『いつか春が』執筆日記

波乱に満ちた人生。夢に向かって挑戦する男のドキュメントストーリー。

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※この連載シリーズ企画は、物語になっていますので、もしよろし
ければ、1話からお読みになって頂くとさらに物語の内容が充実します。

【解説】
この日、私は生まれて初めて人を憎みました…。腹の中が煮えくり
返り、目の前の検事に飛びかかって…それ以上は言葉に出来ないほ
ど怒りと憎しみでいっぱいでした。

これが実際の法廷です。法廷の向かって左側が検察側。右側が弁護
側席です。証言台に検事が座り、その右2メートルに被告である父
の席が特別に設けられました。まさに異例づくめの法廷でした。

心臓の鼓動が聞こえてきそうなほど緊張に包まれた法廷。
「人間として自分のしたことを、良心にしたがって正直に話してく
れ」と私たちは祈るような思いで検事の背中を見つめていましたが…。
祈りは怒りへと変わっていきました。

「人の人生を滅茶苦茶にして、まだ嘘をつくのか」…
あまりの悔しさに涙がにじんできました。
これが司法の正義なのか。この世に正義はないのか……

「検事よ、もし自分の家族が同じように無理やりに犯人にでっちあげられて
人生を粉々に破壊されたら…あなたはどうする?自分のしたことに
罪悪感はないのか。ここまで平気で嘘を言うなんて……隣の父の顔を
見ろよ……」
悔しくて悔しくて私の指は拳に食い込んでいました。

……物語もいよいよ後半に突入しています。

※この本のあらすじは「プロフィール」に記しております。
【この事件の特集番組を動画で見る場合はこちら↓】
■テレビ朝日「ザ・スクープ」 http://www.tv-asahi.co.jp/scoop/
 動画配信バックナンバー⇒ 2006年3月5日放送「検証!佐賀市農協事件」(前編・後編)40分



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『いつか春が 〜父が逮捕された「佐賀市農協背任事件」〜』
     (不知火書房より全国の主要書店にて発売中)

  第九章 証言台の検事 一年ぶりのI検事 (未公開原稿より)

平成十四年十月二十四日。
この日、父や弁護士とともに私達はいつもよりも早く法廷に入った。
開廷前の法廷は異様な緊張感に包まれていた。取調べをした検事が
今回、証言台に立つという異例の事態となったために、今回も法廷
は多くの傍聴人と記者達で埋めつくされていた。

法廷の被告席を見て驚いた。
証言台のすぐ横に、被告席となる長机と椅子が設けられていた。つ
まり正面を向いて証言台に立つ証人は、被告に真横から見られなが
ら証言をする事になる。その距離はわずか二メートルほど。
父も戸惑いながら特別に用意された被告席に座った。

I検事と父は約一年ぶりに顔を合わせることになる。自宅から任意
同行し逮捕を告げたのもI検事で取調べも全てI検事が行った。
裁判も当初はI検事が担当していた。
しかし、取調べ中の怒鳴り声や大きな音を聞いていた証人が偶然に
見つかり、証人として証言台に立つ事が決まった途端に、I検事は
どこかに異動となり担当検事が交代した。その後、I検事がどこに
異動になったかも私たちは分からないままだった。

そのI検事と一年ぶりの顔合わせということで、父も私も複雑な思
いでI検事が法廷に姿を現すのを待った。
今も取調べの恐怖がトラウマとなって、夢にまでうなされ続ける父
がI検事の顔を見たら、どのような反応を示すのか私は心配だった。
人を憎む事の悲しさや虚しさを父は頭では分っていても、人間とし
てどうしても許す事の出来ない感情・・・父はずっと熱い怒りの炎
を胸に秘めていた。

間もなく、わずか二メートルほどにある証言台にI検事が立つ。ピ
リピリとした緊張感が傍聴席にも伝わってきた。
開廷直前になって裁判を現在担当する検事が現れて検事席に座った。
直後に裁判官三名が黒い法衣をまとい次々と入廷した。
全員が起立。一礼して着席。

「では、今日は当時被告の取調べを行った検察官を証人として呼ん
でおりますので、尋問を行います」
裁判長の声が法廷に静かに響いた。
法廷の奥のドアが職員によって静かに開けられると、一人の背広姿
の男性が入廷してきた。

I検事だ!

父や私達家族にとって、決して忘れる事が出来ない顔だ。

全員が彼を注目した。
彼は背筋を伸ばして悠然と証言台に立った。すぐ隣に座る父には、
まったく目を向けようとはしない。だが彼の視界には、いやおうな
しに父の姿が映るはずだ。
彼は裁判長に一礼すると正面を向いたまま証言台席に腰を下ろした。
父は拳を膝の上に置き、彼の表情をもっと近くで確かめたいのか、
少し身を乗り出すような格好で彼を見ている。下唇をかみしめ、彼
の横顔を睨んでいた。

一年ぶりに見たI検事は濃紺のスーツに、以前と同じように黒ぶち
のメガネ。髪形も以前と同じだった。顔を見る限りでは表情は何も
分らなかったが、現職の検事が証言台に立つという異例の事態に内
心は緊張しているはずだ。

検察官席に座る担当検事がゆっくりと立ち上がった。
「では、尋問をさせて頂きます」
今から検事が検事に尋問するという異例の裁判が始まった。
「証人は、そちらに座っておる副島被告の取調べを行った検察官と
いうことでよろしいですか」
「はい、そのとおりでございます」
尋問をする検事も証言台の検事も落ち着いた声だった。
検事としての経歴を尋ねられ、I検事は正面を向いたまま自分の経
歴を語った。彼は関東の地検に勤務している事が分った。

尋問は予め入念にリハーサルが行われたのか、検事の質問に対して
I検事はスムーズに答えていった。検事同士の尋問のやり取りの間
も父の視線は、I検事の横顔を睨んだまま目をそらそうとしなかっ
た。
「取調べをしておるときに、被告人はどういう供述態度でしたか?」
「ごく普通の会話をするといったことで、特段の特異な態度、動静
はありませんでした」
いよいよ取調べの核心部分に入ってきた。
「本件犯行について聞いた時に、例えば気分が悪いとか、そういう
訴えというのはありましたか?」
「意識がもうろうとしてきましたと、しばらく時間を下さいといっ
た申し立てがありました」
父はI検事が答えるたびに、心の中で叫びながら反論していた。
(あれだけ大声で長時間恫喝されたら、意識がもうろうとなるのは
当たり前だ!)
「そういう申し立てがあったときに、被告人の様子を見て本当に体
調が悪いと思いましたか?」
「思いませんでした」
父は「嘘だ」と訴えるかのように首を横に振った。
「(調書の内容に対して)訂正の申し立てをしたのに、全く聞き入
れずに署名するように強く言ったとか、そういうことはありますか?」
「ありません」
父は、さらに首を大きく横に振った。
I検事は、そんな父を無視するかのように正面を向いたまま淡々と
答えていった。

三名の裁判官は、I検事の表情をじっと見つめていた。
「三月九日に過大評価されていたことを知っていたということを認
める調書ができておるんですが、その点については(被告は)認め
たということなんですか?」
「そうです。夕食を取った後に、本人が夜になって考え直したとこ
ろ、間違っておりましたということで、いわゆる業界用語というか、
頭を下げる。すなわち認めるという供述を夕食の後にされました」
I検事が平然と答えると、隣に座っていた父は怒りの表情をあらわ
にして身を乗り出しそうになった。
(嘘だ!デタラメだ!あの時も無理やりに署名させたじゃないか!)
「(被告が)それを認めるときに、証人(あなたが)のほうから例
えば強く言うとか、そういうようなことをしたということはあるん
ですか?」
「ありません」
「(被告が)自然に認めたということなんですか?」
「はい」
(これも嘘だ!嘘だ!嘘をつくな!)

父の顔が見る見る紅潮していくのが分った。
「説得をした結果、この点については認めたということですか?」
「さようでございます」
(でたらめだ!人間としての良心はないのか!)
「調書を作った際に、例えば訂正申し立てたとか、内容が違うとか、
(被告は)そういうことは言っていましたか?」
「いや、なかったです」
(訂正してくださいと何度も頼んだじゃないか!)
「そのまますぐにサインして指印したということでよろしいですか?」
「はい」
(なぜ正直に言ってくれないんだ。署名しろ!ぶち殺すぞ!と何度
も脅したじゃないか!)
「証人(あなた)のほうから、そういう話ではないかというふうに
(検事が勝手に作ったストーリーを)押しつけて、例えば大きな声
を出して認めさせるとか、そういうことはしていないですか?」
「しておりません」
(これも嘘だ!でたらめじゃないか!お前が勝手に調書を作ったじ
ゃないか!)

落ち着いた声で堂々と証言する検事の姿を見て、父は必死で怒りを
抑えていた。
「例えば証人のほうから被告人を怒鳴りつけるとか、そういうこと
はありましたか?」「怒鳴るという表現はいかがなものかと思いま
すけれども、大きな声を出したことはございます」
「具体的にどういうことを言って、大きな声を出すんですか?」
「(被告が黙りこむと)ですから、いや、だから、テレパシーは俺
は分んねえから、何か言ってくれ、分るんだよと。今、言ったよう
な言い方で、声が大きくなってしまった次第でございます」
「証人がそうやって声が大きくなったとき、被告人はどういう様子
でしたか?」
「変化はありません。先ほど申し上げましたとおり三白眼で黙り込
んで睨んでいると。それだけです」

父は検事の横顔を睨んだまま膝の上に置いた拳を震わせていた。


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閉じる コメント(7)

私の息子の経験なんて、塵にも等しいものですが、交通事故を起こした(突っ込んできた車をよけて、他の車にぶつかった)息子の調書が、散々改ざんされていたことを知ったのは、簡易裁判でのこと。

署名捺印した後に、修正テープで消して書き直してありました。

何度も違うと申し立てましたが、あえなく却下。

信じられるはずのものを信頼できなくなりました。

お父さま大変でしたね。

少しですが、お気持ちをお察しいたします。

2008/7/31(木) 午後 9:14 [ いとしのフィート ]

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貴重なコメントをありがとうございます。
出るわ出るわ……ですね。

息子さんも大人の醜い世界を見てしまい、さぞかし
傷つかれたでしょうね。
全部がそんなことされているわけではないでしょうが…
交通事故でもそんな出来事に遭遇するということは
他人事ではないのですよ。

他の連載記事もご覧になっていただければ幸いです。

2008/7/31(木) 午後 9:30 Fight

初めまして。真実は一つ。言葉が足りないために罪に落ちる人が何と多い事か・・・・・。話し上手・人を丸め込むのが上手・・・これがまかり通るのでは裁判の意味がありませんね。悪を知りつつ弁護するシステムや正義としりつつ被告を罪に落とす検察側の見栄には人としてうんざりしています。悪が栄える世は無いと信じているのですが・・・・。

2008/7/31(木) 午後 10:16 Beaver♪

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ビーバーさん、コメントありがとうございます。

人の心が変わってきたのでしょうね…次々と起こる不正や偽装。
バレなければいいさ、という心のおごりでしょうね。
私もこの事件によって苦しみましたが、人として何が大切なのか
学んだような気がします。人生観や人との接し方が変わったかも
知れませんが、それも人生かもしれません。

2008/7/31(木) 午後 10:41 Fight

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今日は、僕も昔警官に調書を捏造二度された経験がありますし、民事で裁判起こしたこともあります。
僕の場合は警官の云うことより僕を取ってくれたので、少しは検事にも良心があるのだ、とも思いましたが、府川事件や、件名は思い出せないのですが、検察の無能力を感じていますね。彼等は警察の組織がまともだと本当に思っているのか?問いたいものですね。
それと判事の常識の無さ、法の世界の程度の低さは良く分かりますよ。 頑張って正義を貫いてください。
今僕は本に掛っているのでブログの方は放置していますので、すみませんね。

2008/8/1(金) 午後 3:31 hit*r*ikujp

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ひとりさん、ありがとうございます。
司法には納得のいかないことがたくさんありますね。

時々、そちらを拝見させていただいていました。
執筆がんばってくださいね。

2008/8/1(金) 午後 10:44 Fight

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鍵コメントさん、遅くなりましたが今日、本を送りました。
一週間くらいで着くそうです。元気になってもらえたら光栄です。

2008/8/1(金) 午後 11:47 Fight


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