『いつか春が』執筆日記

波乱に満ちた人生。夢に向かって挑戦する男のドキュメントストーリー。

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    第35話 最後に笑えれば「求職男」〜再就職への道〜


実習を終えてホームヘルパー二級の資格を取得した。
僕の夢を実現するためには本当は更にその上の資格を取得しなければ
ならない。しかし、実務経験を一年から三年を積まないと上の資格へ
挑戦する資格が得られない。

今は二級の資格しかないが、まずは現場に入り実務経験を積まなければ
ならない。とりあえず介護業界に入る切符だけは手にした。
問題はこの先だ。
夢を叶えるためにはパートや契約社員では改革に取り組めない。
どうゆう方法で就職先を見つけるか・・・。

就職活動を再開しようとした矢先、先に就職活動を開始していた「おやじ組」の
川村さんから連絡があった。期待に胸をふくらませて就職活動を開始したが、
不採用の連続。
話を聞いてほしいので福岡在住の三人で集まろうという誘いだった。


待ち合わせのファミレスに行くと、二人が浮かない顔で僕を待っていた。

「中島さん、介護業界ならば人手不足だし就職は百パーセント間違いないと
聞いていたけど、ありゃ嘘ばい。もう十社も断られたよ」
席に着くや開口一番、川村さんが僕に悔しさをぶつけた。
「川村さん、いったいどうしたんですか?」
「実習先で中高年男性が働く姿を誰も見なかったと、みんな言いよったけど
理由が分かったよ。俺たち中年男性は採用の対象外やけんよ。訪問介護は家事が
出来るおばちゃんヘルパーが多いし、施設は体力がある若い男女ばかりだし、
デイサービスも女性ばかり。結局、俺たちのような中年おやじはどこも採用して
くれんとよ!」
川村さんはまくしたてるように話すと、コーヒーを一気に飲み干した。

隣でタバコをふかしていた堤さんが口を開いた。
「介護業界は人手不足だけど、なぜ人手不足だと思います?」
「そりゃあ仕事が厳しくて給料も安かけん、誰でん敬遠するからやなかとね。
求人を見るとヘルパー二級の手取りで十万から良くて十五万円くらいもんね。
退職金もボーナスもない会社もあるしね」
「そうですね。命に関る仕事であり、これだけハードな仕事なのに・・・安すぎますね。
でも、なぜ賃金が安いか考えたことありますか?」
「うーん・・・なぜね?そこまでは・・・考えんやったよ」
僕は川村さんと堤さんの会話を黙って聞いていた。

「まず財源の問題があります。医療保険は二十歳くらいから全員が徴収
されますが、介護保険は四十歳以上の人からだけ徴収されます。この時点で
医療保険に比べて財源が大幅に少ないのですよ。しかも徴収された保険料を
もとに市町村単位で介護サービスを運営する仕組みだから、人口や老人の
比率によって財源は変わるので地域の保険料もまちまちですよ」

「へえー、そうか」
「しかも予想していた以上に高齢化が進み、介護サービスを受けようとする
老人の数が急増して財源が破綻寸前なのですよ。つまり、介護サービスの素
となる介護保険によって集められた財源がパンク寸前なのです。政府や行政は
今までは介護サービスを利用して家族の負担を減らそうしていましたが、
今度はこぞって介護サービスの利用を減らそうとしているのですよ。介護は
基本的に家族でやるべきだと方針が変わってしまったのですよ。
事業所や施設から請求される介護報酬額を値下げしたので、そのために事業所や
施設の運営が厳しくなり、ヘルパーさんの賃金も安くなる一方なのですよ」

まさに堤さんが説明したとおりだ。
「去年の秋からの雇用不況も重なって正社員での採用が少なくなり、代わりに
パートや契約社員での採用が急増しているみたいですよ」
僕が補足を加えると二人はうなずいた。

「そうですよ。正社員としての雇用ができなくなり、パートや契約社員に切り替えて
ギリギリの運営をしている会社が増えていますね。僕も既に六社も断られました」
堤さんが悲しそうにつぶやいた。

「ヘルパーのパートの時給もどんどん下がり、去年は千円や九百円だったのが、
今では七百五十円が相場やもんね。資格が必要な専門職なのに他のアルバイトよりも
安かとは泣きたかね・・・あーあ」
川村さんがため息をついた。

「それと去年からの雇用不況で介護の雇用にも異変が生じてきたようですね。
こんな待遇じゃと生活できんと辞めていく人たちが多かったのが、今は不況だし我慢
して辞めなくなってきたようです。おまけに派遣切りや解雇された人たちが、介護の
世界に職を求めて集まってきているようですね」
私が調べてきたことを二人に説明した。

「あのね、俺の大学の後輩が熊本の施設で働いているので聞いてみたとよ。
そしたら熊本ではヘルパーを募集しても集まらんけれど、福岡は職を求めて
各地から人が集まってきたので、今まで敬遠されていた介護の仕事にも職を
求める人が増えているみたい。そうなると介護の仕事は体力が必要だし、
使うほうからすれば中年よりも若いもんのほうがよかしね」

さらに川村さんが話を続けた。
「後輩が言うたとよ。先輩みたいな中高年男性は介護タクシーや施設の送迎の
運転手、障害者施設などしかなかと思うよ、だって。介護の世界で頑張ろうと
思うたけれど、雇ってもらえんことにはね・・・。男性は募集していません、
年齢が若い人でないと無理、実務経験がないと無理ですと断られてばかりでね。
就職が見つかるまで他の仕事でバイトしようかと思うて、倉庫の仕分けの
アルバイトに応募したとよ。
ここも時給が下がり750円になっとったけれど、募集したら一日で40人が応募
してきたので履歴書で書類選考しますと言われたよ。
俺たち中年オヤジはどうすればよかとやろうかね・・・せっかく資格を取ったのに
雇ってもらえん。アルバイトでも中高年は敬遠されるし、俺たちは要らんもんと
同じよ」
僕は川村さんの言葉に何も言えなかった。

「僕も不採用の連続でガッカリですよ。働きたいと思っていても、どこからも
戦力として必要とされない現実・・・悲しくなりますね。これじゃあ家族を養うこと
なんて出来んですよ。あーあ・・・」
ため息をつきながら堤さんが僕に訊ねた。

「中島さんはどうするんですか?もっとも中島さんは最初から僕たちと違う目的を
持って介護の世界をめざしておられるしですね・・・中年男性の採用はここでも
難しいですよ。それでも挑戦しますか」

「中高年の雇用が厳しいのはどこも同じじゃないですか。とにかく就職活動を
開始しますよ。僕は今までの経験を生かせる会社に的をしぼって動いてみます。
求人の数が減り、正社員での採用も厳しくなってきたけれど、僕を必要としてくれる
施設や事業所があると信じて頑張ってみますよ」
僕にはそう答えるのが精一杯だった。

「そうね。俺は介護だけでなく他の業種も視野におきながら就職活動活動をして
みようかと思いよるよ。介護の世界で働きたいと思うても、人手不足でも雇って
もらえんなんて情けなかよ」
川村さんはすっかり自信をなくしていた。

三人で集まったものの不安がつのるばかりで、最後まで名案は浮かばなかった。

二人と別れた後、情けない帰り道だった。
僕の前途にも暗雲が立ちこめてきたことを感じ始めた。

(いかん、いかん。闘う前から弱気になっている。悔しいじゃないか、
今まで何のために頑張ってきたんだ)
僕は両手の手のひらを見つめながらつぶやいた。

(良さん、あなたが言っていたように介護の世界は半端じゃないね。
問題山積ですよ。でも頑張ってみるよ・・・どうか見守ってて下さい)

(いかんなあ。普通のやり方では就職は無理かもしれないな。実務経験もない
自分をどうやってアピールするか考えなくては・・・道は険しいけれど、何か
対策を練らなくては・・・)

僕はこれから再び就職戦線へと突入する。

焦る気持ちと不安を抱えながら広げた両手を握りしめた。
(最後に笑えればいい。弱気になるな。自分を信じろ!こんな時こそ笑おうじゃないか)

「ハハハ、今に見てろよ!」

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