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テレビ朝日『ザ・スクープスペシャル』 放送分を
ご覧になりたいかたは番組ホームページで動画配信
されています。
番組ホームページ⇒ http://www.tv-asahi.co.jp/scoop/
「いつか春が」完結編
〜11年目の謝罪〜
玄関を開けると一人の背広姿の男性が立っていた。
「!?・・・」
彼が訪れるのは分かっていたが、彼を見た瞬間言葉が出なかった。
11年ぶりの再会だった。
彼は無実の父を逮捕して起訴した検事。
密室の取調室で、手刀を振り上げて「ぶち殺すぞ!」と大声で
怒鳴りながら、嘘の自白調書を作った検事・・・。
父は苦しみ、死を持って身の潔白を晴らそうとさえした。
父は心に深い傷を負い、死ぬ間際まで取調べの恐怖の夢を今でも見ると
父は語っていた。父が逮捕・起訴されたことで、周囲の状況は一変し、
父の人生だけでなく私達家族の人生も変わってしまった。
彼のせいで・・・彼のせいで・・・彼を殺したいほど憎み、彼への復讐を心の支えに、
どんな苦難にも耐えながら裁判を闘ってきた。
彼や検察への憎しみだけが闘い続ける原動力だった。
殺したいほど憎んでいたあの時の検事が・・・今、目の前に。
抑えていた憎しみや怒りの感情が全身にこみあげてきた。
拳を握りしめる私。
「どうぞ・・・」
こみ上げてくる感情を抑えるのが精一杯で、それ以上言葉が出なかった。
仏壇に手を合わせる彼の後ろ姿を睨みながら次の言葉を探す私。
目を閉じると父の顔が浮かんだ。
父は何を望んでいたのだろうか。
もし、父がこの場にいたら彼に対して何と言うのだろうか・・・。
さまざまな想いが駆け巡った。
「お父様やご家族の皆様に多大なる苦痛と苦しみを与えてしまい、本当に
申し訳ございませんでした」
両手をついて、畳に頭がつくほどに謝罪する元検事。
無言で彼を見つめる母と私。
「・・・・どうぞ頭を上げてください」
法廷では傍聴席から検事席までの20mほど離れた距離でしか
彼を見ることが出来なかったが、その彼が今はすぐ目の前にいる。
「私はあなたを殺したいほど憎んでいました。初めてでした、人に対して
殺意を抱いたのは・・・」
「・・・・」
「私はあなた達がした事を許せません。父や私達家族が味わった苦しみや
怒りが分かりますか・・・あなた方検察によって人生を破壊されたのですよ。
世間の信用を失い、人間関係も壊れ、寝ても覚めても裁のことが頭から
離れず、10年という歳月をすべて裁判に費やさなければなりませんでした。
父は逮捕されて以来、最期まで孤独でした」
「・・・・・・」
「この苦しみが分かりますか?この10年間の苦しみは、どんなに忘れよう
としても忘れることなどできません。私も死ぬまで一生忘れることは出来ません」
「おっしゃるとおりだと思います」
「あなたが検事を辞める時に検察庁へ提出した文書を拝見しました。
そこには事件の真相が赤裸々に綴られていましたが、読んで『やっぱり
そうだったのか』と思いました。検察が隠していることを調べていくうちに、
この事件はあなたが一人でやった事ではなく、組織ぐるみでやったのだと
私も確信していました。あなたは上からの命令で、追い込まれてあんな
恐ろしい取調べをおこなったと。そうでしょう」
「・・・本当に申し訳ありませんでした」
「父を取り調べて、容疑を裏付けるものが何かありましたか?
何か出てきましたか?あなたが父を取り調べたのだから誰よりも一番
分かっていたでしょう?」
「はい。・・・何もありませんでした」
「それなのに何故父を起訴したのですか?いくら上からの命令だったとしても
なぜ反対しなかったのですか。それが司法の正義でしょう?逮捕する、
起訴するということは、人の人生がかかっているのですよ。父だけでなく
家族である私達の人生もかかっているのですよ。それほど大切なこと
なんですよ。人間だから誰でも過ちはあると思います。取調べをしたあなたが
父が無実であることは一番分かっていたはずです。それなのに、なぜ反対
しなかったのですか?」
「反対しました。私だけでなく全員反対しました」
「それなのに、なぜ父は起訴されたのですか」
「・・・おっしゃるとおりです。あの時はどうすることできなかったのです。全員、上に
逆らうことなど出来ませんでした。あの頃の私は検事としても、人間としても
未熟でした」
「父を起訴するにあたって、起訴理由は何だったのですか?」
「起訴理由など何もありませんでした」
「何もなかった?・・・じゃあ上からの命令だけで、起訴理由も何も無いのに
起訴したのですね?」
「申し訳ございません」
こんなデタラメな事件に父や私達は苦しんできたのか。今までの10年間は
いったい何だったのだろう。情けなくて情けなくて・・・
つづく
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