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前回、書いたように<シティロード>で初めて書いた記事は「カー・ウォッシュ」のレビューだったが、次に書いたのは、ブライアン・デ・パルマの「愛のメモリー」だった。待望のデ・パルマ、待ってました!
この頃、私はデ・パルマ監督の大ファンだった。70年代の映画ファンにとって、彼の登場は本当にドキドキさせられる映画体験だった。
初めて見たのは「ファントム・オブ・パラダイス」で、当時からロック・ファンだった私はロック界の内幕を描いたこの映画を見て、心から感動。主演はポール・ウィリアムズだったが、当時、個性派シンガー・ソングライターとして静かに評価されていた彼の曲も好きで、この映画のサントラも一時は愛聴していた。
その前の作品、「悪魔のシスター」は見逃していたが、池袋の文芸坐で見ることができた。当時の文芸坐の周辺は風俗の店が多く、うら若き乙女(?)が行くには、ちょっとヤバイ雰囲気もあったが、デ・パルマの正体を確かめるため、私は勇気を出して「シスター」を見に行った。
いやー、これはすごかった! B級なんだけど(AIP製作だったはず)、だからこそ、のアブナイ雰囲気がある。双生児の姉妹の明と暗を描いた映画で、ひとりが医師と恋仲になり、切り離し手術を行う場面の気色悪さといったら……。
ヒッチコック映画の音楽を担当してたバーナード・ハーマンの曲が、また、おぞましくて、悪夢にうなされそうな映画だった(ラストのけったいな終わり方にも、ボーゼン)。この監督、やっぱりすごい、と思ったものだ。
「愛のメモリー」はそんなデ・パルマがヒッチコックの「めまい」を意識したという映画で、ラストのオチをめぐって、脚本家のポール・シュレイダーとケンカになり、以後、ふたりは口をきかなかったという。
この映画は本当に美しい映画だった。音楽は再びバーナード・ハーマンで、彼が死ぬ直前の作品となっている(遺作は「タクシー・ドライバー」)。甘く、ロマンティックで、残酷な夢。「愛のメモリー」は舞台となったニューオリンズのしめりけのある風景も印象的で、個人的には今もフェイバリットなデ・パルマ映画の1本だ。
で、この映画を「シティロード」で紹介する、というチャンスをいただき、念願のデ・パルマ・ファンとしてデビューを果たすことができた。
デ・パルマの才能に注目していた「シティロード」の編集部は、その後、「フューリー」が公開された時も、デ・パルマ特集を組んだ。ここでは今野雄二さんや故人となられた佐藤重臣さんらが力のこもった文章を書かれていた。私はそんな先輩に比べると、まだまだ、入りたてのコマ使い。
海外の雑誌の記事をまめに集めていたので、それを使って、デ・パルマの足跡を追った。当時、「シネファンタスティック」というアメリカのSF・ホラー雑誌があったが、これがものすごく充実したインタビューをいつも載せていた(私自身は別のこのジャンルのファンではなかったんですが)。
当時は海外の資料が、まだ、日本にはあんまりなくて、いくつかの海外の映画雑誌のインタビューくらいしか、監督のことを知る手がかりがなかった。
こうしたデ・パルマ映画を書くことが、私の修行時代の始まりだった。そして、そんな修行の場を与えてくれたのが、<シティロード>という雑誌なのだ。
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