『いつか春が』執筆日記

波乱に満ちた人生。夢に向かって挑戦する男のドキュメントストーリー。

作品:「いつか春が」

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      人の心を狂わす取調室   副島勘三

平成十三年三月のあの忌まわしい逮捕から七年が過ぎました。七年……
まさに裁判に明け暮れた七年でした。刑事裁判の一審で三年、二審で二
年、さらに農協から起こされた民事裁判で二年。今年一月で民事裁判が
終わったばかりです。この七年は言葉では言い表せない緊張の日々で、
長い長い闘いでした。

気が付けば私も既に七十九歳に相成りました。裁判が終わった安堵感よ
りも、心身ともに疲れたというのが今の正直な心境です。いまなお検察
からは謝罪の言葉は一言もなく、事件の検証や真相について誰もふれな
いまま終わってしまったのが残念でなりません。
やっと訪れた静かな時間の中でこの事件のことを振り返ると、いろんな
感慨が去来します。

いま裁判員制度の実施を目前に控えて、鹿児島の選挙違反事件をはじめ
他の事件でも勾留下の被疑者の問題が注目されるようになってきました
が、万が一自分が被疑者として取調べを受けても、やっていなければ断
固拒否して容疑を認めなければすむことだとお思いの方もおられるでし
ょう。私も自分が取調べを受けるまではそう思っていました。

ところが、世間から完全に遮断された密室の中に閉じ込められてしまう
と、その考えはいっぺんに吹き飛んでしまいました。罪を認めさせよう
と迫ってくる取調官と被疑者とでは最初から対等な立場でないのです。
取調室は事件の真相を究明する場でなく、取調官の意に沿う調書が作ら
れる場でした。

この密室の中には人の心を狂わす魔物が潜んでいるとでも申しましょう
か、取調官の理性をも狂わすほどの異常な空気が存在するのです。そこ
では司法の正義や被疑者の人権に対する意識など消えうせてしまうので
す。それが取調室という密室の恐怖なのです。

私の経験では、取調べを受けた側の私だけでなく、取調べを行った検事
も精神的に追い詰められて極限状態に陥っていたように見えました。取
調べをする立場にとっては、真実がどうであろうと逮捕したからには勾
留期限内に自白調書を作らなければならないという極度のプレッシャー
との葛藤だったのではなかったかと思います。

それを跳ね除けるだけの精神力と覚悟がないと理性や正義を貫く心に狂
いが生じてくる。誰も見ていない、誰も邪魔する者がいないという密室
の中では、最初は小さな暴走であっても、いったん暴走をし始めると正
義や人権などの意識は吹っ飛びブレーキが利かなくなってしまい、最後
は誰にも暴走が止められなくなってしまう。冷静になった時に初めて自
分が犯した罪に気づき、本当のことを誰にも話せずに嘘で嘘を塗り固め
ていく罪悪感に一生苦しまなければならなくなる……私はそう思います。

もちろん、自分が罪に落として相手からも憎しみや怒りを向けられて、
二重の重い十字架を背負って生きていかなければならないのです。この
苦しみから一生逃れられないと思います。

取調室という密室の中には人の醜さや弱さ、怒り、憎しみが充満してい
るのです。冤罪事件では取調べを受けた者の苦しみだけが報じられます
が、その裏側では違法な取調べを行った取調官にも苦しみがもたらされ
ているのです。私を取調べた検事の行為は決して許されるべきものでは
ありません。しかし、人間として誠意ある謝罪をしてもらえたら私の心
の傷は癒えていくのかも知れませんが、それもありません。こうして、
取調べを受けた者も取調べを行った者も一生苦しみ続けるのです。

心を狂わせていく密室に本来の正義を取り戻すためには暴走を喰い止め
るブレーキが必要です。そのブレーキの役割を果たすのが取調べの可視
化ではないでしょうか。可視化によって罪のない人間に対する冤罪を防
ぐことができ、取調官自身をも違法な取調べによる苦しみから救うこと
ができると私は考えます。密室の中では無実の人間を犯人にしてしまう
ことは簡単なのです。

今の取調べの手法では冤罪事件が今後も起こりえることは間違いないと
思います。密室の中で無実の人間がやすやすと犯人にされてしまう恐怖
と、法廷で供述の任意性が争われて「そのような取調べはしていません」
と目の前で嘘を証言されることで受ける二重三重の苦しみを避けるため
にも、今こそ私たちは知恵を出し合う必要があるのではないでしょうか。
今、私はやっと穏やかな時間を取り戻しましたが、私の場合は幸いにも
取調べの実態を法廷で証明することができたからです。

しかし、密室の中で行われる異常な取調べの実態を証明できずに無実で
ありながら罪に落とされて苦しんでいる人たちが多くいるのです。自白
偏重の司法の下では罪のない人間が犯人とされてしまい、本人だけでな
くその家族の人生も狂わされているのです。

この本は、私が経験した取調べの実態や、裁判を闘った家族の苦しみを
息子の目から描いたものですが、私たちの苦しい経験が少しでも違法捜
査や冤罪事件の防止につながることを心より願っております。









閉じる コメント(4)

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アジカンさんのブログで知りました 簡単な言葉ではすまないと思うのですが 本当に良かった 良かったですね 息子さんの立派な行動に頭が下がります どうぞお体に気をつけられて お過ごし下さいませ

2008/8/22(金) 午前 1:01 YumimI

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youjiyumi415さん、ご訪問ありがとうございます。
裁判は苦しみをともなううえに、無実の人間が犯人にされていくという理不尽な行為。まさに人権を無視した行為です。しかも、無実を勝ち取っても何の謝罪もなく保障もない・・・闘い終わって「今までの五年間は何だったの?」と言いたくなります。空白の五年間・・・何とか埋めようと頑張っています。これからもよろしくお願いします。

2008/8/22(金) 午後 2:49 Fight

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もう20年くらい前赤い車に乗ってる時似た車の事故があったらしく近所交番から 「車のこの傷はいつのかとか 色々聴かれ 下手だからいつ擦ったか判らないし 昨日は車運転してません」と答えた しかしなんだか疑われて不気味に感じた 次の日えんじの車が逮捕されて新聞に掲載されていたが 警察は結末の連絡もないし お詫びも無い
失礼気周り無い態度にいまだに腹がたつし 冤罪があると思うとぞーとする

2008/8/22(金) 午後 8:17 [ kou*sub*sa*p*ant_l*nd ]

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kou*sub*sa*p*ant_l*ndさん、コメントありがとうございます。こうやってみんなが自分の体験や目にしたことを語るだけでも、司法や裁判が身近なものになっていくと思います。ありがとうございます。

2008/8/22(金) 午後 8:30 Fight


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