ウディ・アレン通信(&ロスト・シネマ通信)

16年、初夏刊行予定 ウディ・アレン最新評伝本・訳書「ウディ」

シティロードの連載

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 前回、書いたように<シティロード>で初めて書いた記事は「カー・ウォッシュ」のレビューだったが、次に書いたのは、ブライアン・デ・パルマの「愛のメモリー」だった。待望のデ・パルマ、待ってました!

 この頃、私はデ・パルマ監督の大ファンだった。70年代の映画ファンにとって、彼の登場は本当にドキドキさせられる映画体験だった。

 初めて見たのは「ファントム・オブ・パラダイス」で、当時からロック・ファンだった私はロック界の内幕を描いたこの映画を見て、心から感動。主演はポール・ウィリアムズだったが、当時、個性派シンガー・ソングライターとして静かに評価されていた彼の曲も好きで、この映画のサントラも一時は愛聴していた。

 その前の作品、「悪魔のシスター」は見逃していたが、池袋の文芸坐で見ることができた。当時の文芸坐の周辺は風俗の店が多く、うら若き乙女(?)が行くには、ちょっとヤバイ雰囲気もあったが、デ・パルマの正体を確かめるため、私は勇気を出して「シスター」を見に行った。

 いやー、これはすごかった! B級なんだけど(AIP製作だったはず)、だからこそ、のアブナイ雰囲気がある。双生児の姉妹の明と暗を描いた映画で、ひとりが医師と恋仲になり、切り離し手術を行う場面の気色悪さといったら……。

 ヒッチコック映画の音楽を担当してたバーナード・ハーマンの曲が、また、おぞましくて、悪夢にうなされそうな映画だった(ラストのけったいな終わり方にも、ボーゼン)。この監督、やっぱりすごい、と思ったものだ。

 「愛のメモリー」はそんなデ・パルマがヒッチコックの「めまい」を意識したという映画で、ラストのオチをめぐって、脚本家のポール・シュレイダーとケンカになり、以後、ふたりは口をきかなかったという。

 この映画は本当に美しい映画だった。音楽は再びバーナード・ハーマンで、彼が死ぬ直前の作品となっている(遺作は「タクシー・ドライバー」)。甘く、ロマンティックで、残酷な夢。「愛のメモリー」は舞台となったニューオリンズのしめりけのある風景も印象的で、個人的には今もフェイバリットなデ・パルマ映画の1本だ。

 で、この映画を「シティロード」で紹介する、というチャンスをいただき、念願のデ・パルマ・ファンとしてデビューを果たすことができた。

 デ・パルマの才能に注目していた「シティロード」の編集部は、その後、「フューリー」が公開された時も、デ・パルマ特集を組んだ。ここでは今野雄二さんや故人となられた佐藤重臣さんらが力のこもった文章を書かれていた。私はそんな先輩に比べると、まだまだ、入りたてのコマ使い。

 海外の雑誌の記事をまめに集めていたので、それを使って、デ・パルマの足跡を追った。当時、「シネファンタスティック」というアメリカのSF・ホラー雑誌があったが、これがものすごく充実したインタビューをいつも載せていた(私自身は別のこのジャンルのファンではなかったんですが)。

 当時は海外の資料が、まだ、日本にはあんまりなくて、いくつかの海外の映画雑誌のインタビューくらいしか、監督のことを知る手がかりがなかった。

 こうしたデ・パルマ映画を書くことが、私の修行時代の始まりだった。そして、そんな修行の場を与えてくれたのが、<シティロード>という雑誌なのだ。



 

 

 なんだか、妙にこのブログで盛り上がっている幻のタウン誌<シティロード>の話題。70年代に創刊され、90年代初頭に廃刊になった雑誌です。もー、誰も覚えていないはず、と思っていたら、かつての読者の方からの投稿があり、驚きました。つぶれた雑誌でも、記憶の中で生き続けているものですね。

 私が新人時代にお世話になった雑誌がいくつかありますが、<シティロード>も、そんな雑誌のひとつです。初めて記事を書いたのは、「カー・ウォッシュ」という映画でした。もう、すっかり忘れられている映画ですよね。

 実は初めて原稿依頼が来たのは、この映画ではなかったんですよ。その前にホラー映画「サスペリア」がやってきました。でもね、断りました。当時、ブライアン・デ・パルマの大ファンでしたが、ダリオ・アルジェントとなると、なんか、こわそー、で、見る勇気がなかったんですよ。イタリアのホラーは、けっこう怖くて、ダメだったんですね(こわがり屋でした)。

 そのかわり、「カー・ウォッシュ」でデビューになりました。でも、よーく、考えると、これでデビューしたのも、実はわかる気がするんですよ。この映画、アメリカのある洗車場を舞台にした群像ドラマで、ソウル風の音楽がかっこよかったんです。テーマ曲は全米チャートで、大ヒットを記録。全編ノリノリでした。

 で、この映画、今にして思えば、スパイク・リー監督の「ドゥ・ザ・ライト・シング」に似ているんですよね。スパイクの映画みたいに、社会的なメッセージは入っていないけれど、「ドゥ〜」のほうはピザ屋、「カー〜」は洗車場を舞台に、人種も入り乱れた群像劇というところが共通しています。「カー〜」の監督はマイケル・シュルツという人で、当時、リチャード・プライヤー主演の映画をよく撮っていたんですよ。「カー〜」にもプライヤーが出てくるんです(ここはすごく盛り上がる場面でした)。

 70年代にはブラックムービーの盛り上がりがアメリカではあったけれど、「カー〜」も、そんな流れを組みつつ、でも、けっして過激ではなく、どこかハートフルな感覚がある娯楽映画でした。

 どんな原稿を書いたか忘れてしまいましたが、音楽好きの私だったので、この映画で<シティロード>にデビューした、というのは、よく考えると、ナットクなんですよね。

 そして、今ではスパイク・リー・ファンの私なので、その原点ともいえる「カー・ウォッシュ」を担当したというのは、意外にも自然の流れかもしれません。

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