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【解説】
「対決」……なんと重たい言葉でしょう。
自分の人生を賭けて、やるかやられるかの前代未聞の対決が決定
しました。父が取調べの実態を証言したことで「この事件は何か
あるぞ。おかしい」とマスコミもやっと気づき始めたのです。
父の証言によって、検事が脅迫して自白調書を作った疑いがあると
いう報道が開始されたのです。今まで動かなかった司法という巨大
な山が揺れ始めたのです。
ここでは公開していませんが、本の中では私が全国の報道機関に送
り続けていたメールに、最初に毎日新聞の記者が気づき、真夜中に
佐賀から福岡の私を訪ねて来て会った時の場面も描いています。
夜中の一時半に別れましたが、私の話をひととおり聞いてくれた記
者は「検察側の発表を信じていましたので…まさかこうゆう事実が
隠されていたとは」…記者の言葉を聞いた時に「遅いよ、今ごろ気
づくなんて」と私は内心は悔しさがこみ上げきていました。
今まで記者たちも父を犯人として疑わないまま報道してきたのです。
だから世間の誰もが父を犯人視したまま、誰も信じてくれなかった
のも当然です。
誰も寄り付かない、誰の応援もないまま苦しい闘いを続けていまし
たが、マスコミ報道によって世間の目が変わるかもと期待しました
が、そこまでには至らず「あれ?まさか検事が本当にそんなことを
するのか?」と疑問を投げかけた程度でしかなかったようです。検
察もすぐさま「荒唐無稽だ」とのコメントを発表してバッサリと切
り捨てました。
法廷で検事の嘘を法廷で立証しなければ、まだ世間は信じてくれない。
そのためには法廷で対決するしかなかったのです。検事は「知らない」
「記憶にない」と嘘を貫くかも知れませんが、無実を証明する方法は
「対決」しかなかったのです。相手を倒さなければ、父が犯人とされ
てしまう。まさに「対決」でした。しかも、被告である父が検事を尋問
する。
前代未聞の被告である父と検事との直接対決が決まり、裁判の流れが
大きく変わり始めていたのです。まさに熱い夏でした。
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『いつか春が 〜父が逮捕された「佐賀市農協背任事件」〜』
(不知火書房より全国の主要書店にて発売中)
第八章 証言台の父 検事が召還(未公開原稿より)
それから二ヶ月後の九月三日。いつも公判の最後には次回の
公判日が話し合われるのであるが、この日は裁判長の口から
次回公判の内容について意外な言葉が飛び出した。
父の取調べを担当した当時のI検事を、裁判所命令で法廷に
召還する事が告げられたのだ。現職検事を証言台に立たせる
という異例の決定に、法廷からはどよめきがあがった。
それまでも弁護側からはI検事の証人申請を申していたが、
検察側は頑なに拒み、裁判所も必要なしと判断して申請は却
下されていた。それが突然、裁判所命令でI検事を召還する
という決定が告げられた。
これまで私たちがどんなに押してもビクともしなかった山が
地響きを立てて動き出した。二ヶ月前の父の衝撃的な証言が
報道がされてこの裁判に世間の注目が集まり始めたことがき
っかけとなったのは疑いの余地はなかった。
この騒動を収束をさせるためには、I検事を法廷に召還して
事実を確認する以外ないと裁判官は判断したのだろう。裁判
官も「まさか検事がそんなことをするわけがない」と考えて
いるからこそ、I検事に法廷で証言させて決着をつけようと
思ったに違いない。
私は理由がどうあれ、真実が明らかになるチャンスがめぐっ
てきたという喜びで胸が熱くなった。
「おい、こりゃあ大変な事になったぞ」「思っていたのとは
だいぶ違う展開になってきたな」
記者達は裁判の予想外の展開に興奮しながら法廷を出ていっ
た。思わぬ展開に私も混乱していたので、気持ちを鎮めよう
とフロア奥の喫煙所へと向った。そこには法廷を出て行った
記者達が集まり、興奮した声で電話をかけているところだっ
た。記者達は私が被告の息子であることなど誰も知らない。
私は何食わぬ顔をしてタバコに火をつけた。
「あっ、今、裁判が終わりました。はい……そうです。それ
がですね、思わぬ展開になってきたんですよ。取調べ検事が
次回、証人として呼ばれることになったんですよ……あっ、
はい……そうなんですよ。こりゃあ、大変なことになってき
ましたよ」
記者は私に目もくれず、興奮した声でデスクに報告している
ようだった。その横では別の記者が電話で何やらひそひそと
話している。その隣の記者も電話中だった。
今までこの裁判に関心を持たなかった記者達が今、慌ててい
る様子が私にはおかしく思えた。私は裁判の流れが変わって
きたことをハッキリと確信した。
早速、次回公判に向けての打ち合わせが行われた。その時、
日野弁護士から父に驚くような提案が告げられた。
「副島さん、あなたもI検事に質問してみるね」
「えっ?」
「あなたもI検事には聞きたいことが山ほどあるでしょう。
私のほうで副島さんにも質問させてもらえるようにと裁判所
にかけあって、許可をもらいました……どうしますか」
日野弁護士の突然の言葉に、父と母は顔を見合わせていた。
「先生、そんなことが出来るとですか? 主人は被告ですよ。
被告の主人が検事を尋問だなんて……」
母が目を真ん丸くしながら、すっとんきょうな声をあげた。
日野弁護士も山口弁護士も黙ってうなずいていた。私も、被
告である父が取調べをした検事を尋問するなど全く予想して
いなかった。
「先生、ぜひやらせてください。私はI検事のしたことは一
生忘れることが出来ません。密室でI検事が私に何をしたの
か、法廷で本人に認めさせてやります」
父はI検事との直接対決に闘志をみなぎらせた。一時は心身
ともにボロボロになり、絶望の淵をさまよっていた父が別人
のように変わり始めていた。裁判は一瞬たりとも気を抜くこ
とが出来ない真剣勝負だ。刑事裁判の法廷は緊張と不安の極
限状態の中で真実を追及する闘いの場だった。父はI検事と
の直接対決に燃えていた。
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※この本のあらすじは「プロフィール」に記しております。
【この事件の特集番組を動画で見る場合はこちら↓】
■テレビ朝日「ザ・スクープ」 http://www.tv-asahi.co.jp/scoop/
動画配信バックナンバー⇒ 2006年3月5日放送「検証!佐賀市農協事件」(前編・後編)40分
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鍵携帯さんへ
こちらこそありがとうございます。著書の一部を抜粋してご紹介しています。お時間の許す限りで結構ですので、ぜひご覧下さい。これからもよろしくお願いします。
2008/7/31(木) 午前 3:18
本の購入無しに申し訳ありませんが、少しだけ読む事が出来幸いです(^-^)時間がかかると思いますが全て読まさして下さいね、ありがとうございます。それにしても凄い気力で乗り越えたのですね…本当に。
2008/7/31(木) 午前 3:56 [ - ]
「父の取調べを担当した当時のI検事を、裁判所命令で法廷に召還する事が告げられた」、権威と組織を守る司法が良く決断しましたねぇ。裁判官や検事の全てが駄目な人であるわけではありませんが、組織としては権威と組織を守るために機能してますから、なかなかこうした判断はされないと聞いてました。判断した裁判所、またそれを認めた検察等、日本の司法もまだまだ見捨てたものでないんですねぇ。
2008/7/31(木) 午前 7:13
antinomy さん、気にせずにどうぞ。一人でも多くの人に
司法の世界で何が起きていたのかを知って頂きたい思いで
公開していますので。
2008/7/31(木) 午前 9:50
Mineさん、そうなんです。異例の決断でした。でも、もしかしたら
マスコミが騒ぎ始めたので、検事を呼んで(嘘でもいいから)「いいえ、やっていません」とハッキリと断言させて、この騒動に終止符を打つためだったかも知れません。それで検察のメンツは保てますしね。それとも本当に真実を明らかにするためだったのか…。
未だに分かりません。
2008/7/31(木) 午前 9:55
みかんさん、ありがとうございます。
「夕焼け」「感謝」「七夕」「特等席」の4枚です。
2008/7/31(木) 午後 3:43
すごい....
読んでるだけで息がつまりそうです...
きっと傍聴していたご家族もすごいエネルギーが必要だったでしょうね。
お父さんの不屈の精神には脱帽です。
人はこんなにも強くなれるものなんですね。
2009/4/20(月) 午前 11:27
佐賀の事件は、報道の断片でしか理解していませんでしたが、やはりそうでしたか。
発生場所が密室だけに、やった本人が認めない限り証明ができないというのが、この手の問題を蔓延させている要因です。
私もそれを体験した一人です。
虚しい戦いかもしれませんが、それは必ず報われるはずです。
頑張ってください。
2010/1/29(金) 午後 11:34 [ wtm*38 ]
地震報道に埋もれがちですが、今日は前田検事の初公判です
2011/3/14(月) 午後 8:14