『いつか春が』執筆日記

波乱に満ちた人生。夢に向かって挑戦する男のドキュメントストーリー。

物語:続「いつか春が」

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     「続・いつか春が」

第12話 聞き込みリスト

健一郎の携帯電話の着信音が響いた。
健一郎は誰からだろうと画面を覗き込むと困惑の表情を浮か
べた。
電話の相手は某役所の担当者からだった。
「副島さん、今度うち(役所)へいつ見えられますか。この
プロジェクトは今までにない事業ですし、私たちも楽しみに
していますよ」
先日、健一郎は裁判に専念するために、このプロジェクトを
自分から降ろさせてもらった。
担当していた役所には、そのことがまだ伝えられていないよう
だった。

健一郎は自分が仕事を途中で放り出したことで、事務局だけでなく
役所の担当者にも迷惑をかけていることが分かり胸が痛んだ。
「○○さん、じつはですね・・・」
健一郎は裁判のことを話そうかと思い、「裁判」という言葉が喉まで
出かかったが話すのをやめた。
どうせ理解してもらえないだろうし、自分を選んでくれた事務局に
これ以上迷惑をかけてはならないと思った。

「申し訳ありません。じつは、今度いつ行けるかまだ計画が決まって
いないのですよ。申し訳ありませんが事務局に聞いてみて下さい」
健一郎は拳を握りしめながら、感情を押し殺して素っ気なく答えた。
「そうですか、分かりました。でも楽しみですよ。これからも
アドバイスをお願いしますね」
「そうですか・・・。分かりました」
役所の担当者が自分を必要としてくれていることが嬉しかったが、
心苦しさと申し訳ない気持ちで何も言えなかった。

健一郎は再び裁判という闘いの世界に引き戻されていく現実が悔し
かった。せっかく三年ぶりに自分のフィールドに戻ることが出来た。
しかも、知事の肝いりでスタートした重要なプロジェクトの一員に
選出されて、何としてでもこのプロジェクトを成功させようと燃えて
いた。
健一郎はこの三ヶ月あまり、空白の三年間という時間を埋めるかの
ように仕事に没頭していた。せっかくのチャンスを途中で投げ出す
結果になり、健一郎にとっては後ろ髪を引かれるような想いで悔し
かった。
「検察が一審に続き、今度もこんなでたらめなことをしなければ、
俺だってこの仕事を続けることができたのに・・・」

健一郎は年老いた両親のことを思うと、やはり裁判という闘いの場に
戻るしかなかった。

控訴審裁判の初公判に向けて、健一郎、勘三、静子の三人は、福岡
高検が出してきた裁判資料の内容を慎重に確認していく日々が続いた。
同時に私たちは検察の動きを探るために、検察に関する情報収集を
誰にも気づかれないように開始した。

佐賀地裁での一審無罪判決の直後から、検察の動きがおかしいとの
情報は既につかんでいた。融資に関係した当時の理事や職員が再び
次々と検察庁に呼び出されて事情聴取を受けているという噂を耳に
していた。
検察が判決に事実誤認があるとして、最初はいったい何を調べている
のか分からなかったが、趣意書の内容を見てアリバイを調べている
ことが分かった。
今回、無罪判決の後に検察から取調べを受けたとして、名前があがった
関係者の数は既に五十名近くにのぼっていた。
しかも、関係者への取調べは今も続いているようだった。
逮捕から三年、検察は無罪判決を受けて初めて勘三の当日のアリバイ
捜査を開始した。

「あなた、検察はやはり八年前のあなたのアリバイを調べている
みたいね」
「ああ、そがんのごたるな。趣意書でも検察は俺のアリバイは嘘だと
書いているし、ほんなこと頭にくるばい。まったく、どっちが嘘を
ついているとか」

趣意書を読めば読むほど、私たちは検察への怒りがこみ上げてきた。
「お父さん、お母さん。とにかく検察の嘘を暴かんと大変なことに
なるよ。判決がひっくり返されてしまうよ。このままではどうする
こともできないし、取調べを受けた人たちに話を聞いてみよう」

健一郎は冷静だった。
この三年の間に息子は探偵顔負けの証拠や証人探しの方法を身に
つけていた。
「これが今回、検察に取調べを受けたと思われる人のリストばってん、
よく見て。まず最初にこちらに協力してくれる可能性が高い人に印を
つけてよ。その人たちから聞き込みを開始するよ」
息子はいつのまに作ったのか、既に関係者のリストを作っていた。

「お父さん、この人はどうね。協力してくれるやろうか」
健一郎はリストに書き込まれた一人一人を
「うーん・・・彼は事件を仕組んだ告発グループのメンバーと裏でつながっ
ているかも知れん。接触をはかるのは危なかばい」
「じゃあ、この人はどうね」
「ダメダメ、検察に協力して嘘の証言ばしとる。危なかばい」
慎重に聞き込み対象者を絞り込んでいく息子と夫。
私たちの検察との控訴審の闘いは、こうして始まった。

                つづく

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

久しぶりのブログの更新です。
交通事故のあと疲れがたまり体調がすぐれませんでしたが、それでも
破損した車を整備工場へ運んだり、私のほうの保険会社と連絡を取ったり
していましたが、あとは保険会社に任せるしかありません。
車の事故のほうは、相手側が保険がないので代車も自己負担となるとのことで
今は車がない状態です。本当に不便ですね。

某ラジオ局の記者から取材の依頼がありました。
本を読んだとのことで、冤罪が家族の人生や人権にどんな影響を及ぼすのか
取材したいとのことです。
事前に電話での取材がありました。
「無罪判決のあと周囲はどう変わりましたか」
「別に何も変わりません」
「良かったねとお祝いの連絡が殺到したのでしょう?」
「私自身には特に何も。数名から電話がありましたが静かでしたよ。私が裁判に
ここまで関わっていたことは誰にも話していませんでしたからね」
「なぜですか?」
「罠を仕組んだ連中がそのままだったし、何をするか分からないので危険でした
からね。それに検察もどんな圧力をかけてくるのか分からなかったので、他の人を
巻き込むわけにもいきませんし、誰にも気づかれないように秘密裏に証拠探しや
証人探しの調査をしていました」
「そこまでしてですか・・・」
「皆さんは権力の怖さを知らないからですよ。恐怖でしたよ。黒でも白にして
しまう権力の恐ろしさ・・・どんな危険があるのか分からなかったし。だから誰にも
言わずに単独で秘密裏に行動していました」

記者は驚いているようだったが、権力と闘うことは恐怖であり、人生をかけて
闘う覚悟がなければ権力と闘うことなどできません。それに権力との闘いに
人権など存在しません。権力で人権を奪うことで、黒を白にしてしまうことが
できるのです。
「副島さんにとって人権とは何でしょうか」
「人間として普通の暮らしができる権利・・・それが人権ではないでしょうか。
人権が踏みにじられると偏見や差別が生まれ、孤独と人間不信だけが膨らんで
いきます。誰を信じていいのか分からなくなりますよ」
こんな感じで記者との電話越しの会話が続きましたが、続きは今日の午後
直接に記者と会って話すことになりました。

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本当の人権は守られているのだろうか…。

人として普通の生活をしていくことの難しさ…。


事故車の代金を直接、相手に請求できないかしら…。

とにかく、カラダが資本!焦らずに、時を待ってください。

2008/10/22(水) 午前 7:17 [ いとしのフィート ]

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しばらくブログから離れていましたが、
フィートさん、いつもありがとうございます。
あとは保険会社に任せますよ。
コメントをいただきながら返事が遅くなりすみませんでした。

2008/10/22(水) 午前 7:39 Fight


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