『いつか春が』執筆日記

波乱に満ちた人生。夢に向かって挑戦する男のドキュメントストーリー。

全体表示

[ リスト ]

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

【解説】
そろそろ物語も最終章へと向かっています。
今日の原稿は、一番最初に書いた原稿です。弁護士の先生に実名で
名前を出す許可を、まだ頂いていなかったので、名前がイニシャル
になっています(笑)

冒頭は昨日の原稿とダブっていますが、昨日の原稿がこの後に修正
した原稿です。さらに最終的は、本ではこの部分はだいぶ書き直し
ています。このように何度も書き直して本が完成したのです。
完成版…つまり出版された本ですが、読み比べてみるのも面白いで
すよ。

だいたい予定では、あと二回ほどで今回公開できる分は終了とさせ
て頂く予定ですのでご了承下さい。今まで公開してきた原稿は初期
の原稿や最終校正前の原稿ですので、実際に出版されている本と微
妙に文章が違ったりしています。
実際に出版されている本の約3割強を、今回ダイジェスト版として
公開してきましたが、ここでご紹介出来なかったいろんな出来事が
描かれていますので、本のほうもよろしくお願い致します。

冤罪がどうやって作られていくか。今まであまり知られていなかった
実際の取調べの方法や、裁判の様子。無実の人間が犯人とされてい
く恐怖や精神状態などを知って頂こうと思い、ダイジェスト版として
公開してきました。裁判の場面があまりにもリアルだとおっしゃる
方が多いので、その理由を知りたい方はこちらをご覧下さい。
このようにして自分で記録していたのです↓↓↓
http://blogs.yahoo.co.jp/rainrain1192/8648337.html#14483485


では、最終回まであと少しですが、最後までお付き合いください。
============================
============================
『いつか春が 〜父が逮捕された「佐賀市農協背任事件」〜』
     (不知火書房より全国の主要書店にて発売中)

 第十一章 いつか春が  憤死(校正前の原稿より) 

私が急いで福岡から駆けつけると、父は確かに様子がおかしかっ
た。ソファにグッタリしたように黙ってもたれかかったままだっ
た。視線は宙をさまよい、何かを話そうとしても、ろれつが回ら
なかった。

先日までの父とは全く別人のようだった。

「お父さん、何したとね?」
「おお・・・お前か・・・新聞にな・・・書いてある・・・嬉し
かったばい・・・」
「新聞?新聞に何て書いてあるとね?」
まだ父は私の話すことは理解できるようだった。
父は口を半開きにしたまま、胸元のポケットから何かを取り出そ
うする仕草を見せたが思うように手が動かずもたついていた。
胸元のポケットに手を持っていくのもやっとだ。
私はあっけにとられて不安になった。

「何ね?俺が取ってやるからよかよ」
私は父の胸ポケットに手を突っ込むと何かの紙切れをつかんだ。
「何ね、これは?」
丁寧に折りたたんだ新聞の切り抜きだった。
何だろうと新聞を広げてみる、地元紙の先日の結審の記事だった。
父は赤鉛筆で記事に線を引いていた。

『告発が事件の発端』という部分に赤線が何度も引かれていた。
「これがどうしたとね?」
「・・・嬉しかった・・・ばい。初めて記者が・・・告発のことば
書いてくれたばい・・・嬉し・・・かったあ・・・」
父はかすれた声で途切れ途切れにつぶやいた。

今まで何者かによる告発からこの事件がスタートした事は世間に
は一度も報じられていなかった。父は何度も何度も、いや何百回
も「いったい誰が、こんな恐ろしいことを企んだのだ」と悔しさ
をぶつけてきた。

その想いが記事となった事がよほど嬉しかったようだった。
裁判が結審したということで、今までの疲れと自分の想いが記事
として世間に報じられた喜びが重なり、父の中に異常が起きたよ
うだった。
事件は父の心に深い傷を残し、長引いた裁判は精神力の限界に達
するまで父を苦しめていた事を改めて知った。

父の様子が気になり私は黙って父を観察した。
どんどん症状が悪化し、私が到着して二時間後には自分で歩けな
くなり、床を這いながらトイレに行った。箸も自分で持てなくな
り、持たせてもポトリと落としてしまう。仕方ないのでスプーン
で口元まで食事を持っていった。

おかしい・・・胸騒ぎがした。

脳梗塞ではないかと不安になり病院に電話した。医者はすぐに父
を連れくるよう指示した。
電話を終えて父のそばに戻ると驚いた。父はソファにもたれかか
ったまま口を空けながら大きないびきをかいていた。

危ない!

私は、すぐに母に帰ってくるようにと電話した。
「お母さん、すぐに病院に連れて行こう」
母も事の重大さがすぐに分かったようで、あわてて帰ってきた。

母は父の名前を呼んだ。
「お父さん、聞こえるね?大丈夫ね?」
返事はなく、ゴーゴーといびきをかいたまま父は眠っていた。
なるべく頭を揺らさないように気をつけながら私は父を負ぶった。

生まれて初めて父を負ぶった。

背中に負ぶった父は、私が思っていた以上に軽かった。
逮捕される前に比べると父の体重は十キロ以上も落ちていたが、
こんなに軽いとは・・・。

小さくなった父が、あまりにも可愛そうで、私は涙がにじんでき
た。一夜にして人生が大きく変わり、長引く裁判で心も体もボロ
ボロになってしまった父が不憫でならなかった。
こんなふうに父をボロボロになるまで苦しめ、父の人生を奪った
者達が憎く思えた。

父を誰がこうしたんだ!

父を負ぶったまま玄関を飛び出すと静かに車に乗せた。
後部座席で母が父を抱きかかえながら病院へと車を走らせた。
私も母も言葉を交わそうとしなかった。言葉に出さなくても同じ
不安を抱いていた。
このまま・・・もしかしたら・・・・

病院に着くとすぐさま父を車椅子に乗せて検査室へ運んだ。
脳の検査が始まった。
母と私は検査が終わるのを黙って待ち続けた。
検査が終わり医師から父の状況が説明された。
「おかしいですね・・・検査ではどこも異常は見当たらないので
すよ。今は意識もおありのようですし・・・不思議ですね」
医者は首をかしげた。
検査の結果、脳波にも異常はなかった。外が暗くなって病院を出
る頃には父も少し話せるようにまで回復していた。

その日は父の事が心配だったし、母も一人では心細いようだった
ので、私は実家に泊まる事にした。
父は相変わらず視線が定まらず、意識がもうろうとしていた。

「お父さん、聞こえるね?俺の言う事が分るね?」
私が問い掛けると父は軽くうなずいた。
「明日また別の病院で検査してみようね。何かしてほしい事はあ
るね?」
「先生達・・・に会いたか・・・」
「先生?弁護士の先生に会いたかとね」
父はまたうなずいた。

翌日、県立病院に母と二人で父を診察に連れて行った。
父のPTSDでお世話になっている先生のもとへ連れて行った。
相変わらず父の足元はおぼつかなかったが、昨日よりは少し自分
で歩けるようになっていた。
診察を終えた先生は私たちに診察結果を説明した。

「おかしいですね・・・ひととおり検査をしましたが、どこも異
常はありませんでした」
「先生、でも父は昨日本当に意識がなくなり普通じゃなかったん
ですよ。なぜでしょうか?」
私は医者に昨日見た父の様子を詳しく話した。
先生は首をかしげながら黙って私の話を聞いていた。

私の話を聞き終えると、先生は言葉を選びながら話し始めた。
「う〜ん・・・私も副島さんみたいなケースは初めてで戸惑って
います。副島さんにとって裁判の心労は、我々の想像をはるかに
越えたものなのかも知れません」
先生はそういうと父を見た。
意識はだいぶ戻ってきたようだが、相変わらず父の視線は定まら
ず宙をさまよっていた。

「人間の体というのは、まだまだ分からない事がいっぱいありま
す。特に精神的な傷の深さは本人しか分りません。今の医学では
うまく説明できませんが、敢えて言うならば副島さんは命を削っ
て闘っておられるようなものだと思います」

先生が話した言葉の意味が、私と母にはよく分った。
「今の副島さんの心の状態を説明するには、医学的には適切な言
葉で説明できませんが・・・このままでは憤死されますよ」
「憤死?どういう意味ですか」
「つまり怒りや悔しさを心に抱えたまま、命を削って闘っておら
れるわけです。自分は無実だと心の中で叫びながらボロボロにな
って闘っておられます。そんな状況だと思います」
母と私は何も言葉が出なかった。

先生が話した事はまさにそのとおりだった。
「できれば一日も早く心を休め、穏やかな日々を過ごせればいい
のでしょうが・・・そういう訳にはいかないでしょうしね・・・」
先生が言われるように今はどうする事も出来ない。
裁判のことを忘れたくても忘れる事が出来ない毎日だった。

早く裁判を終わらせてやらなければ父は本当に壊れてしまう。
父だけでなく私も母も裁判のプレッシャーに押しつぶされそうに
なりながら暮らしている。

あと少しの辛抱だ。
あと少し辛抱したら必ず春が来る。そう信じるしかなかった。
病院を出た後、弁護士の先生のもとへと向った。
Y先生もH先生も父を心配してくれた。

「副島さん、裁判ももう結審したし、あと少しの辛抱だからね。
大丈夫ですよ、きっと副島さんの無実は証明されますよ」
H先生がやさしく声をかけると父は嬉しそうにうなづいた。
Y先生も父の顔を覗き込むようにして励ましてくれた。
「そうですよ、副島さん。我々はベストを尽くしたし、これで副
島さんが有罪になるならば日本の司法はおしまいですよ。必ず無
罪を勝ち取れますよ。あと少しの辛抱だから頑張りましょう。ね
っ、頑張りましょう」

H先生を何とか父を励まそうとやさしく声をかけた。
「副島さん、無罪判決の瞬間を自分の目で確かめんと今まで何の
ために闘ってきたか分からんでしょう。正義を信じましょう」

H先生の言葉を聞いて父の目から涙がこぼれた。

          〜 中 略 〜

父はここに来るまでの三日間の記憶がなくなっていた。新聞の記
事を見て嬉しさのあまり頭がボーとなり、そのあとの記憶はなく
なったと父は話した。病院に担いで行ったことも全く覚えていな
かった。
今の父の心を元気にするのは、家族の励ましや医学的な治療より
も、何よりも救われるのは弁護士の先生達の励ましであることが
分った。もはや依頼人と弁護という関係ではなく、父にとっては
弁護士は神様のような存在に映るのだろう。

家族の励ましが届かないほど父の心の闇は深く、傷ついた心は裁
判で無実を証明するしか癒されることがない事が分った。

■音楽協力:Love Songs さん http://blogs.yahoo.co.jp/xiong_maririn
============================
============================
http://media.imeem.com/m/4QSIqlG5sR
Yahoo!ブログの為のimeem_wiki文法

閉じる コメント(7)

顔アイコン

こんばんは。
きょう本を読了しました。私の不味い感想は下記のブログに書いています。
空の穴は何色(http://n0o0n.blog18.fc2.com/blog-entry-1222.html)

2008/8/14(木) 午後 9:18 Bosporus

顔アイコン

Bosporusさん、ありがとうございます。
本を読んで頂き、ブログでご紹介までしていただき
感謝しています。このように少しずつ取調べの可視化の
必要性が広がっていくことを願っています。
これからもよろしくお願いします。

2008/8/14(木) 午後 9:55 Fight

顔アイコン

法律で判断できない犯罪・・・勘三さんと健一郎さんは人生を賭けた闘いで幸いにも無罪を勝ち取ることが出来たが・ しかし長期の裁判後で勘三さんが体験した冤罪・虚罪?を想像すると余りにも辛い事・不条理なことが多すぎます。いつもと変わらぬ日常の仕事の最中に・普通の生活からいっきに奈落の底に落とされる。・・・・  
競争社会と無縁な感じがする農協の団体組織に、人事異動前の?功を焦った検察がチクリに乗っかり 実在しない犯罪をあぶり出そうとする。そして体験者のみが語れるおぞましい世界・恐ろしい世界が迫ってくる・・・無実・潔白であった勘三さんの精神・思考の拠りどころはどこを彷徨っていたのでしょうか?・・・・
検察が・職場が・世間が無実を信じてくれないことがトラウマになり・やがて自分で自分を追い込むぐらい精神の病に侵されていくのが想像できましょう。  
潔白の度合いに反比例する勢いで精神の苦痛・葛藤が襲いかかってきたのでしょう・・・・

2008/8/16(土) 午後 4:01 [ afriex ]

顔アイコン

もと職場の同僚の追い落としの謀略による告発で、踊ってしまった検察権力は迷走した・・
>間違えましたの大罪を??・・<  だれも問い正すことができないのでしょうか?
策略のタレこみヤカラの偽証の共謀罪・・・・・自白調書の捏造・証拠が無いにも拘らず暴走する検察の大罪・・・・
庶民から見れば権力の犯した大罪である・・・
悪いやつはよく眠り・世間にはびこる・・・・
勘三さんは無実ゆえに精神・肉体の健康を損ね・すべてをボロボロにされてしまう・・・・・
善人はやせるばかりで衰弱していく・・・

2008/8/16(土) 午後 4:02 [ afriex ]

顔アイコン

この大罪・誰が裁いてくれるのでしょうか? 取調べの可視化は当然ながら・検察官・事務官・取調室が持つ閉鎖社会の構造を変えない限り、同じことが繰り返されるような気がする。
よく解りませんが・誰がこのような特殊な権力構造を作ったのでしょうか?
経済が後退する中で、国家権力のシステムだけは確実に維持されている気がする。諸外国と比較しても取り調べ・裁判事件の情報開示の後進性が言われている。
変化の無い硬直化した政治のせいでしょうか? 選択した?国民が無関心のアホナ世界に座り込んでいるせいでしょうか?  よく解かりません・・・
いつか春が< 学ぶことが多い貴重な著作です・・・・
勘三さんの奥さん・健一郎さんのお袋さん長い間のご苦労お察しいたします。・・・・


2008/8/16(土) 午後 4:03 [ afriex ]

顔アイコン

刑事訴訟法の実刑・有罪の確定率99.9パーセンテージ?・・・・・恐ろしい数字です・ひとたび検察に睨まれると先は諦めたほうがよい・・・・なまじっか希望を持つとほとんど潰されてしまうからである・・・・強権を持つ検察の力は半端ではなく国策と言われようが・上部検察官の点数稼ぎと言われようが・冤罪といわれようが・訴追のgoサインが出るとこれに対抗する事は容易ではない・・・・庶民があずかり知らない所で白が黒に転換するのは朝飯前・・・・一度決めたら後には引けない・・・・失敗認めることは組織のメンツに汚点がつく・・・・安易に失態を認めると前例を作ることになる・・・・誰も責任を取るべきでない・・・・個人の無能力は組織にとってはなはだ迷惑だが組織の安泰はどのようにしても堅持すべきである・・・・庶民に権力の継続構造の実態をけして知らしてはいけない・・・・しょせん住み分けの位置を決めていたのだから・・・・
とは申しましても・かような恐ろしい世界にも人権を・知る・かたる・啓蒙する正義の人々が孤立しながら?いるのでしょうか?・法律に疎いもので・・副島氏は凄いひとだ・・・


2008/8/17(日) 午前 1:46 [ afriex ]

顔アイコン

afriexさん、たくさんのコメントありがとうございます。私は普通の男性ですよ(笑)正義のヒーローでもないし、私が経験したことを伝えることで、何かを考えるきっかけになって頂ければ嬉しいだけです。司法のこと、冤罪のこと、家族のこと、人生について…いろんなことを自分で考えてもらう。そこから何か変わっていけばいいかなと。気負わず、事実を淡々と伝える…そんなスタイルを目指しています(笑)夏バテなのか疲れて休んでいましたが、また再開します。これからもよろしくお願いします。

2008/8/18(月) 午後 2:21 Fight


.
Fight
Fight
男性 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
友だち(26)
  • masaki1957825
  • か り ん
  • めぐむさん
  • Jalapenos
  • [moko&place]
  • David
友だち一覧

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

骨太

執筆

司法

教養

アート

文学

人生

エッセイ

つぶやき

標準グループ

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

数量限定!イオンおまとめ企画
「無料お試しクーポン」か
「値引きクーポン」が必ず当たる!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事