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私はこの七年間の間に5件の裁判に携わりました。
刑事裁判が3件、民事裁判が2件。
3件の裁判が同時進行で進むこともありました。
父の冤罪事件の裁判だけでなく、知人の事故の刑事裁判にも
自ら協力させてほしいと申し出たのです。どうしても釈然とし
ない部分があり、自分で事故現場を調査してみました。
その結果、私の嫌な予感は的中し、事実と異なる内容が調書に
作られていることを発見したのです。「やっぱり・・・またか」
なぜこれほどまでに、事実と異なる調書が作られてしまうのか。
それは現在の刑事裁判の制度そのものに問題があるからではな
いでしょうか。実際に刑事裁判に関わってみて初めて分かった
ことがたくさんあります。昨日、ご紹介した雑誌「冤罪 File」
に現在の裁判について、わかりやすい説明がありましたので、
ご紹介させていただきます。
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「冤罪 File」発刊にあたって−
『ジャスティス』 長井ひろし
〜 前 略 〜
日本の裁判には正義(ジャスティス)があるのでしょうか?
我が国は先進国の中でも異常なほど長い拘留期間と代用監獄が
国連の人権委員会でも問題になっていますが、もしまったく無
実の人間が間違って逮捕・拘留されたとしたら、その被疑者は
密室の中で隣に弁護士も呼べずに何日も何日も朝から晩まで数
時間にわたって取調べを受ける。
被疑者はたったひとり、相手の捜査員は何人も入れ替わり立ち
替わりやってきて、脅す、威嚇する。また警察官の作文どおり
に容疑を認めなければ、鹿児島志布志事件の如くいつまでも拘
留されるので、これで10人中9人は、やってもいない容疑事
実をまず認めてしまいます。そして一度間違った供述をしてし
まったら、裁判でそれが覆ることはほとんどありません。
加えて日本の裁判では、検察側は自分たちに都合の良い証拠し
か出さなくてもよいことになっています。
これは多くの人々があまり知らないことですが、極端を言えば、
被疑者に「有罪となり得ない確たる証拠」があったとしても、
それを黙殺し法廷に出さなくて良いことになっているのです。
弁護側は、もちろん検察が何の証拠を隠しているかなど皆目検
討もつかないので、その証拠自体を争うことはできません。
つまり弁護側は検察側の提示したカードでしか勝負できないこ
とになっているのです。そして、万が一にも弁護側が被疑者の
「有罪となり得ない確たる証拠」をみつけ、裁判官を通してそ
の開示を求めても、検察側は「不見当」、つまり見当たらない
のひとことで一蹴し、裁判官はそのまま不利な裁判を続行する
のです。
また、捜査当局や検察側は多くの人員を動員し、科学捜査など
のあらゆる手法を駆使して被疑者の有罪を無理矢理にもつくり
上げようとします。この捜査員の人件費も科学捜査の調査や依
頼も、もちろん国民の税金が使われることになります。
〜 中 略 〜
ここで問題なのは、「人員」と「お金」の問題です。検察側は
多くの「人員」と「税金」を使っていくらでも鑑定を依頼でき
る。弁護側は通常弁護士ひとり、多くて数人、そして検察側が
提出してきた鑑定結果を覆す鑑定を新たに研究機関その他に依
頼するとすれば、それこそ膨大な費用がかかる。
まずもって証拠物の鑑定にしても、捜査当局や検察側がその証
拠を握っていて開示しない場合もあるので弁護側は鑑定のしよ
うがない。たとえ弁護側が鑑定しようとしても、その費用はも
ちろん国は出してくれません。
交通鑑定だって、私有地の道路を借り車数台を用意し、その他
諸々の鑑定を行うとすればそれこそ何百万円もかかる。当然、
その「お金」は被告が自ら捻出しなければなりません。
裁判に実際に携わったことの無い人は、おおかた「裁判とは公正
なもので、真実を明らかにしてくれるところだろう」と何はなし
に考えていることでしょう。
しかし、裁判をサッカー試合にたとえてみて、あなたが試合会場
にたまたま見学に行ってみたとします。
すると、その試合がいかに「いかさま試合」かということがよく
わかるでしょう。
検察側は総勢11名、これは何度もサッカーの試合を経験してきた
いわゆるプロフェッショナル集団。対する弁護側チームは足かせ
をされて動きもままならない、生まれてはじめてサッカーの試合
に引きずり出された被疑者ひとりと弁護士のゴールキーパーのふ
たりだけ。検察側チームはどんどんシュートを撃ってくるので弁
護士キーパーは右に左にひとりでシュートをかわさなければなら
ない。
被疑者は当然足かせをされているし、自分で外に出て無実を証明
することもできないので、パスも出来なければシュートも出来な
い。もう勝敗は決まったも同然です。
が、この試合には尚も一番恐ろしい事実が隠されています。仮に
も被疑者が、本当に、奇跡的に、シュートを決めたとします。
つまり明らかに無実であるという証拠証言が裁判官の前に提出さ
れたとする。見学席にいた聴衆は大喝采! すると・・・審判(裁
判官)がピーッと笛を吹き、オフサイドの旗をあげる。
今のシュートは無効だと言う。
実際、弁護側が多額の費用と手間をかけて提出した、いわゆる「
被告の有罪を覆すに足る決定的な証拠」をいとも簡単に無視され
ることが非常に多いのです。
一度でもこのサッカー試合を見に行った人ならば、その多くの人が
こう叫ぶに違いありません。「まさか!フェアじゃない!」と。
これが日本の裁判の実態です。
私はすべての被疑者が冤罪だとは思わないし、警察官、検察官の
すべてが何の罪も無い人を罪人にしたてあげるとも思いません。
しかし、多くのいかさま審判が幅を利かせるアンフェアなコートで
(法廷)で冤罪を生み出していることだけは確かです。
「冤罪 file」No.03 2008.9月号(季刊)より
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私が経験した刑事裁判は、まさにそのとおりでした。
こちらの弁護側チームは足かせをされた年老いた父と母。日野弁護士が
ゴールキーパーで、山口弁護士に私が加わった総勢5名のチーム。
ガランとしたスタンドで兄や弟、家族がスタンドで声援をおくり、検察側
のスタンドは野次馬まで加わった大応援団で埋め尽くされ、ブラスバンド
まで揃えている。孤立無援・・・最初はそんな試合が続いていました。
泣きたくなるどころか、次々にシュートが撃たれ怖くて夜も眠れないほど
でした。でも、気持ちだけは「絶対に負けない!あきらめない!」と、
徹底抗戦していました。
私は人前から姿を消して、密かに動き出しましたが、誰も私の行動に
気づかなかったのも助かりました。
証拠や証人探しを妨害されないように、人の目を気にしながら隠れて
こっそりと血眼になって探し回った日々が今でも鮮明に思い出されます。
無実の証拠や証人探しは、被告自らまたは家族で行うしかないのです。
検察が押収した膨大な証拠の中に、どんな真実が隠されているのか・・・
まさに雲をつかむような思いで、本当に必死でした。寝ても覚めても推理
を働かせて事件を分析する。
父の裁判は、いい判官に当たったのか、それとも無視できないだけの決定
的な証拠を法廷に提出できたから無罪を勝ち取ることが出来たのか。
さて、どちらでしょうか。
これが、本当の刑事裁判です。
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