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「続・いつか春が」 第8話 「待ちますよ」 目の前に座るテレビ朝日の原プロデューサー。 「事件の真相を伝えるために、ぜひ番組を作らせてください」 「それはそうですが・・・」 健一郎は迷った。 「副島さんたち御家族の信用の回復をはかるためにも、事件の 真相を世間にきちんと公表すべきですよ」 「それはそうですが・・・私だってその想いは変わりませんよ。 たぶん、この事件の真相が闇に葬られたままでは父と同じように 無実の人間が犯人にされてしまうかもしれませんしね。 でも・・・」 「でも?」 「でも・・・ご存知のように我々は検察に控訴されて、今から 闘いが始まろうとしているのです。いったい検察が何を企んで いるのかまったく分からないし不気味です。放送によって 何かとんでもないことが起きてしまうと、弁護士の先生たちに 迷惑をかけてしまうし・・・それが怖いのですよ」 原は健一郎の気持ちを聞くとそのまま黙り込んでしまった。 せっかくの申し入れだったが、健一郎はこれで番組制作の話は 終わりだと思った。 「副島さん、私たちは待ちますよ」 原がぽつりとつぶやいた。 「えっ?・・・」 「副島さんたちが検察を恐れる気持ちはよく分かります。まさか と思うようなことを経験されてきたわけですし、番組の放送に よって検察が何を仕掛けてくるのか分からないという恐怖を お持ちなのは当然でしょう。それならば控訴審が終わるまで お待ちしますよ」 「・・・ありがとうございます。でも裁判はまだこれからだし、 いつ終わるのかも分かりませんよ。それに一審では無罪を勝ち 取ることができましたが、二審でもはたして勝てるのか分かり ませんよ」 健一郎は今まで誰にも話したことがなかった不安を正直に打ち 明けた。 「裁判が終わるまで待ちます。判決がどうであろうと、検察が 無実のお父様を犯人にしようとしたことは事実です。このことを 世間に伝えることで司法に警鐘をならすことができると思います」 原の言葉は健一郎の心をふるわせた。 「原さん、本当にそれでいいのですか」 「副島さん、頑張ってください。私たちも応援しますよ」 「ありがとうございます」 こうしてテレビ朝日の「ザ・スクープ」は、裁判が終わるまで番組 製作を待つことになった。結局、控訴審が終わり事件を検証した 番組を全国に放送したのは二年後の平成18年だった。 原が東京に帰ったあとも、検察の動きはつかめないままだった。 控訴決定から三ヶ月、そして四ヶ月目を迎えた六月。 その頃、健一郎は鹿児島にいた。 鹿児島の町おこしに携わって車を走らせていた。 「おかしい・・・検察の動きがまったくつかめない。いったい何を しているのだろう。ここまで静かだと不気味だ・・・」 控訴から四ヶ月目に入り、健一郎だけでなく夫も私も胸騒ぎが
していた。 |

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