『いつか春が』執筆日記

波乱に満ちた人生。夢に向かって挑戦する男のドキュメントストーリー。

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今日、ご紹介するのは独房での生活です。狭い三畳の独房の中で、
誰とも話さずにずっと一人でいると精神を病んでしまう場合もあ
ると聞きました。保釈された父に「独房に勾留されていた時、何
が一番嬉しかったね?」と尋ねたら「面会(接見)がとにかく一
番嬉しかった。逆に週末など面会できない日が一番辛かった」と
答えました。

一日15分だけの幸福…。あとは不安と沈黙の時間だったそうです。
15分という時間が父の孤独を救い、生きる希望を与えつづけてい
たのは間違いないようです…。

私が書いたこの本の原稿の量は八百枚ほどになりました。つまり
普通の本の二冊分ほどあり、その分量を一冊の本として完成させた
のです。ここで少々公開しても実際の本の中には、まだまだ数多く
の出来事が描かれています。こうして公開することにより、司法の
現実に少しでも関心を持って頂ければ嬉しいです。一人でも多くの
人に司法の正義とは何か?家族の絆とは何か?を伝えたいと願って
ます。私自身が自分の目で見た司法の現実を伝えることが、今の私
に出来ることだと思います。冤罪を少しでもなくすためには一人で
も多くの人に真実を伝えることです。

もっと読んでみたいと思われた方は最寄の書店でご購入できます。
書店に本がなければ窓口でご注文できます。またはネット上で作品
名か著者名で検索すればネット通販や図書館情報が出ます。
全国の公共の図書館にも既に百数十館に蔵書されていますので、図
書館から借りて読むこともできます。図書館になければカウンターで
「この本を読みたい」とリクエストして下されば図書館で購入して
貸し出してくれるそうです。

物語はまだまだ前半の苦しい状況を公開していますが、中盤あたり
から私達の反撃が始まります。そう、「まるで時代劇のような痛快さ」
と評して下さった読者もおられましたが、本当に壮絶な戦いでした。

※二枚目の写真の廊下に狭いカーペットが敷いてありますが、見回りの
際に足音が聞こえないように毛足が長いカーペットだそうです。父が
言っていました。なるほど…。


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『いつか春が 〜父が逮捕された「佐賀市農協背任事件」〜』
        (不知火書房より発売中)
      第四章 涙の再会 始動(著書本文より)

「そろそろ時間です」
刑務官が腕時計を見ながら立ち上がった。父はもっと話したいよ
うで、立ち上がろうと腰を浮かせながらも更に話しを続けた。
「お父さんは命を賭けてでも裁判で無実ば証明するぞ。お前達に
も迷惑をかけるが頑張ってくれよ」
「うん、分かっとる。お父さんが無実だと信じとるよ。分かっと
るから心配せんでよか。俺達も頑張るからお父さんも体には気を
つけて頑張ってよ。じゃあ、また来るから」

この場所を去るのが辛かった。一秒でも長く父のそばにいてやり
たかった。接見室を出てドアを閉めようとした時、私はもう一度
父を見た。父は立ったまま寂しそうな目で私たちに手を振ってい
た。
         〜 中 略 〜

勘三の拘置所での生活は、午前六時五十分の起床から始まった。
朝の点呼が終わると七時二十分から朝食。ご飯は麦が四割、米が
六割くらいの麦飯で、俗に言う「くさい飯」だった。勘三は麦飯
特有の臭いとゴワゴワとした食感が食べづらかったが、慣れてく
ると何とか食べられるようになった。
昼食は十二時、夕食は夕方の四時半からだった。食事を作るのは
受刑者の労役だったので何事も大雑把で、魚などは切らずに丸ご
と一匹がそのまま皿に乗せて出ることもあった。

わずか三畳ほどの狭い独房内では正座かあぐらの姿勢で無言で過
ごさなければならなかった。疲れて横になったりすると、十五分
おきに見回りに来る刑務官から「おい、起きろ」と注意された。
午後六時から布団を敷くことが許可され、この時初めてやっと横
になることが許された。

消灯は夜の九時で、小さな電球だけが灯され薄明かりの中で夜を
過ごした。
独房から出られるのは、取調べや接見の時を除けば週二回の約十
五分の入浴と週に一回三十分程度の運動の時間だけだった。運動
場は高さ三メートルほどのコンクリートの壁で囲まれていた。屋
根のない扇の形をした畳十畳ほどの広さの運動場は扇の要の位置
に高い監視台があった。運動の時間はたった三十分だったが、週
に一回太陽の光を直接浴びながら外の空気を思いっきり吸って、
体をのびのびと動かすことのできる貴重な時間だった。

独房の奥の壁には鉄格子のはまった窓があり、外枠に傾斜版が付
いていて外からは部屋の中が見えない作りになっていたが、わず
かな隙間から拘置所の庭が見えた。窓からは空を自由に飛び回る
雀も見えて勘三はうらやましかった。時々群れからはぐれた一羽
の雀が窓枠に止まると、見回りの刑務官に気づかれないようにそ
っと立ち上がり、小さな声で雀に話しかけて孤独を紛らわしてい
た。

拘置所内では刑務官に対しては「先生」と呼ぶ慣習になっていて、
厳しい規則のもとで何をするにしても「先生」の許可を得なけれ
ばならなかった。裁判に備えてノートにメモをとる場合でもあら
かじめノートのページには番号が打たれて、後で破いたり抜き取
ったりしていないかがチェックされた。ノートに書き込んだ内容
は入念にチェックされ、施設内の見取り図や絵などを書きこむこ
とは禁止された。

接見が可能となり、お互いの無事な姿を確認できて父も私たちも
気持ちが落ち着いたが、接見時間は十五分、一回につき三名まで
と制限されていた。わずか十五分という限られた時間の中では父
と十分に話しをする事はできなかった。私たちは父の勾留生活を
心配して、接見のたびに体の具合や食事などの健康状態を気遣っ
た。

狭い接見室では父の横で刑務官が話を聞いているので、事件に関
する詳しい話はできなかった。
父は接見のたびにに「自分は無実だ。絶対に不正融資などはやっ
とらん。部下を信じて判を押しただけだ」と訴え続けた。
「検事の取調べがとにかく厳しくて、起訴されるまでは毎日が本
当に地獄やった。信じられんような取調べが行われて何度も気を
失いそうになった。今のこの時代に、あんな取調べが行われるな
んて絶対に許されんばい。俺は死ぬまで忘れんぞ……」

父は面会のたびに目に涙をためながら、本当に悔しそうな顔をし
て興奮しながら怒りをあらわにした。「あんな取調べが……」と、
父は毎回同じ言葉を口にした。その言葉の意味が気になって、
「お父さん、いったい何があったとね?」と私が尋ねても、父は
そばの刑務官のほうを目で合図しながら「ここでは話せない」と
でも言いたそうに首を横に振るだけだった。
父の目は脅えて何かを訴えていた。

            〜 中 略 〜

一夜にしてすべてを失った父のショックは大きく心に深い傷を残
していた。絶望と孤独のあまり精神を病んでいるのではと私たち
は心配し、この独房から一刻も早く救いだしてやりたかった。
いつ出られるのか分からない不安と孤独の中で、父は家族にも話
せないような恐怖に必死に耐えていた。

短い接見ではゆっくりと話も出来ないので、私は父に手紙を書く
ことにした。父と息子という男同士の関係は何故か照れくさいも
ので、私はそれまで一度も父に手紙など書いたことがなかった。
父に聞きたいことや話したいことは山ほどあって何から書けばよ
いか迷ったが、家族の様子や一日も早く保釈してもらえるように
弁護士の先生達が頑張ってくれていること、父の無実を信じてい
る気持ちなどを素直に書き綴って、娘達の書いた手紙や絵も同封
した。写真を送ろうかと思ったが、余計に辛くなるだろうと思っ
てやめにした。

不思議なもので、今までは父と真面目に話したことなどなかった
が、手紙の中では父と息子というよりも男同士という素直な気持
ちで色んなことを語り合った。私が今日までどんな想いで生きて
きたか、これからどう生きていこうと思っているか……初めて父
に打ち明けた。父も私に語った……友達の大切さ、人としての勇
気、人を信じることの喜びと難しさを。

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※この本のあらすじは「プロフィール」に記しております。
【この事件の特集番組を動画で見る場合はこちら↓】
■テレビ朝日「ザ・スクープ」 http://www.tv-asahi.co.jp/scoop/
 動画配信バックナンバー⇒ 2006年3月5日放送「検証!佐賀市農協事件」(前編・後編)40分

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Fight さん 『いつか春が』が手元にあります。

大阪では失礼ですが大きな書店にしかないと思い、外出の帰りに紀伊国屋に寄って買いました。

これからじっくり読ませていただきます。多くの人に読んでほしいですね。

多くの本の中に埋もれながらも、真実の重みが社会に光となって、自由への道標となるように期待しています。

2008/7/18(金) 午後 8:44 [ nanachan.umekichi ]

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nanachanumekichiさん、本をご購入していただき
ありがとうございます。おっしゃられるように出版
業界は流通が複雑で書店のルートが限られているよ
うです。だから全国出版といえども地域によっては
大きな書店にしかない場合もあります。
この本は裁判を軸にしながら絶望的な状況に追い込
まれた普通の人間が、どうやって勇気をふりしぼっ
て勝利をつかむかを描いています。これは裁判に限らず
人生の中で直面する数々の試練と同じです。
読んだあとに何かを感じてもられれば幸いです。
これからもよろしくお願い致します。

2008/7/18(金) 午後 9:08 Fight

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御本はネットで探します。福迫君が出てきて、出版でもできるときが来ればいいと思います。
私事ですが、拙著を出版しました。姉と私のすれ違いの人生を書きました。

2008/7/19(土) 午前 6:17 [ hannreinakinisimo ]

hanreinakinisimo さん、ありがとうございます。事件や事故によってご家族の人生も変わりますからね。あなたの御著書についての情報を教えていただけませんか。彼には本などの差し入れは出来るのでしょうか。異国の地で厳しい状況が続いておられるようですが頑張って下さいね。

2008/7/19(土) 午前 6:51 Fight

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沈黙

それは孤独との戦いです。
人は生身の人との接触によって、愛を感じます。

沈黙
それは自分との向き合いですね。ポチです。

2008/7/19(土) 午後 0:11 瑠

独房の話は知り合いからは聴いていたものの・・・無実の人間が入るには凶器の沙汰ですね。俺だったら発狂一歩手前までの状態になってしまい、完全に精神がやられてしまうと思いますよ。父上は、心の強い人です。
皮肉にも父上との真剣な会話が拘置所・・・。
うーん・・なかなか言葉がみつかりません。

2008/9/8(月) 午後 8:38 相馬 龍

1日中ぼーっと座ってるのって
それだけで精神的に病んでしまいそうですよね。
テレビやパソコン、本なんかがあれば何とか気も紛れそうですが....
15分の接見がどんなに待ち遠しいっていうのも
わかりますよね。

2008/10/24(金) 午前 11:56 らんらん


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