『いつか春が』執筆日記

波乱に満ちた人生。夢に向かって挑戦する男のドキュメントストーリー。

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  第22話 挫折して強くなる 「求職男」〜再就職への道〜


ホームヘルパー養成講座の申し込み手続きを終えた。

穏やかな気持ちで新しい人生に向けての部屋の片付けに取りかかった。

スピーカーからはMichael Franksのささやくような歌声にピアノとサックスの
音色がメロディを奏でている。
机の上には集めてきた資料や雑誌が山積み。
ほこりを被ったままのCDや書きかけのレポート、原稿が無造作に散らばっている。
これが普段の自分だ。

書庫に閉まっていた古い専門書や報告書の原稿や数々の資料を段ボール箱に
詰めこむ。その中から、かつての自分の新聞記事や雑誌が出てくると、ふっと
手を止めて見入ってしまう。
(へー、俺は昔はこんなことをしていたんだ)
まるで他人事のように、今では過去の懐かしい想い出。


私は昭和34年生まれのB型、4月で50歳になった。
人は人生の岐路に立った時、自分の人生を振り返るのかも知れない・・・。

自分は人から使われるよりも、経営者に向いているとずっと思い込んでいた。
自分の才能を過信していた。
やがてサラリーマン生活を捨てて、経営者としての道を歩み始めた。
身を粉にして働いた。新しい事業にも挑戦し、挑戦と失敗の連続だった。
やっと事業も軌道に乗り、さらに業務拡大をはかるため、新規事業の立ち上げを
スタートしようとしていた。40歳の時だった。突然、父が逮捕され仕事は
キャンセルの嵐。取引先と気まずい空気が漂い、やがて連絡が途絶えた。

仕事がなくなり決断を迫られた。
このままではみんなを道連れにして自滅してしまう。

会社を整理して、世間から身を隠しながらの国家権力との孤独な闘いが始まった。

いつか必ずカムバックしてみせる。

その想いを胸に、夜の工事現場から工場での夜勤のアルバイト生活へと。
この手で父の無実を証明して、必ず元の生活に戻ってみせる。
執念の事件の調査が続いた。

裁判とアルバイト生活の傍ら、その日に備えてITビジネスの起業を夢見て
水面下で準備を進めた。なけなしの金をはたいて新しいシステムも開発した。
これならいける!と、自信があった。

検察との闘いで一審、二審と無罪を勝ち取り父の無罪が確定。
冤罪事件であることを証明し、裁判が終わり、その時がやってきた。
起業するにしても当面の運転資金が必要だが、その資金も底をつき、協力してくれる
スタッフもいない。世間に背を向けてきたから仕方がない展開だった。
一人で起業を決意した。

かつての業界には戻りたくなかったので、別の業界での立ち上げを狙った。
なぜ以前の業界に戻らないのか?

「犯人の息子」

心無い人たちに浴びせられたこの言葉がいつも脳裏に焼きついていた。
信頼関係が一度壊れた中で、私も相手も何事もなかったかのように元の関係に
戻ることは出来なかった。
元の業界は長いブランクの間に時代が変わり、仕事のシステムもニーズも
変わっていた。いつの間にか時代は変わっていた。
自分が浦島太郎に思えた。

その直後、突然の悲劇が襲った。
命の尊さを知った・・・。
どんなに傷ついても生きていかなければならない苦しさを知った。
命や人の苦悩と向き合うようになった。

悲しみを乗り越えて再び動き始めた。
ITを活かした新しい起業、一人起業を開始した。
久しぶりにスーツに身を包み、新しい名刺に営業用のチラシ、パンフレットを抱え、
一人で街に飛び出した。

誰も私の過去など知らない。私は名前ではなく「業者さん」と呼ばれた。
「業者さんはお断りしています」「すみません、忙しいのでまたにして下さい」
「ただいま責任者は留守ですので」
事務所のインターホン越しに、つれない返事がかえってきた。
事務所の中にさえも入れてもらえず、門前払いなど当たり前だった。
額から汗が噴き出した。

かつての業界ならば、名刺を出せば肩書きが功を成して「どうぞ。ただいま上の者を
呼んでまいりますので」と丁寧に迎え入れてもらえたが、この業界では名前も実績も
ない私は全く相手にしてもらえなかった・・・信用がないことのみじめさを知った。
名刺を手に取り、いぶかしそうな面持ちで私を見る。
「少しだけでもお話を聞いて頂けないでしょうか」
「今、忙しいので」
「じゃあ、資料だけでも」
「あっ、はいはい」
受け取ったかと思うと資料はそのまま机の上に置かれた。

挫折という言葉が私を打ちのめした。
失敗を認めたくなかった。
あきらめきれずに資料一式を封筒に詰め、関係先へ四百通郵送した。
電話を待ったが、一件も反応はなかった。

再び打ちのめされた。

食事ものどを通らない日々が続いた。
自問自答する・・・冷静に自分を見つめなおした。

来る日も来る日も一人で悩んだ。
眠れない日々が続く。

自分は経営者に向いているのか、その能力はあるのか・・・。
過去の遠い記憶の糸をたぐりよせながら、自分の今までの生き方や自分の
性格を振り返った。
競技に例えるならば、私は個人競技で闘ってきた。
個人の能力や才能を活かせる活躍の場を求め続けてきた。人から見られる仕事に
対して、そのイメージに応えようと自分らしさを抑えていた。
自分の実力以上のレベルが求められた。時代のニーズをつかみ、さまざまな情報を
分析する。

今は学んだ知識や理論が記憶の向こうに消えかかっている。
自分への悔しさがにじんだ。
最初は長いブランクのせいだと思った。経営者としての資質のなさに気づき、別の
スタイルを模索した。

私に残されていたのは、体にしみついた人との関わりによる喜び。
人との出会いの中からアイデアを生み出し、現場でこそ今の自分を活かせる。
見せかけや突っ張って生きるよりも本当の自分に戻ろう。

個人競技でなく団体競技をめざそうと考えた。
経営者よりも、それをサポートする役が自分に向いていることにやっと気づいた。
野球に例えるならば、球団という組織の中で選手からコーチや監督をめざし、
その経験を活かして最後はフロントで手腕を発揮する。

そこに気づき、組織の中でこそ自分の力を発揮できると就職を決意したが、
これまた失敗の連続。不採用の通知を受け取るたびに自信をなくし、
再び挫折を味わう。

一度、人生の歯車が狂ってしまうと何をやってもうまくいかない・・・。

あきらめそうになり、もう何でもいいやと自分を見失いそうになった。
挫折の中でもう一度自分と向き合う。

仕事をしている自分のイメージ・・・真っ先にどんな場面を想像するかを考えた。
仲間に囲まれた自分がいて、仲間と一緒に笑う自分。
父や母の面影を重ねながらの人々の笑顔。
自分の居場所が少しずつ見えてきた。
心の中に命の尊さという言葉が、しっかりと刻まれていることに気づいた。

仲間と一緒に仕事できる楽しさ。楽しいことばかりじゃないのは分かっているが、
一人じゃない喜びがある。
人の心をあたためることの素晴らしさ・・・介護という仕事が浮かんできた。
現場を運営している介護企業の実態が見えてきた。
今まで携わってきたノウハウも活かせることに気づいた。

介護の世界では定年が65歳の企業もある。あと15年あればいろんなことに挑戦できる。
五十歳という年齢は、介護の世界では決して若くはないが、真ん中を少し
過ぎた位だと聞いた。この年齢でもまだまだ活躍の場はある。
もちろん体力の限界があり、それに合わせて現場の経験を活かした場所へと
ステップアップしていけばいい。その努力は惜しまない。
常に学ぶことはいくらでもある。
遅咲きのルーキーの心境だ。

失敗や挫折の数だけ多くのことを学んだ。
挫折を経験するたびに強くなる自分。ベストを尽くした結果だから恥じることないんだ。
人生や命と向き合うとき、自分の数多くの失敗や挫折の経験が生きてくる。
挫折や失敗を経験し、自分の弱さを認めた時に人間は強くなれる・・・そんな気がする。
こうして自分の失敗を素直に語れるようになったということは、自分の中で
何かが変わったからだろう。今は気負いもない。
表情にも心にも明るさを取り戻している・・・と思う。

多くの人たちの人生を見届け、「おつかれさまでした」と手を振ってあげる。
そんな人生との出会いも素晴らしいかも。

最高の人生や仕事に いつめぐり逢うのかを 私たちはいつも知らない・・・。

♪縦の糸はあなた 横の糸は私
 逢うべき糸に 出逢えることを 
 人は「仕合わせ」と呼びます・・・
   
     中島みゆき ♪「糸」より

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