く伸びてホールを包み込むのでストレスが無い。
前者とは全く同じ条件で、シートをラッカー原盤に替えただけでここまで表情が変わって仕舞うのである。
聴き手が積極的に再生に関わって行く事が出来るからオーディオが面白いのである。LPの再生は腕の見せ所なのである。



次は私のグラスシートでの再生
ラッカー原盤と比べ、どちらが正しき再生音であるか、と云う問題ではない。言えるのは確かに音は変化すると云う事。何かをやれば何かが変わるのがオーディオの妙味である。
元気一杯、生き生きとした躍動感を感じさせるラッカー原盤と比すと、此方はシットリ感が増す。明らかに高低に、より音域が広がり自然な響きとなって居る。ピッツィカートの強調感も取れ、クラリネットの広がりもスムースである。その分ダイナミックが減じて居る様にも感ずるが、音の行き場が広がって居るのでそのように聴こえるのである。空気を圧縮したような低周波が感じられたなら、そのシステムは相当良く出来て居ると言って良い。
常日頃、多少緩い再生音であるシステムにはラッカー原盤を使用する事で、より生き生きとした演奏に接する事が出来るであろう。



最後はラッカー原盤に戻り、米Angel盤の再生を参考までに
細やかで鮮やかで迫力満点で、加えて豊かな響きである。
CAPITOLは良い仕事をして居るのである。ギューリッヒの仕事が良く判って居るから斯くなるのである。
これであるから音盤再生も音盤探しも止められないのである。

MONO盤再生の愉悦

MONO盤の再生は楽しいし、古の演奏を上手く再生出来た時の喜びも又一入(ひとしお)である。
私がブログ上で、MONO盤再生に関して、何じゃかんじゃと煩い事を述べ立てるので、MONO盤再生は
面倒だと思っている方が居られるかも知れぬが、実は本当に面倒なのである。

MONO盤全盛時代、50年代なんぞは、各社各様に勝手にイコライジングを行って居たので、全く何を基準に再生するべきか困惑してしまう。
それが、何時になったら解消出来るのかと思えば、ステレオ時代に入っても全くスッキリしない状
態が続いた。RIAAの元祖であるRCAの音盤でさえ、針の特性によっては調整が必要である。
DECCA盤を再生するにはDECCA針が良かろうと云う説があったが、これは概ね正しい。但
しDECCA針自体の調整が頗る難しい。更に、如何せん現代風の音とは言えぬので、高域は抜けるように補正した方が聴き易くなる。
で、MONO盤は全く無茶苦茶であるから、最終的には「耳」で調整するしかない。
例えば、PHILIPS盤、メンゲルベルクのベートーヴェン全集。これは録音自体はPHILIPSが行って居
る訳ではない。PHILIPSが音盤化しただけである。であるから、RIAAで良ろしかろう、と云う訳ではない。
※yositakaさんより情報を戴きました。PHILIPSを興したエンジニアの手による録音と云う事です。詳しくは下記コメ欄を参照してください。
yositakaさん、有難うございました。

SPU-MONO針で、RIAA再生した場合の再生音を聴いて戴きたい。
全く高域が抜けず、極悪なベールに包まれたような音である。これを聴いた瞬間、絶対オカシイと思う感性を身に付けて欲しいと思う。


SPUでイコライジング補正後の再生音である。

更に使用針によっても個性、癖があるので、矢張り自身の「耳」で補正は必須である。

DL-102による再生音


エジソン/spiritによる再生音



このような針による違いを楽しむも良し、気に入った針でトコトン追求するも良し。兎に角、一筋縄では行かぬのがMONO盤再生である。
しかし、苦労が多い分、上手く鳴った時の悦びも又大きいと云うものである。



真剣にオーディオやら音盤やらに係わっていると、時として思いがけず面白い物やら貴重な物が懐に飛び込んで来る事がある。飛び込んで来ると言っても、全く元手が掛からない事もあれば、相応の対価を支払う事もある。
先日は近所のリサイクルショップを覗き、ふとレコードの山を穿ると、LONDONレコードのML盤を発見した。シューリヒト/VPOのベートーヴェン交響曲第1番&2番。これは貴重だ。価格は¥80である。fontana盤コンヴィチュニーのシューマンも¥80、ベーム/VPOのモーツァルト交響曲第34番&シューベルト5番のMZ盤も¥80。バックハウス/ベーム/VPOのモーツァルトPC27番のSLC盤のみが¥300。まあ良い。全て買っても¥600で釣が来る。
勢いに乗って中古レコード店に繰り出した。昔馴染みの女店主が「久しぶりっ、元気だったぁ、クラシックは良いの無いよ」と出迎える。盤の良し悪ろしを講義なんぞすると値が吊り上るので、当然知らぬ振りをするに如かず。
しかし、あった。DG盤の箱物。ベーム/BPOのモーツァルト後期交響曲集。新品だ。値段は¥4500。財布を覗くと千円札が5枚見えた・・・
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何と言う豪華な作りであろう。布張りBOXで文字は全て箔押し加工だ。ドイチェ・グラモフォン・ゲゼルシャフトのロゴが燦然と輝いている。60年代のDG盤の箱物なんぞ、我々ガキ共には高嶺の花。当時は指を咥えて見ているだけの存在だ。それがタイムスリップしたかの如く、新品で手元にあるのは何とも感慨深い。



AT−1と云うオーディオテクニカ製のカートリッジがある。62年に創業者松下氏がこのAT−1を引提げてオーディオテクニカを立ち上げた。国産のMMステレオカートリッジ第1号である。
この幻のカートリッジが、或る時我が下にやって来た。関東某所にお住まいのカートリッジ収集家の方から突然小包が送られて来て、開けると中にこいつが入っていた。「AT−1の未使用品です。私の処にあっても使い道が無いので、そちらで有効に使って戴きたい。」との事である。御好意は有難く御受け申し上げたが、中々使い道が無く、そのまま数年の間仕舞ってあった。
AT−1は写真では見知っていたが、現物を手にするのは初めてだ。しかも製品写真ではボディは黒なのに、こいつはグレーである。
こんな珍品、埋もれさせて置くには勿体無い。AT−1の存在は知っていても実際に聴いた人は多くないであろう。当ブログで光を当ててあげようと、此の度シェルに組み込んだのである。
イメージ 2
こいつはデカい。重い。音出しをしてみると、その体躯の如く中々にシッカリした音調だ。レンジは狭いが腰は強い。取り立てて悪く言う処は無い。これは当時とすれば優れ物であったろう。
何とも懐かしい暖かい音がする。そうだ、昔のステレオはこんな感じだった。抜けは悪いし音場も狭い。しかしこの音は郷愁を誘うではないか。これは60年代の音なんである。



と云う事で今回の企画は、60年代初頭のカートリッジで、60年代初頭の音盤を聴いてみよう、と云うものである。
これがステレオ原初の音である。ここから全てが始まったのである。温故知新である。
最初はカラヤン/VPOの「くるみ割り人形」である。このジャケットを見るだけで鼻血が出そうになる程懐かしい。演奏も素晴らしい出来だ。BPOとのスピーディな演奏とは異なり、訥々とした語り口が味わい深く染み入って来る。
次はモントゥ/VPOの「幻想交響曲」。ビクターのVICTROLAレーベルだ。こんな原初のステレオの癖に、ビクターの音盤は既にHi-Fiである。これも懐かしいレコードだ。中袋に「パンはいのちの糧 音楽はこころの糧」「世界のレコードは日本ビクターから」なんぞと云う文字が刷られていて、涙が出そうになる。
続いて日コロ盤、スターン/オーマンディ/フィラデルフィア管のメンコンだ。ジャケ裏には、このレコードは立体音響です、と云う解説があり、ドブ臭い当時の匂いが漂って来る。音は意外にまともである。殆どまともでは無かった東芝エンジェルと比らぶれば、全く優秀と言えよう。
最後は、デジタル録音盤をAT−1で再生したらどうなるか・・・と云う企てである。イ・ムジチの「調和の幻想」だ。過去記事の音源と比べてみるとAT−1の実力が判るであろう。


チャイコフスキー、組曲「くるみ割り人形」。カラヤン/VPO。62年製LONDON盤。


ベルリオーズ、幻想交響曲、第4楽章。モントゥ/VPO。64年製VICTROLA盤。


メンデルスゾーン、ヴァイオリン協奏曲、第1楽章。スターン/オーマンディ/フィラデルフィア管。61年製COLUMBIA盤。



ヴィヴァルディ、「調和の幻想」協奏曲第1番第1楽章。イ・ムジチ合奏団。84年製、蘭PHILIPS盤。


F-14がやって来たの件

遂に発注していたカートリッジが届いた。GRACEのF-14 BS-EXと云うヤヤコシイ名前の物だ。基本はF-14であるが、プロ仕様のBROADCAST STANDARDタイプをベースにチューンアップしたExcellentバージョンである。
BROADCAST STANDARDは欧州向けプロ仕様で、放送向けに作られた物だが、更にExcellentバージョンはレコード会社のマスタリング用、復刻盤製作用、遺産的音源のデジタル化等の用途の為の特別仕様である。
コイツを高剛性、無共振のプロ用ヘッドシェルに組み付ける作業から開始である。取り付けビスはこれ又プロ仕様のマグネシウムビスで、リード線はカートリッジ専用の物と云う特別尽くしである。
本体はF-9と殆ど同じであるが、ブラックのボディは精悍そのもので、GRACEのヘッドマークが金文字で高級感がある。これに手持ちのお宝針、US-14RubyⅡと云う完全限定のスタイラスを装填して完了である。

組み上がったプロ仕様F-14
イメージ 1

下側はこんな感じ
イメージ 2

斯様な、市販されていない特殊な物について御紹介するのは如何なものかとは思ったのだが、逆にこんな珍しい物を紹介するブログも他には無いであろうから、非難は覚悟で、敢えて公開する事にしたのである。このような物が存在すると云う事を知って戴き、音盤再生の参考にして戴ければ幸甚である。

兎に角コイツはとんでもない音が出る、と云うのが率直な感想である。良いの悪いのと云う範疇を越えた、真実の音だ。
これは音楽鑑賞用ではない。あくまで業務用として、キッチリ仕事を果たすべく作られた物だ。従ってF−9の如く、滑らかで美しい音楽を奏でる、と云う風情は全く無いのである。音盤に刻まれた情報を、細大漏らさず全て拾い上げると云う厳しい音なのだ。
品川無線専務の曰く「民生用には不必要な広帯域、高解像度」と云うのが将に当て嵌まる、実に厳格な音である。心臓を鷲掴みにするようなこの再生音は、スリルに満ちたものであり、正しきものの美しさは確かに感じる事が出来る。頭がクラクラするのは、慣れていないからだと、自らに言い聞かせては居るが、耳朶が震える音響は精神的にも肉体的にも疲労感を伴う事は確かである。
四の五の言うよりは、実際に聴いて戴くのが早い。



最初はDGのヴィルトハーゲン録音。シューマン交響曲第3番の5楽章。カラヤン/BPOの71年録音
比較対象は、DENON、DL−103FLとGRACE、F−9(US-14RUBY)である。

DENON、DL−103FL
何時も乍らシルキーな音調は、暖かく聴き易い。切れ込みは甘いが、ズシンと重い低域が充実感溢れる音楽を奏でる。



GRACE、F−9(US-14RUBY)
F−9の広帯域再生は、音盤が変わったように聴こえる程だ。この弦の滑らかな美しさを凌駕するカートリッジは他に聴いた事が無い。私はこれを40年使い続けている。



GRACE、F−14BS-EX(US-14RUBY)
F−9の進化型と言われるF−14であるが、全く違う音がする。上から下まで全てが出切った音で、曖昧さは一切無く、音楽が大きくなった感じだ。ここまで来ると天晴れである。




次もDGだが、これはヘルマンス録音。ベートーヴェン交響曲第5番の3〜4楽章。ベーム/VPOの70年録音

DENON、DL−103FL
当りが柔らかいのだが、芯が通っているのでベームの剛毅さは伝わる。良い感じで丸められた響きである。



GRACE、F−9(US-14RUBY)
F−9で聴くベーム/VPOのヘルマンス録音は格別である。美しく熱く力強い。ホールの響きも美しく、臨場感がある。



GRACE、F−14BS-EX(US-14RUBY)
ここでも解像度の凄さを実感する。トゥッティで荒れ狂うコントラバスの後ろで、小さく打たれるティンパニのタッチまで峻別出来る程である。高域の伸びも充分で、管楽器の大音量でも自然に音が収斂して行くので耳に優しい。




ヴィヴァルディの「調和の幻想」協奏曲第1番。イ・ムジチ合奏団の83年デジタル録音。蘭PHILIPS盤LP。

DENON、DL−103FL
シルキーで暖かい感触が心地良く、自然に音楽に浸る事が出来る。103の美点が強調された鳴り方である。



GRACE、F−9(US-14RUBY)
出だしから美しいヴァイオリンは実際のホールでの鳴り方に近く、如何に広帯域再生かが判る。



GRACE、F−14BS-EX(US-14RUBY)
少しの緩みも無く、感傷に浸る隙をも与えない。聴いている自分がマイクロフォンになったような気分になる。あくまでも正確無比に徹した鳴り方である。




ジャズからは例によってオスカー・ピーターソン・トリオのWE GET REQUESTSからYou Look Good TO Me。Verveの国内盤LP。

DENON、DL−103FL
ピーターソンのピアノは丸く、シグペンのドラムもレイ・ブラウンのベースもズンと重い。ジャズの場合はこれが伝統的聴き易さとなる。トライアングルは綺麗に出ているが減衰は早目である。


GRACE、F−9(US-14RUBY)
ピアノは軽く美しく伸びる。ブラウンのベースは分離が良いので他の楽器に被らずに音を濁さない。ドラムのブラッシュが気持ち良く冴える。トライアングルは金属の繊細さが生きていて自然な減衰である。


GRACE、F−14BS-EX(US-14RUBY)
冒頭のトライアングルの金属同士の接触する瞬間から、響きが自然に減衰して行く様子までが再現される。ピアノの強弱の微妙なタッチも明瞭に聴き取れる。ベースは弦の振動から、胴が鳴っている処までが実感出来る程濁りが少ない。ブラウンの息遣いがここまでハッキリと聴き取れるのは始めての経験だ。全ての音が忠実に拾い上げられているのが理解出来る。


兎に角、この新しいカートリッジは音楽鑑賞用と言うよりは、検聴用と呼ぶに相応しく、「民生用としては不必要な広帯域、高解像度」と云う表現を使った専務の言葉の正しきを実感した次第である。
これはオーディオとしては超一級品である事は間違い無いが、音楽鑑賞用としては依然F−9の完成された美しい表現力が勝っているように感じた。今後の味付けとしてはリード線の交換、シェルの交換等で徐々に自分好みに染めて行くしかあるまい。
暫くはこの苛烈な程に正しき音を聴いて行こうと思っている。

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