『いつか春が』執筆日記

波乱に満ちた人生。夢に向かって挑戦する男のドキュメントストーリー。

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  第29話 決断の時 「求職男」〜再就職への道〜


いよいよ実習がスタートする。
私は畳の上に寝っころがると、手足を投げ出して大の字になった。

「・・・・・・」

天井を見上げながら、あの日のことを考えた。
あの時、決断しなかったならば・・・何も変わっていなかったはずだ。

年の瀬が迫った昨年の十二月。
「やあ元気!就職活動はどう?」
電話の声は同い年の旧友トッコさんだった。

「あっ、うん、まあ・・・全滅だよ。不採用の連続でね、面接にもこぎつけない。
やっぱり雇用不況だし、それに年齢でボツになるみたい」
「そっか、年齢ね・・・たしかに年齢的には難しいよね。じゃあ、どうすんの?」
「別に仕事を選好みしているわけじゃないけどね。仕方ないから今度はもっと
条件を下げて探してみようと。今はそれしか方法がないしね・・・」

正直、今の状況では手の打ちようがない。
悔しいが自分でもどうしていいのか分からなかった。

「あのさ、今までいろいろ考えて探してみたんでしょ。それで現実の厳しさが
分かったはずでしょ。じゃあ、もういいかげんに目を覚ましなさいよ。
年齢が問題ならば、年齢が関係ない仕事を探せばいいじゃん。簡単じゃない」
トッコさんの声が苛立ってくるのが分かった。

「そんなあ・・・そんなこと言ったって、自分の人生がかかっているんだよ。
慎重になるのは当然だろ」
「あのさ、今までいいかげんな気持ちで仕事を探して応募したんじゃないでしょ?
考えに考えた上で応募してダメだったんでしょ。今までと同じ考えで仕事探しても、
時間だけが過ぎてゆきどんどん追い込まれていくだけだよ。こうなったら
思い切りが必要よ」
「そんなこと言われなくても分かってるよ!分かっているから悩むし、いろいろ
考えているんだよ(なぜ決めつけるんだよ。まだ分からないじゃないか)」
彼女の言葉にムッとした。
売り言葉に買い言葉とはこのことだ。

「考えたならばあとは実行すればいいじゃん。慎重に考えてる考えていると
言いながら、いつまでも同じことの繰り返しよ。今の年齢で受け入れてくれる
仕事を探しなさいよ。男ならウダウダ言わずに、まずは飛び込んでみたら
いいじゃない!」
「そう言うけど・・・簡単にはいかないよ。やはり慎重に考えないと後で後悔
することになるしさ(今までの経歴を少しでも活かせる仕事に就きたいと
思うのは当然だろ)」

「何が後悔よ!このまま時間だけが過ぎて、あとで『やっぱりダメだった。
あの時、思い切って変わっていたら』と後悔するよりマシじゃない。
今、変わらなきゃダメなんだよ。それが分からないの?」
「分かっているけど・・・でも、やっぱり・・・(俺は妥協したくないんだよ)」

「あー、やだやだ!煮えきれないね、君は。結局、君は自分の面子しか考えて
いないのよ。今、意識を変えなければ何も変わらないよ。
裁判では検察相手にあれだけ闘ったくせに、怖いの?それともプライド?
なぜ変わらないのよ」
「・・・そういうわけじゃないけど・・・(俺の気持ちなんて君には分かりっこないよ)」
「もういい!あたしは忙しいよ。じゃあね」
「ちょっと!あのさっ」

≪ブチッ!ツー・・・ツー・・・≫

電話が切れた。

(いったい何なんだよ、今の電話は)
私は興奮した気持ちを鎮めようと、唇を噛みながら外に出た、
冬の冷たい空気が、まるで冷水を浴びせたように私を包んだ。

砂を噛むようなジリジリとした思いに拳を握り締めながら、
あてもなく歩いた。
(くそっ!言われなくても分かっている、分かっているよ)
さっきの彼女の言葉が、心の奥の誰にもふれられたくない一番嫌な場所に、
突き刺さっていた。


彼女の言葉に反論しようとしても何も言えなかった。
悔しいけれど彼女の言葉は真実で、私に現実を突きつけていた。

『自分自身が変わらなければ何も変わらない』
彼女が私に放った言葉は、私自身が言い続けてきた言葉そのものだった。

現実を受け入れるには自分が変わるしかない・・・・・・今が決断の時か。

部屋に戻った私は一人で考え続けた。
中高年の再就職は自我との葛藤の連続だ。
引きこもり状態となり焦りだけが膨らんでいく。
理想と現実とのギャップに戸惑い落胆する。

残された選択肢は限られている。
それなのに、分かってはいるものの最初の一歩がなかなか踏み出せない。
自分では踏み出したつもりでも、実際は前に進めないままそこで立ち往生してしまう。
先の見えない不安の中で、自分は何を求めているのだろう?
本当は何を探しているのだろう?

変えよう、変わろうと思いながらも、最後の決断で立ち止まってしまう自分。
条件や職種で仕事を選ぶよりも、年齢で受け入れてもらえる業種の中から
自分に合った仕事を探す・・・。
私は数字を追いかける仕事よりも、本当は人間と関わる仕事がしたいんだ。

私はこのことにやっと気づいた。

あの時の電話、私にとっての『決断の時』だった。

超えてゆけそこを 越えてゆけそれを・・・・

トッコさん、ありがとう。

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