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【その1のつづき】
△次のメニューでございます。
●アア、今度は小鉢に入って出て来たな。日本調ですな、今度は。(蓋をとって)これ、栗みたいですが?
△左様でございます。丹波から取り寄せました極々上等の栗をキントンにいたしました。尚、器は九谷焼でございます。
●アア、九谷焼ねぇ・・・・。お箸でいただくんですか?いただきます・・・・。(食べて)うん。こら美味しい。上品な甘さやな。ウッ!(ノドへつめて)すんません。お茶いただけますか?
△お茶は玉露になさいますか?それとも喜撰?
●な、な、なんでもよろしい!
△玉露でしたら、ちょうど八十年ものが入荷いたしまして・・・・
●何年ものでもええから早いこと下さい!(茶を飲んで)ああ、ビックリした。お茶の講釈聞いてて栗のキントンと心中したら世話無いで、ホンマに
△いかがでございますか?
●は?
△お茶のお味は、いかがでございますか?
●お茶のお味・・・・・・て、そういう事まで一々お客さんに尋ねはるんですか?
△わたくし、日本茶のソムリエもいたしておりますんで
●日本茶のソムリエ?結構でした・・・・。お茶の入ったボトル置いて向こうに行きやがんねん・・・。日本茶のソムリエて初めて聞いたわ。けど『玉露の八十年もの』や言うてたけど、お茶言うのは『新茶』いうて新しいほうがエエと思うねんけどなァ。何考えてんねやろ、この店は?
△次のメニューでございます。
●え?これ、なんぞの間違いと違いますか?魚みたいなものが出てきましたけども
△『鯛焼きの甘酢あんかけ四川風』でございます。
●何ですか?『鯛焼きの甘酢あんかけ四川風』?・・・急に中華になるんですね?
△当店では、非常にエスニックな味として評判でございます。
●エスニックな味ねえ・・・・。中華の象牙のお箸で食べるんですね。甘酢あんかけ四川風・・・。食べん事は無いけどね・・・・。けったいな味。こんなん、別々に食べた方が美味しいと思うねんけどなァ。ホンマけったいな味や・・・・。
△次のメニューでございます。
●今度は鳥みたいな形のもんが出てきましたが・・・・。
△日本独特の飴細工・・・・・新粉細工のウグイスに小豆の詰め物をいたしました。
●へーぇ。飴細工のウグイスに小豆の詰め物を・・・・?なんや、上からドロッとかかってありますね。
△当店特製の蜂蜜のソースでございます。なんでしたらトッピングを・・・・・・
●いらんいらん。この上、なんぞかけられてたまるかいな。・・・・食べん事はないけどね・・・。甘ァ・・・。メチャメチャ甘いわ。わしら甘いものがいけるからええけど、酒呑みに聞かせたら胸ムカムカしよるで。ムチャムチャ甘いわ、ほんまにもう
△次のメニューでございます。
●次のメニュー・・・・・。エ、エーッ!な、なんですか、この大きなまんじゅうは?
△これが当店特製の『マンジュウ・ア・ラ・モード』でございます。この大きなマンジュウの中に小さなマンジュウが、七つ入っております。ある物はこしあん、あるものはつぶあん。白あん、味噌あん、ジャム、チョコレート、クリーム。七つの味がお口の中にイッパイに広がるという、お口の恋人『マンジュウ・ア・ラ・モード』・・・・・
●ウワァ・・・・!聞いただけで胸悪い・・・・。えらいもんこしらえよったな。これ、もういいです。まだ、ゼンザイが出てくるんでしょ?持って帰れるもんでしたら持って帰ります。
△それではお持ち帰りにさせていただきます。また、この『マンジュウ・ア・ラ・モード』は結婚式用の『ウエディング・マンジュウ・ア・ラ・モード』もございます。ご用命の節には是非当店へ・・。
●これのもっと大きいやつ?値段も高いんでしょうね?
△ご予算にあわせまして色々と承っておりますが、大体の目安がお給料の三ヶ月分になっております。
●・・・・・・・今んとこは結構です・・・・・・。
△左様でございますか。それではいよいよ、メインディッシュの、ゼンザイでございます。小豆は極々上等の大納言を吟味いたしまして、これをいったん鞍馬の清水に漬けておきましてから、それを二・三回ゆでこぼすという・・・・・・・本当に手間な事をするんですなァ・・・。
●説明はどうでもええんです。私、なんやもう、オナカいっぱいで食べられへんように思うんですが。
△左様でしたございましたら、当店の五階にアスレチック・クラブが御座いますので、そちらで腹ごなしの運動でもして来られましたら・・・・・。只今、一割引の優待券を差し上げておりますので・・・。
●いらん!なんで、ぜんざい食べるのにアスレチッククラブへ行ってバーバル挙げせなあかんねん。せっかく来たんですからいただきます。ぜんざい、いただきますわ。
△お餅はいかがいたしましょう?
●ぜんざいですから、できたら入れてもらいたい・・・・。
△勿論お入れいたしますが・・・・焼き方はどの様にいたしましょう?ミディアム?それともレア?
●・・・・・どうでもええ。適当に焼いといてください。ミディアム・レアあたりで結構です。・・・こんな店、二度と来えへんぞ。あのグルメの本書いた奴、いっぺんど突いたらあかんな。
△お待たせいたしました。
●ウワッ!また立派な器ですねェ。
△輪島塗でございます。
●そんなんどうでもよろしいけどね・・・・・・。仰山入ってますね。
△これで一・八リットルです。
●一升やがな・・・・。頭痛いな・・・・。しかし、いままでもコースを、一人で残らず食べる人ていてはるんですか?
△このコースの場合、五人様以上でお召し上がりになります。
●先にそれを言えよ!それを!・・・・え?その器にとってくれるんですか?食べん事は無いけどね・・・。甘ァ・・・・。むちゃむちゃ甘いわ。餅食うたろ・・・・。うん。餅は美味しい。・・・うん?中にあんこが入ってる!大福餅やがな!!なにをすんねんな!甘、甘、甘ァ・・・。むちゃむちゃ甘いわ。もうアカン。アノォ、もったいないんですけど、もう結構です。
△左様でございますかァ?デザートのプリンとデミ・おしるこは?
●いらんいらん
△ただいま、おしるこを五杯飲むとあんみつが一杯ついてくる!
●いらんいらん!!なんでこの上、あんみつを食わなあかんねん!それよりも、胃薬ありませんか?胸が焼けて、胸が焼けて・・・・・・。
△それでございましたら、このビルの三階に大東胃腸病院がございますんで、そちらの方に行かれましたら、ただいま一割引の優待券・・・・・・
●いらんて!この店、ビルぐるみで儲けよと思うとんねん。もう帰りますから、お勘定を御願いします。
△左様でございますか。それではこれをお持ちになりましてキャッシャーの方へ。
●・・・・・キャッシャーて、大層に言うな。ここかいな。すんません。これ御願いします。
■はい。ありがとうございます。
●一万二千五百円や言うてたから・・・・・。はい、一万三千円でお釣り
■あの、お客様。これではちょっと・・・・・
●なんでやのん?ディナーコースは一万二千五百円でしょ!
■はい。ディナーコースは確かに一万二千五百円でございますけれど、そこにテーブルチャージ、『玉露』のボトルキープ、消費税が加算されまして、二万八千二百五十円となっております。
●二万八千二百五十円!?ようそんな・・・。わかった!払いますがな。三万円置いときますんで。
■ありがとうございます。アノォ、お釣りはいかがいたしましょう?
●お釣りは、ちゃんと下さい!!
■ただいま、恵まれない人に甘い物を送る愛の共同募金・・・・・・・
●せえへんせえへん!!ちゃんとお釣り返してください!!
■どうもありがとうございます。またどうぞ。
●誰が来るかい!
■アッ、お客様。どうぞ、こちらのスピードくじを引いていただきますように・・・・・。ディナーコースをお召し上がりの皆様には、空クジ無しの抽選がございます。
●もう結構です。やめときます。当たったかて、どうせケーキとかまんじゅうとか甘いもんが当たるんでしょ?
■いいえ、どんでもない。なんと一等は三泊四日の旅行にご招待!!
●旅行に?どこへ招待してくれるんですか?
■それがなんと、奄美大島
●奄美大島?いや、『甘み』はコリゴリや。
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いかがでしたでしょか??
書いていて気分悪くなってきた・・・・・。読んでも気分悪くなった人いるんではないでしょうか?
この噺は落語作家の小佐田定雄氏が書かれたものです。演者は桂 雀松師がメインです。
出てくる料理は小佐田先生だけでなく雀松師や色々な方が考えたものらしいです。
この噺、いわゆる新作ですが元ネタがあり『ぜんざい公社』といいます。『ぜんざい公社』についてはまた後日にでもお話しましょう。
私もこれをいつか口演してみたいとは思っていますが、他に面白いメニューを思いついた方はどうぞドンドンコメントしてください!!!使わせていただきますので・・・。
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