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昨日、記者は書店から買ってきたのか僕の本を片手に持ちながら、待ち合わせ場所に指定したホテルのロビーに現れた。
たしか五年前にテレビ朝日のプロデューサーと初めて会った時もこの場所だった。当時はまだ裁判の最中で父の無実を必死でマスコミに訴えていた頃だった。
あれから五年…父の無実を裁判で証明することができたが、私の生活は相変わらず何も変えることが出来ずにいる。
事件に巻き込まれた家族のその苦悩についての取材だった。本の取材ではなかった(笑)
父が逮捕されて犯人視された中で当時、家族は何を思い、事件によって家族の人生はどう変わっていったのか…仕事への影響は?収入はどうなったか?なぜ仕事を捨ててまで事件の真相を暴こうと闘ったのか?周囲との人間関係は?無罪を勝ち取り冤罪事件であることが証明されたが生活は元に戻ったのか?
記者は一応の配慮を示しながらも事件によって私の人生がどう変わっていったのかを尋ねた。仕事は事件直後からキャンセルが相次ぎ目の前が真っ暗になったこと。仕事がなくなり経営していた会社を整理して社員を解雇したこと。父の無実を証明するために夜の工事現場で働きながら検察の嘘を暴いていったのは執念だったこと。百キロの道のりを一人で歩いたのは裁判の流れを変えたかったしワラにもすがる思いで衝動的に歩き始めたこと。
父の無実を証明できたが元の生活に戻れずにもがいていること。ありのままの今の生活を話した。
でもまだまだ人生をあきらめていない今の気持ちも伝えた。事件によって失ったものは確かに大きいが、私はまだ再起をめざして頑張っている。今はまだ苦境から抜け出せずにいるが、頑張って普通の生活に戻りますよと記者に伝えた。
自分の手で人生を変えてみせる…私の今の正直な気持ちだ。
笑顔で記者を見送った。
あきらめない限り何とかなる…うん、そうだとも。夕焼け空を眺めながら心に誓った。
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