『いつか春が』執筆日記

波乱に満ちた人生。夢に向かって挑戦する男のドキュメントストーリー。

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【解説】
その日、傍聴席からすすり泣く声が聞こえてきました。
必死……息子である私の目から見ても証言台に立つ父は必死でし
た。見る者を圧倒し心をふるわすような魂の叫びでした。
極限状態の中で叫ぶ父の魂の叫びでした。同時に私たち家族の
叫びでした。

「お父さん、よくぞ勇気をもって真実を証言してくれた」
父の再現場面は、まるで映画の長回しシーンを見るように誰もが
息をのんで見守っていました。最初は父の大声に驚きつつも「ま
さか検事がそんなことをするわけがない…」と半信半疑の方もい
たと思います。でも、父が裁判長に向かって必死に訴える光景は
疑いから確信に変わったような気がします。

昨日、不安で弱音を吐いていた父の姿は、法廷のどこにもありま
せんでした。本当にすごい迫力でした。私の目で見たこと、私の
耳で聞いたこと、私の肌で感じた法廷の空気を本の中で描きまし
たが、本ではこれらの場面は長すぎたので一部カットしています。

原稿執筆の際、ここの場面は私も涙がこぼれてしまい、何度も中
断した想い出深い場面です。


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『いつか春が 〜父が逮捕された「佐賀市農協背任事件」〜』
     (不知火書房より全国の主要書店にて発売中)

  第八章 証言台の父 最後の調書(未公開原稿より)

なぜ父が立ち上がったのか分らず、誰もが「何?」と首を傾げた。

「検事が、『部下が(事前に私に不正融資のカラクリを説明したと
)そう言っておるぞ!』と言うので、私は『(部下は私に)言って
いません』と。そしたら検事は・・・」
そこまで話した時だった。

「『(大声で)言ってるぞー!嘘つく気かー!こんちくしょうー、
ぶち殺すぞー!』」
突然、父の驚くような大声が法廷に響いた。
次の瞬間、右手を頭上に振り上げた。
右手は手刀に変わり、証言台に向って一気に振りおろされた。
『ドンッ!』
驚愕・・・
誰もが驚き言葉を失った・・・。

法廷の驚きを気にせず父は落ち着いて話を続けた。
「こういうような口調で(検事は)私を攻めてきました」
静まり返ってしまった法廷に父の冷静な声が響いた。
「私の脳裏には、あの『ぶち殺す』という言葉がどこの方言か知
りませんが、私の脳裏には・・・」
次の瞬間、再び
『(大声で)ぶち殺すぞー!』
『ドンッ!』
・・・・・・
裁判長は、父の声や机を叩く音が三階のフロア中に響き渡ってい
ることに気づき、慌ててマイクのスイッチを切るように指示した。

父は自分の右手をじっと見つめながら、
「手刀で・・・これで何回も何回も迫ってこられました」
法廷内が愕然とする中、日野弁護士はハッと我に返ったのか再び
質問を再開した。
「それから・・・部下から不正な担保評の方法の説明を受けたん
じゃないかということで、受けた、受けていないで争いがあった
んじゃないですか?」
「はい、それにつきましても、『受けていない』と強く言いまし
ても、とにかく今申し上げたように・・・」
『(大声で)こんちくしょうー!ぶち殺すぞー!』
『ドンッ!』
・・・・
「こういう言葉で非情に強制、脅迫、拷問的な態度であったと、
私は受け止めております」
・・・・
「それから、先ほど出ていた理事会をだました、騙していないとか
で、この点でも論争になったんですね?」
「はい」
「これらは、あなたの主張に対して、検事が自分なりのストーリー
というものを考えてきて、そういう内容を調書の中に入れ込んでい
ったということですか?」
「はい、そういうことです」
父の記憶は完全に戻っていた。先生の質問に対しても言葉に詰まる
事はなかった。父の堂々と話す姿を見て私の不安は消えた。

「取調べは連日行われたのですか?」
「二〜三日を外せば大体毎日やっておられたと思います」
「二〜三日を除きほぼ毎日ですか?」
「はい」
「取調室には誰がいたのですか?」
「I検事とK事務官です」「いわゆる三人だけの密室と理解してい
いんですかね?」
「はい」
既に記者達は一生懸命にメモを取り続けていた。検事はずっと目を
伏せたまま下を向いていた。
「そういう状況の中で、ほぼ毎日取調べ室に入ったわけですが、取
調室に入ったときの検事の様子はどうでしたか?」
「にらみつけられました」
「それは最初からですか?」
「はい」
「にらみつけたというのは、取調べの約二十日間の毎日ということ
ですか?」
「大体、ほとんどです」
「入ってくるなり目線が合って、にらみつけるのですか?」
「はい」
「そういう時に検事に言い掛かりと思われるようなことを言われた
ことはなかったですか?」
「はい。一度、検事さんが私の顔をじっと見られるもんですから、
私もこう見ておったんですが・・・」
再び父が大きな声で再現した。

『お前は俺をにらみつけるのか!今まで取調べの中で検察官をにら
みつけたのはお前が初めてだ!』・・・と言って、また『(大声で
)ぶち殺すぞー!』・・・と大声で怒鳴られた事もありました」
「あなたは、それについて何か言いいましたか?」
「『私はにらみつけていない。あなたが私を見るから私は偶然見た
だけの問題です』と申しあげました」
「そういうふうな言い合いもあったということですね」
「はい」
「取調べ中、世間話とか雑談とかはありましたか?」
「ほとんどありませんでした」
「あなたの話というのは、検事は十分聞いてくれましたか?」
「ほとんど聞いてもらえませんでした」
「聞いてないということは、検事がそれなりに、自分の考えを押し
付けるようなことがあったんですか?」
「はい、自分の頭で描いて、それを事務官に記録させて、それを私
に見せて、『これでどうだ』と言われました」
「それについて反論はしたのですか?」
「はい、反論しました。『そういうことは言っとらんです』と言っ
て、黙っとったら」・・・『(再び大声で)言わないのかー!黙秘
かぁー!』・・・と、怒鳴られ私は『何も否認しておるわけじゃな
いんですよ』というと・・・『(大声で)何をー!』・・・と。威
圧的な言葉を吐いてですね」
「そういうふうな、今、法廷に響き渡るような大声なんですか、取
調べ中は?」
「それはもう私以上じゃなかったでしょうか。私も声は大きいほう
ですけど」
「言葉は、どういう言葉を言うのですか?」
「こんちくしょう、ぶち殺すぞという言葉が非情に多かったですね」
「本当に検察官の口からそういう言葉が出たのですか?」
「はい、真実です」
         〜 中 略 〜

目の前で再現される取調べの模様は、最初は誰もが「まさか検事が、
そんな事を」と信じてくれなかった内容だった。しかし生々しく語
る父の話に、単なる作り話ではここまで詳細に語れない事に誰もが
気づき始めていた。
「理事会を騙したと言われて、どうでしたか?」
「これにつきましては、『騙してない』と強く反論すると・・・『
(大声で)何をっ!こんちくしょうー!ぶち殺すぞー!お前には第
二弾、第三弾があるぞ!法廷には組合員も来るぞ!家族も来るぞ!
俺も言うぞ!検事をなめるなー!ぶち殺すぞー!、こんちくしょう
ー!馬鹿、馬鹿、馬鹿野郎―!』」
『ドンッ!』
・・静寂・・
必死で真実を訴えようとする父の姿は見ていて痛々しいほどだった
が、気迫にあふれていた。
            〜 中 略 〜

この後も、父は取り調べの模様を生々しく証言していった。傍聴席
で見守る人達は、目の前で再現されていく取調べの模様にショック
を受けながらも、誰も目をそらすものはいなかった・・・検事以外
は。
「こういう調べを受けて、十分睡眠は取れましたか?」
「残念と申しましょうか・・・悔しさの余り夜も眠れない日が続き、
医務官にお願い致しまして、睡眠誘導剤をもらって飲んで眠るのが
精一杯でございました」
「今まであなたは長年佐賀市農協組合長として尊敬もされ、多くの
人が敬意を持って、接してきたと思いますけれども、こうういう扱
いを受けたということはありますか?」

「こういうようなことは生まれて初めてでございます・・・私は現
在は七十二歳でございますが、私も戦中戦後いろんな場面に遭遇し
てきたわけでございます・・・一番(精神的に)こたえたのは肉親
の死であったわけでございます・・・その死亡いたしました時の悲
しさ、悔しさ、これにも勝る今回の取調べについては、怒りと悔し
さで精一杯でございました。こんな取調べがあっていいものかと私
は残念で残念で、死ぬまで私は忘れません・・・」

悔しさをこらえて話す父の言葉に、法廷からはすすり泣く声が聞こ
えてきた。
「あなたの供述調書は、これが不思議なことに(拘留期限が切れる
日の)十三年三月二十三日に全部作成されているわけですね。私が
弁護士になって、こういう調書というのは初めて見ましたけれども、
この日のことは覚えていますか?」
「はい、覚えております」
「どういうふうに調書を取られましたか?」
「それは、検事が一気に早口で(自分で作ってきた調書を)読み上
げられたということでございます」
「(早口で)立て続けに、ずっと読んでいった?」
「はい」
「これには相当の量の資料も添付されているんですけれども、そう
いう資料を一つひとつ示しながら読んでもらったということではな
いのですか?」
「いえ、それはありません」
「全く示さずに、(早口で)棒読みで?」
「はい」
「そういう状況の中で署名指印を求められたということですか?」
「はい。黙っとったら『否認する気か!黙秘か!』と・・・(指印
を)『押せ』ということですから、もう私は意識もうろうとしてお
りまして、いかに争っても、私の言う事は聞き入れてくれないと。
もうすべて刀折れ矢尽きるというような状況であったと思います・・・
もう意識もうろうの中で、あれだけ罵声と強制、脅迫、拷問に等し
いようなことをやられますと、本当に意識もうろう、もう何も知ら
ないと・・・よしっ、あとはもう法廷で申し上げるほかないなとい
う感じで、仕方なく(断腸の思いで)押印したということでござい
ます」

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※この本のあらすじは「プロフィール」に記しております。
【この事件の特集番組を動画で見る場合はこちら↓】
■テレビ朝日「ザ・スクープ」 http://www.tv-asahi.co.jp/scoop/
 動画配信バックナンバー⇒ 2006年3月5日放送「検証!佐賀市農協事件」(前編・後編)40分

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最初から読ませていただきました。

ご家族が力を合わせて戦ってきたこと、Fightさんのお父様に対する親愛の深さに感激しました。

心の傷は簡単に消えるものではないと思います。
穏やかな日を過せるようになることを、心より念じております。

本も読みたいと思っています。

2008/7/30(水) 午前 11:55 kyoko3723

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いつもコメントありがとうございます。
僕のブログでは本の内容を全部ご紹介は出来ませんが、
おおまかなあらすじと内容は分かっていただけるように
ダイジェスト版を連載しています。
著書とは微妙に違うノーカット版を今は公開していますが
機会があれば著書のほうもぜひご覧になって下さい。

親子の絆…目に見えないし、普段は普通の親子ですよ(笑)
何かあった時に理由もなく熱い想いがこみ上げてくるのが
絆なのではないでしょうか。親子だけでなく、夫婦や恋人、
友だちも同じですよ。その中で本当に何が大切か、本当の
絆とは何かが見えてくると思います。

2008/7/30(水) 午後 0:08 Fight

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少しずつですが、読ませていただいてます。
私にもファイトさんのお父様と近い年齢の父がいてます。
勘三さんの受けた仕打ちがもし自分の父にだったらと想像すると
なんともやりきれない気持ちです。
ここで、本当に勇気を振り絞って訴えることが出来て、良かったような悲しいような・・・。
その勇気もご家族の協力があってこそと思います。

2008/9/17(水) 午後 8:14 [ ももさんご ]

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ももさんごさん、ありがとうございます。
年老いていく両親に何もしてあげれない今の自分が
情けないですが、私も今は新しい人生を歩もうと
頑張っています。

2008/9/21(日) 午前 7:26 Fight


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