■司馬遼太郎の名文

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アブダラと空飛ぶ絨毯(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 徳間書店 1997年)
前回ご紹介した『魔法使いハウルと火の悪魔』の続編で、同じく訳は西村醇子。
原題は『Castle in the Air』で1990年にイギリスで出版されている。

これは、『魔法使いハウルと火の悪魔』の続編といいながら、基本的には全く別の話である。
しかし、ハウル、ソフィー、カルシファーなど全作の主要な登場人物は、全て登場ている。
ただ、それがどこに登場しているのか分からないしくみになっていて、あれがハウルかな?あれがソフィーかな?あれは・・・誰だ?と考えながら読むのも一つの楽しみである。

前作が、インガリー国とその周辺、もっというなら動く城を中心とした閉じた世界での話であった。
それに対して今作は、絨毯商人アブダラが、ラシュプート国のバザールから始まって、王城や砂漠、隣国インガリー国から空中城まで冒険する、冒険活劇となっている。
ただ、前作に見られたような「少女の大人への成長」のような骨子が見られず、個人的にはややトーンダウンした感じ。
普通のファンタジー作品になってしまったというか。

ファンタジー作品が好きな方以外には、あまりお薦めできない。
魔法使いハウルと火の悪魔(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 徳間書店 1997年)

ロンドン生まれの女流ファンタジー作家であるダイアナ・ウィン・ジョーンズが1986年に『Howl's Moving Castle』として出版されたものを、西村醇子(じゅんこ)が翻訳したもの。
2004年に、宮崎駿監督によって『ハウルの動く城』として映画化されたことはあまりにも有名。

以前、映画『ハウルの動く城』を酷評したことがあったが、どうしてもあのストーリー展開に納得いかず、図書館で本編と続編が揃って置いてあったので、借りてきて読んでみた次第。

原作を読むと、宮崎映画の破綻していたところの真相が分かり、そういう別の楽しみ方もできた。
そして、読んで見るとなおさら、映画ではなぜこの重要な設定を説明しないのだろう、なぜこの設定を変えてしまったのだろうという、疑問が湧いてくる。
だから、もし映画だけ観られて悶々とされている方には、ぜひご一読をお薦めする。
残念ながら、私には本を買ってまで読んでみてくださいとお薦めはできないが、図書館で借りるならタダだし、いかかであろうか。
内容も子供向けのファンタジー作品なので、苦にならずすらすら読める。

さて、少し気になるのが、ソフィーの性格づけだ。
最初こそ、地味な長女という役周りだったが、お婆さんになって、ハウルと会ってからというもの、ものすごく図々しくて我侭な女性になっていく。
そして、最終的に癇癪を起してしまうヒステリックな女性として描かれている。
宮崎アニメの「いい子ちゃん」主人公とは、かなり違った味わいだ。
そのことにかなり違和感を感じていたが、物語を全て読み終わると、「ああそういうことなのか」と納得した。
この物語はやはり「老婆の恋物語」ではなく、一人の女性の成長譚なのである。
少女が女性へと成長するとき、老婆の魔法が解けるというしくみだ。

でも、わたしは本当の「老婆の恋物語」が読んでみたい。
・・・そんな話、売れないだろうなぁ。
ゼロの焦点(松本清張 新潮文庫 1971年)
私が読む、松本清張の長編第二弾。
あまりにも短期間に、松本清張ばかり読んでしまったので、少々食傷気味であったことは否めない。
(※投稿ペースは非常にスローですが、実際に読んだのは短期間です)
それでも、十分に楽しむことはできた。

推理小説としてみると、その論理が破綻しているところが多々あるように見受けられる。
しかし、この本の魅力は謎解きの論理性にあるのではない。

夫が突然失踪した。
妻はまだ、新婚ほやほやである。
小説が執筆された時代は、まだまだお見合い結婚が多かったであろう。
お見合いしてから比較的早く結婚する場合、相手のことを良く知らないことになる。
主人公の女も、夫に失踪されて気づくのだ。
「私はあの人のことを何も知らない」と。

夫の失踪が謎で、その夫自体も謎なのだ。
この謎を探るため、女は冬の北陸に旅立つ。
新婚早々に夫に蒸発されたという不幸と、冬の北陸の暗澹たる風景が、非常にマッチする。
そして、起こる連続殺人事件・・・。

うーん、2時間ドラマだ!
ツレがうつになりまして。(細川貂々 幻冬舎 2006年)

会社の同僚との他愛のない話の中で、感動した映画や小説やマンガの話になった。
そのときに、同僚の一人が買ったマンガが話題にのぼったのである。
これが本書。
このマンガは同僚の間に回され、今まで読んだ3人はある場面ですごく感動したというのである。
で、現実的なことで有名なS君は感動しないであろう、なんて話になったのだ。
そこで、S君も含め、できるだけいろいろな人にこのマンガを読んでもらい、感動したか、感動しなかったか調査することになった。
(なんのこっちゃ)
そういう経緯で私もこの本を借り、私と妻も読んだのである。

明るい性格の夫が、うつ病にかかってしまったら・・・
ある漫画家(細川貂々)の夫がうつ病にかかってしまった。
本書いわくスーパーサラリーマン(※)だった夫が、仕事の多忙さからうつ病になってしまったのだ。
(※「スーパーサラリーマン」という表現は、実際とはかけ離れると私は感じた)

うつ病は、明るい人でも、誰でもなってしまうものなんだよ
というメッセージが本書の最初のほうに含まれていると感じたが、
本書の件では、私はそうは感じなかった。

この夫は、うつ病になるべくしてなったとしか思えないのだ。
月曜日から金曜日まで曜日ごとに着るネクタイの柄を決めており、その約束が守られないと気がすまない。
弁当を毎朝自分で作っていくのだが、これまた曜日ごとに弁当に入れるチーズの種類(ゴーダ、モッツアレラなど)が決まっているのだ。
そのた、いろいろなエピソードから、この夫はかなり特異な人間であると言わざるを得ない。
まぁ、だからと言って「誰でもうつ病になる可能性はあるのですよ」という反証にはならないが。

まぁ、とにかく夫がうつ病にかかって、会社をやめちゃって、それでも病状はよくならない。
うつ病の夫と、二人三脚の生活が始まるのだ。

実際に夫は自殺しようとしたり、かなり深刻なことがあるのだが、それを全く感じさせなかったほど、コミカルなタッチでマンガは進んでいく。
私の妻などは、「結婚10年目の同窓会」というエピソードが出るまでは、マンガの中の作者に全く感情移入ができなかったと言う。
つまり、この作者はどれだけ真剣に夫のことを考えているんだろう、と感じたということだ。

以下、同僚たちが感動した場面をご紹介します。多少のネタバレが含まれておりますので、未読の方はご注意下さい

では、同僚たちが感動した場面でもある「結婚10年目の同窓会」について軽く触れておこう。
これは、マンガの本編ではない。
マンガの章の間に、うつ病にかかった夫が書く「ツレのつぶやき」と題したエッセイがある。
これはそのエッセイの一つである。

この夫婦は結婚に際してカトリック教会の結婚講座というものに半年通っていたそうだ。
そうして、同じように結婚を控えた8組のカップルがその講座に通っており、結婚後も1年に1回は同窓会をしていたという。
そして、夫がうつ病にかかってから開催された、10年目の同窓会での出来事。
みんなが順に近況を報告することになり、彼の妻の番となった。
===== 「結婚式のときに読み上げた『誓約』を、また読み上げて胸にこみ上げるものがありました。それは、『順境のときも逆境のときも、病気のときも健康のときも』というところです。去年は彼は病気で・・・・・・」
そこまで言って、彼女は嗚咽で先がつづけられなくなった。 =====
この場面でもらい泣きをした同僚もいたらしい。
・・・しかし、わたしはいい場面であるなとは思ったが、泣きはしなかった。
やばい、S君が泣いたりしたら、私の立場はどうなるのだ。

しかし、実は私は別の場面で深く感動してしまったのだ。
それは、あとがきである。
この本には、夫のあとがきと、妻のあとがきがある。
その夫のあとがきの一番最後に感謝の言葉があった。
その言葉はありふれているのでここでは紹介しないが、その言葉を読んで胸が熱くなったのである。

この奥さんは偉大だなぁと。
うつ病患者に対して、周りの人も深刻に振舞っては、それこそ状態は悪化してしまうのだ。
自分の夫がうつ病になって、悩まない妻はいない、苦しまない妻はいない。
それでも、それを飲み込んで、このマンガのように振舞える妻に、偉大さを感じた。
そして、二人の間の愛情を感じた。

読むきっかけは甚だ不純ではあったが、久々にいい話を聞かせてもらった感じだ。
1000円札は拾うな(安田佳生 サンマーク出版 2006年)

これは新聞広告で見た刺激的(?)な題名につられて買った本。
買うまでは知らなかったのだが、作者の安田佳生氏は株式会社ワイキューブの社長で、結構有名な人。
そういや、会社の地下にプールバーがあるとかで、紹介されていたのを見たことがあるなぁ。

さて、この本はワイキューブの公式HPによると、
=
‘変化とスピードの時代に生きる’すべての方に必要な「常識の“半歩先”の考え方」を説きます。
とある。
確かに、半歩先の常識なのかもしれないが、現在の常識ではないことも多い。
しかも、「全ての方に」と書いてはあるが、どうも企業家(起業家)向けに書かれているとしか思えない。
つまり、一言で言うと、
「この本は私を変えてくれなかった」
のだ。
昨日ご紹介した仕事ができる人の 段取りの技術という本とは対照的である。

あの本は、地味で当たり前のことしか書いていないが、私を変えてくれた。
この本は、変わっていて景気のいいことが書いてあるが、私を変えてくれなかった。

もちろん、変わる、変わらないは、その人の資質によるものなので、私の性格・立場には合わなかっただけとも言えるがが。

ただ、参考になる考え方は多く掲載されていた。
常識とは、大多数の意見であって、正解ではない’
というのはまさにその通りであって、特に起業をしようと思っている人には、必須の考え方だと思う。

また、この本の中で「捨てる」という行為の大切さが繰り返し述べられているが、それは一般的な人には非常に難しいけれど大切なことで、少なくとも選択肢の一つとして持っておく行為である。

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