『いつか春が』執筆日記

波乱に満ちた人生。夢に向かって挑戦する男のドキュメントストーリー。

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父が四ヶ月ぶりに保釈されて自宅に戻ったものの、逮捕され
る当日までは色んな組織・団体の重職を兼務していたので、
父はみんなが自分のことを信じて待っててくれると思ってい
たようです。もちろん励ます会や支援組織もありません。

起訴決定の検察側の記者会見で「全面自供した」と発表した
ので世間は誰もが「副島さんを信じていたのに、まさかそ
んな人だったとは…」
検察の記者会見を見て、さらに新聞やニュースもそのように
大きく報道していたので誰もがそう思ったと思います。
裁判員制度でも報道による情報も大きく影響するのではと
私は懸念しています。事実と異なる情報が流されたら…。

これが冤罪事件の恐ろしさであり苦しみなのです。

人質となっていた父を無事に救出できた。そんな気持ちで父
を迎えましたが、取調べ時の恐怖でPTSDとなり、フラッ
シュバック現象が起きて大変でした。自殺しようと家を飛び
出したり、行方不明となったり…。酒を飲む相手も誰もいな
くなりとにかく父は荒れました。見ている私達も辛くてです
ね。無実を証明するしかないけれど、私も戦いに備えてまず
自分の生活の足場を固めることで精一杯でした。

厳しい現実に流されていく中で「必ず父の無実を証明してみ
せるという執念にも似た怒りだけが、崩れそうになる私の心
を支えていました。ふつふつと燃え上がる感情の炎…。


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『いつか春が 〜父が逮捕された「佐賀市農協背任事件」〜』
     (不知火書房より全国の主要書店にて発売中)

     第七章 真夜中のアルバイト 犯人視の苦しみ(著書より)

父が保釈されたことで私も気持がずいぶん落ち着いた。今ま
でのように毎日のように佐賀まで行く必要もなくなり、やっ
と自分の時間が出来たと喜んだものの、それでは何から始め
ればいいのかも自分では分らなかった。

仕事がほとんどなくなった私は、生活のために梅雨が明けた
七月からアルバイトを探し始めた。
昼は裁判のための時間に当て、夜は生活のために働く。
昼間の時間は裁判の傍聴や弁護士との打ち合わせ、事件の調
査のための時間に空けておきたかったので夜中のアルバイト
を探したが、なかなか思うような仕事は見つからなかった。
結局、そんな条件を満たす仕事は肉体労働しかなく、人目に
つかず時給も良いという理由で夜間の工事現場の警備のバイ
トを選んだ。

早速、博多駅近くの警備会社に面接に行った。社長は私より
少し年上の気さくな人だった。私の履歴書をしばらく見てい
た社長は、不思議そうな顔をして私を見つめた。
「へぇー……副島さんって、今までのお仕事を見るとウチと
は全く畑違いみたいだけど……大丈夫?ウチの仕事って結構
きついよ」
「はい、大丈夫です。一生懸命やりますのでよろしくお願い
します」
「う〜ん、そう言われると弱いなあ。でも何でウチみたいな
仕事を?」
「……」
「まっいいか。誰だっていろいろ事情があるしね。じゃあ、
採用という事でよろしくね」
「ありがとうございます。あのう……一つお願いがあるので
すが……」
「何?」
「じつは、仕事は夜中の道路工事とかの現場にしてほしいの
です。それから、出来ればスーパーの駐車場警備とか人が多
く集まる所はなるべく外してもらいたいのですが……」
「ふーん……道路工事の現場とかはトイレもないし、雨や雪
が降っても朝まで立ちっぱなしだよ。きついけど、ホントに
そっちでいいの?」
「はい、結構です。よろしくお願いします」
「普通は屋内の警備とかを希望するけれどね……変わってい
るね」
人の多い所だと知り合いに出くわすかもしれず、それもいや
だった。

こうして私の夜のバイト生活が始まった。最初の仕事は夜の
八時から朝の六時まで道路工事の現場で、車や人を安全に誘
導する仕事だった。吹きさらしの道端に立って、赤く点滅す
る誘導棒を朝まで振り続けた。夜でも真夏の工事現場は暑く、
吹き出した汗が青い制服に白い塩を吹いた。雨降りには雨合
羽の隙間から入ってくる水が背中を伝った。

私たち家族の生活は、私が夜働きに出るようになって一変し
た。事件前までは私が夕食の席に一緒に座る事などなかった
が、夕方の五時過ぎには家族と食事をするようになっていた。
早めの夕食が終わると、私はそそくさと身支度をして仕事に
出かけた。

「えーっ、お父さんまた出かけるの。いつも夜はいないし、
つまんないよ。たまには一緒に遊んでよ」
幼稚園に通う次女は、一緒にテレビを見たり、ゲームをした
りして遊んで欲しいと言って困らせた。
「ごめんね、麻衣……お父さんは今からお仕事なんだよ」
「じゃあ、今度のお休みはどこかに連れて行ってよ」
「うーん……そのうち……ね」
「お父さんはいつもそう言うけど、嘘ばっかり」
家族と一緒にテレビを見たり、休みの日は子供を連れて遊び
に出かけたり……今の私にはそんな余裕もなく、娘と約束を
しても守れないことは分かっていた。そんな私に、妻は玄関
でそっと紙袋を渡してくれた。紙袋にはタオルと水筒と夜食
のおにぎりが入っていた。
         
         〜 中 略 〜

保釈されて自宅に戻ってきたものの、勘三の生活は以前とは
一変した。誰も勘三に声をかけてくれる人がいなくなったの
だ。
勘三は一日中書斎にこもったまま、ぼんやりと何か考えごと
をしていることが多くなった。
家に戻ってきてからも夢にうなされる日々が続いていた。
夢の中にI検事が現われ、「この野郎! ぶち殺すぞ」と大
声で怒鳴りながら迫ってきた。検事に殺されるという恐怖で
心臓が苦しくなり目が覚めた。拘置所の時と同じように毎晩、
睡眠誘導剤を服用して眠りにつく日々だった。

事件前まで、勘三は地元の玉屋デパートで買物をするのが楽
しみだった。保釈後、久々に一人でデパートに行った。勘三
は偶然、売り場の向こうに顔見知りの夫婦を見つけた。その
息子の仲人を務め、就職の世話もするなど公私にわたって親
しい付き合いをしていた夫婦だった。

人のぬくもりに飢えていた勘三は嬉しくなり、二人に声をか
けようとした時だった。向こうも勘三の姿に気がついて、次
の瞬間、奥さんが夫の腕をグイッと引っ張って商品の陰に隠
れた。二人が慌ててその場を立ち去っていく姿を勘三は呆然
として見ていた。
それ以来、勘三は父はデパートには行かなくなり、極力出か
けなくなった。

自転車で家を出たまま何時間も帰ってこなかった時は、静子
が心配して探し回ったあとで無事に帰ってはきたが、四時間
あまり、どこをどう走っていたのか自分も覚えていなかった。
一夜にして社会的な信用を失い、無実を誰にも信じてもらえ
ない勘三の悔しさは日を追うごとに激しくなり、心が荒れて
いくばかりだった。孤独の中で勘三の心は絶望のふちを彷徨
っていた。

勘三は一人で酒をあおるようになった。台所で焼酎をあおる
勘三の姿は静子にはあまりにも悲しかった。
「やっていないなら、ちょっとやそっと怒鳴られたくらいで
調書にサインをしなければよかったじゃないか。やましいこ
とがあったからサインをしたんだろう」「火のないところに
煙は立たんばい」などと周囲が噂をしていることを耳にした
勘三は「あの地獄のような取り調べを受けたら誰だって頭の
中が真っ白になって、どんなに頑張っても耐え切れずに署名
してしまう……何も知らん者は簡単にそんなことを言うが、
俺は本当に殺されると思ったぞ。あの状況で我慢できる者が
おるか、実際に経験してみたら分かる。くそおっ!」と、酒
をあおりながら怒りをぶちまけた。

しばらくすると今度はぼんやりとして「誰も俺の言うことを
信じてくれん。俺は本当に不正融資などやっとらん、無実ば
い……それなのに……悔しか……死んだほうがましだ」と、
悔し涙をこぼしながら泣き出すのだった。
静子も声をかけられないほど勘三の心の傷は深かった。


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※この本のあらすじは「プロフィール」に記しております。
【この事件の特集番組を動画で見る場合はこちら↓】
■テレビ朝日「ザ・スクープ」 http://www.tv-asahi.co.jp/scoop/
 動画配信バックナンバー⇒ 2006年3月5日放送「検証!佐賀市農協事件」(前編・後編)40分

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辛い日々がもたらすもの、それはしあわせです。
歴史上、やまない雨が無いと体験するのは辛さを乗り越えた人だけです。私は、ある日突然、父と会えなくなりました。その日から、私は父と雲の上で会えるようになるその日まで、「自分らしく生きる」ことを胸に生きています。必ず、父と共にしあわせになるという大志を抱いて毎日を過ごしています。お父様との時間を大切になさってください。

2008/7/21(月) 午後 9:45 のこ

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のりさん、ありがとうございます。
私の場合は願いが叶って父の無実を証明することが出来ました。
しかし、無実でありながら罪をきせられ同じように苦しい戦いを
頑張っておられる方々がたくさんおられます。
何十年という歳月をかけて闘っておられる方もおられます。

父はさすがに弱りましたが生きています。
父とも会えるし、私は幸せだと思わないとですね。
心に負った傷は少しずつ癒えていくと思います。
まだまだ人生の再建中ですが
何とかなると信じて頑張りますよ。
ありがとうございます。

2008/7/21(月) 午後 10:07 Fight

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それはいつまでも痛いものですね。
癒える
それは、本当に理解してくれる人の存在です。
ポチ

2008/7/22(火) 午前 0:12 瑠

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詠ませていただいているだけで辛いですが当人はもっと辛いと思います、今の日本でこんなことが起こっているのはにわかに信じられません、私は経験したことがありませんから心根の奥は計り知れませんがあまりにも残酷です、心中をお察しいたします。

2008/7/22(火) 午前 7:49 [ ゆ〜さん ]

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ina**jin3さん、お気遣いありがとうございます。最初は「まさかこんなことが…」と誰も信じてもらえませんでした。だから真実をしってもらうために本を書き、その一部を公開しているのです。隠された真実を証明することがいかに大変か…それをどうやって証明したか。報道されない裁判の裏側で家族に何が起きていたのか。あのままもし父が有罪にされていたら私もこうしてお伝えすることは出来なかったと思います。たぶん今も闘っていたはずです。こうして一人でも多くの人が司法の現実を知っていただくことが私の願いです。これからもよろしくお願いいたします。

2008/7/22(火) 午前 11:12 Fight

せっかく保釈されてお家に帰って来ても孤独な日々...
お父様お辛かったでしょうね。
ご家族も生活することと無実を証明すること、お父様を励ますことで
本当にきつい毎日やったのでは?とお察しします。

2009/3/5(木) 午後 0:04 らんらん


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