『いつか春が』執筆日記

波乱に満ちた人生。夢に向かって挑戦する男のドキュメントストーリー。

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【解説】
「いつか春が」のダイジェスト版を只今公開していますが、一話からお読み
になられた方、または完成版の著書を既にお読みになられた方は、この本を
お読みになられてどのように感じておられるでしょうか……。
何か感ずることがありましたら、こちらまでご感想をお寄せください。

物語の流れとして非常に緊迫した場面が続いていますが、当時はこのように
本当に毎日が緊張と不安の連続でした。「無罪」の瞬間まで、一日たりとも
心休まる日はありませんでしたね。それが正直な気持ちです。

そして、これが冤罪の恐怖であり苦悩なのです…。

報道では事件や裁判で公に公表された情報のみが報じられますが、その裏側の
誰も知らない家族の想い。つまり、被告とされた本人や家族の想いなどは報じ
られることはありませんでした。
「苦しかった三年間」などと一言で言い表すことなど出来ません。
さまざまな思いが刻まれていった闘いでした。

冤罪事件に限らず、裁判に関わったすべての人たちの胸中は、苦しみ以外
の何ものでもないのです。もし、みなさまの周りに裁判に関わっている人がお
られたら、たぶんその方々も同じように苦しみにあえいでおられると思います。
裁判や事件・事故に幸いに関わったことがない方にとっては、とても衝撃的で
重苦しく感じておられることでしょう。しかし、著書のテーマでもある「あき
らめない勇気」が実を結び、徐々に真実が明らかになっていくのです。
まもなく、さらに劇的な展開が待ち受けています…。
もうしばらくこの物語とお付き合い下さい。

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『いつか春が 〜父が逮捕された「佐賀市農協背任事件」〜』
     (不知火書房より全国の主要書店にて発売中)

    第九章 証言台の検事 事例 (未公開原稿より)

平成十四年十一月七日、佐賀地裁。
I検事への二度目の証人尋問が始まった。

二週間前の裁判で、証言台に立った検事は、取調べ中に「この野郎!
ぶっ殺すぞ!」と脅迫的な言葉を吐いた事を認めた。
マスコミや傍聴人で埋めつくされた法廷にI検事は再び立った。
前回同様に証言台の横に被告である父の席が特別に設けられた。
開廷が告げられるとI検事が証人として法廷に姿を現した。
ゆっくりと証言台に向かう検事の表情は険しく緊張の色は隠せなかっ
た。

証言台に座ると早速、弁護側から尋問が開始された。
まず主任弁護士である日野弁護士が口火を切った。
日野弁護士は、ゆっくりと立ち上がると、いつものように左手に資料
を持ちながら右手をそっとメガネに手をやった。
今から始まる闘いを前に、気持ちを鎮めるかのようにしばらく間をお
くと、静かな声で尋問を開始した。
「本件融資事件はですね、あなたが主任検察官となって処理されたん
ですか?」
「さようでございます」
「副島被告に対する取調べは、あなたが終始担当していたわけですね
?」
「そのとおりです」
弁護士と検事の静かな闘いが始まった。二人の声だけが法廷に響く中、
父は目の前の検事の横顔をじっと睨んでいた。

「この融資事件を背任の疑いで捜査することになった端緒(発端)は
何なんですか?」
「捜査の端緒につきましては、捜査の密行性及び関係者のプライバシ
ーの関係もありますので、おそれながら控えさせて頂きたいと想いま
す」
「本件の捜査の端緒はどういうことでしょうか?」
「先ほど申し述べたとおりです」
「・・・これは重要なことだから証人に端緒だけは明らかにしていた
だくように裁判所からも命じて下さい」
裁判長はうなずき証言台の検事を促した。
「具体的な、どういう形で出てきたというのではなくてね、差し障り
のない範囲で、抽象的にで結構ですから述べていただけませんか?」
裁判長から促され、検事は首を傾げて一瞬迷ったような表情を浮かべ
た。

「・・・はい・・・そうであればお答えします。告発です」
『告発』という言葉を聞いた瞬間、父の体がビクンと反応した。
傍聴席はざわめき、小声でささやく声が聞こえてきた。
「やっぱりな・・・」
「誰かが嘘の告発ば仕組んだとばい」
日野弁護士は手にしていた資料を静かに机に置いた。先ほどまでの穏
やかな表情は消え、厳しい表情で検事を見つめた。

「告発の対象になっていたのは誰ですか?」
「被告人のことです」
「被告人だけだったんでしょうか、それとも他にも(対象者は)いた
んですか?」
「恐れながら、取調べのことに関しては十分に記憶を喚起してまいり
ましたけれども、そのことについては記憶を喚起してる準備がござい
ません。ですからここで断定的なお答えは出来ません」
「(ほかにも告発の対象者がいたのか)あなたは記憶の喚起ができな
いということですか?」
「いたかいないかどちらとも答える事はできない」
日野弁護士は、検事が強制捜査に踏み切る段階で、事件の構図をどのよ
うに描いていたのか真相を聞き出そうと質問をぶつけた。

私は事件の真相をこう推理していた。
農協の経営に反対するグループがトップを失脚させ、思いのままに農
協を牛耳ろうと画策。悪意に満ちた巧妙な告発状が作られ、それを検
察庁に提出。その告発状の内容を信じ、十分な裏づけ捜査が行われな
いまま強制捜査に着手。
その後、事件の真相に気づいたがマスコミ報道は過熱。今さら後に引
けなくなった。物的証拠が何もない現状では自白調書だけが唯一の支
えとなった。そのために、どうしても自白したという調書が不可欠だ
った。
私は今まで佐賀で、真相を探るために独自に事件の調査を続けてきた。
その結果、この事件の真相が徐々に見えてきた。

日野弁護士の鋭い質問に対してI検事も必死で応戦した。
「起訴状には抽象的な書き方しかしていないので、公判で検察官に対
して釈明を求めたところ(起訴状のとおりですと)そういう釈明が返
ってきたわけですけれども・・・あなたは起訴するにあたって、あな
た自身はどういうふうに(被告の容疑を)認定したんですか。あなた
が起訴しているんですからね」
「しからばお答えします。冒頭陳述どおりです」
「具体的におっしゃってください」
「冒頭陳述は思い出してくる準備はしておりません。恐れながら」
I検事は素っ気無く答えた。
日野弁護士は苛立つ感情を鎮めようと目を閉じた。

再び質問を続けた。
「・・・どうも私は、あなたの答え方が非情に不誠実だと思うんです
よ。もう少しね、何でも覚えていないとかじゃなくて、あなた自身が
取調べて、一番その点を問題にしたはずなんだから」
日野先生は今まで我慢していた苛立つ感情をぶつけた。

「取調べ状況につきましては思い出してまいりました。その他のこと
については恐れながら(記憶の)準備をいたしておりません。申し訳
ありませんが」
弁護士と検事の問答がかみ合わない。

日野弁護士は、しびれを切らして裁判長に向かって訴えた。
「(検事に質問の意味が)伝わるようにしているつもりですけど、証
人が証言をはぐらかしていると。私はそういうふうに見ておりますが
・・・」

それを聞いたI検事もぶっきらぼうな口ぶりで反論した。
「それじゃあ私、どうしたらよろしいんでしょうか」
H弁護士のほうを向こうとはせずに正面を向いたまま答える検事。
弁護士の方を向けばすぐ隣にいる父と目が合ってしまう。検事は正面
を向いたままの姿勢で答えた。

犯行の動機についての質問が始まった。
「それじゃあ、また聞きなおします。形を変えて聞きましょう。農協
が融資した貸付金が回収不能になったために組合長や理事、あるいは
担当職員が賠償責任を問われたという事例が本件当時あるいは以前に
あったか捜査しましたか?」
「捜査と言うのは刑事訴訟上における捜査のことですか」
「いや、理屈のことを言っているんじゃないです。調べたんですかと
いうことですよ?」
「いや、調べていません」

「えっ!・・・」

日野先生は思わず声をもらした。
「調べてはおりません」
弁護士の驚く声も気にせず正面を向いたまま平然と検事は答えた。
「調べてない?・・・」
「はい」
「全く調べなかったんですか?」
「はい」

日野先生はあきれた表情のまま、さらに質問をぶつけた。
「あなたの調書によると、(被告は)自分達の責任を先送りするため、
民事賠償責任を問われた場合に賠償責任が出てくると。(被告は)そ
れを先送りするために本件融資をしたんだというような供述をしてお
りますよね?」
「はい」
「そういう供述になっていますよね?」
「はい」
検事はうなずいた。

「本当にそういう民事責任を追及されるような具体的な危険性、状況
が(被告に)あったかということについて、そういう被告達の供述の
裏づけをとるための捜査はしなかったんですか?したんですか?そこ
をはっきりおっしゃってください」
「いや、はっきりは言えません」
「しかし、そういうふうな具体的な動きがあったという事実はつかん
でませんね?」
「どちらとも言えません。そのことについては記憶を喚起する準備を
しておりませんので断言する事はできません」

日野弁護士の顔が見る見る紅潮した。
「あなたは記憶を喚起する準備をしなければ記憶というのは戻ってこ
ないんですか?」
「通常そうだと思っております」
日野弁護士はあきれてはて、それ以上追求するのはやめた。

日野弁護士とI検事の尋問は、このような調子で進んでいった。

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閉じる コメント(6)

I検事はロボットですか?

裏工作が見え見えで、法廷が茶番劇のように感じますね。

2008/8/3(日) 午後 8:53 [ いとしのフィート ]

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茶番劇でも検事は検事です。正義の象徴である検事の証言です。
このあと、さらに驚きの事実が露呈するのです。そして、父が
検事を尋問するのです。

物語の前半の重々しい空気から劇的に流れが変わってゆきますよ(笑)

2008/8/3(日) 午後 9:37 Fight

私が経験した長男の出来事といい、エホバの証人として暮らした20年もの長い虚構の世界…。

一体、何が正義なんでしょうか?

しっかり調べて結論を出さなくてはなりませんね。

次回も、楽しみにしています。

2008/8/3(日) 午後 10:34 [ いとしのフィート ]

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ありがとうございます。本当に「正義」という言葉が
人の心から薄れていくような気がします。

2008/8/3(日) 午後 10:43 Fight

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履歴からこんにちわ

まだ本文の方はまだですが、プロフィールの方からいきさつを読まさせていただきました

本を買ってじっくり読んでみたいと思います

お気に入り登録させていただきます

2008/8/4(月) 午前 11:59 [ - ]

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ありがとうございます。「オジ蔵さん」と呼んで
よろしいのでしょうか。じつは著書の中でも書いていますが
私は「道端のお地蔵さん?」になっていた時期があります。

これからもどうぞよろしくお願いします。

2008/8/4(月) 午後 0:45 Fight


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