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久々の落語の徒然です。
取り敢えずは小噺を全文掲載!
『たけのこ』です。
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上方落語にはお武家様の登場するものが少ないという枕を、米朝師匠が語られます。その少ない噺の中から、夜中、一人でトイレに立つのが恐い侍が奥方を脇に控えさせて「その方、そこで待つのは恐くないか?」「いいえ」「天晴れ、それでこそ武士の妻じゃ……」ど突いたろかしら、思いますな。
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●こりゃこりゃ可内(べくない)。
▲ねい。
●きょうの昼飯の采(さい)は何じゃ?
▲えぇ、筍でございます。
●ほ〜ぉ、筍とは珍味じゃが、いずかたよりか到来をいたしたか?
▲到来はいたしませんので。
●しからば八百屋にて買い求めたか?
▲買い求めもいたしませんので。
●買い求めもせず、到来もせぬ筍が、どぉして家(うち)にあるな?
▲いや、お隣りの筍がね、こっちの庭へ頭出しよりましたんで、それを掘り取りました。
●何といぅことをいたす「渇しても盗泉の水を飲まず」とは古人の戒め、隣家のものを無断にて掘り取 るといぅことはあるものか、たわけめ。・・・・とは言ぅものの、わしもそぉいぅことは好きじゃ。
▲あぁビックリした。旦那お好きですかいな。
●しかし一応隣家へ答えねばいかん、これから行ってまいれ。
▲何と言ぅてまいりますかな?
●そぉじゃな……、慌ただしゅ〜走り込め。
●「不埒(ふらち)でござる、不埒でござる。不埒分明(ふらちふんみょ〜)、 不埒(ふら)フッタイでござる。ご当家様の筍が手前屋敷へ泥脛(どろずね)を踏み込みました。戦国の世 ならば間者(かんじゃ)も同様なやつ、召し捕って手討ちにいたしますゆえ、その段ちょっとお断りをい たします」・・・・・そぉ言ぅてこい。わしは鰹節のダシを取っておくからな。
▲おもろい旦那やなぁ、うちの旦那。慌ただしゅ〜走り込むのか……
▲えぇ〜、不埒でござる、不埒でござる。不埒分明、不埒フッタイでござる。
◆これは隣家の可内、慌ただしゅ〜何事じゃ?
▲ご当家様の筍が手前屋敷へ泥脛を踏み込みました。戦国の世ならば間者も同様なやつ、召し捕って手 討ちにいたしますゆえ、その段ちょっとお断りをいたします。
◆不届きな筍の振る舞い、お手討ちは止むを得ぬが……、遺骸はこちらへお下げ渡しを願いたい。
▲そら何を言ぅねや、遺骸が要るんやがな……、うちの旦那、鰹のダシ炊いて待ってまんねやが。
◆何ならば、ダシもろともにても苦しゅ〜ない。
▲さいなら……、向こぉの方が一枚上手やで。
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▲え〜、行て来ました。
●ん、何と出あったな?
▲「不届きな筍、お手討ちは止むを得ませんが、遺骸はこちらへ下げ渡してくれ」言ぅたはりまっせ 「うちの旦那、鰹のダシ炊いて待ってまんねん」言ぅたら「ダシもろともにても苦しゅ〜ない」言ぅた はりますが。
●ふん、敵もなかなかやるのぉ……。もぉ一度行ってこい「不届きな、けしからん筍は既に当方におい て手討ちにいたしました。遺骸はこちらにて手厚く腹の内へと葬ります。骨(こつ)は明朝、高野へ納ま るでございましょ〜。これは筍の形見じゃ」と言ぅて、この竹の皮をばらまいてこい。
▲段々オモロなってきたなぁこら……
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▲え〜、お隣りの
◆おぉ、可内。鰹のダシは?
▲いやいや、せやおまへんねん。え〜、あの〜「けしからん筍は既に当方において手討ちにいたしまし た。遺骸はこちらにて手厚く腹の内へと葬ります。骨は明朝、高野へ納まるでございましょ〜。これは 筍の形見でございます」(バラバラ、バラバラバラ)
◆いやはや、お手討ちに相成ったか。あぁ、可哀(かわい)や、皮ぁ嫌。
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補足説明!
可内(べくない)=「米朝落語全集」に記載 / 松浦氏 (FCOMEDYG)による。
芝居では奴の名前に〜内と付けるのが型になっているという。「蛸芝居」でも定吉が 定内、亀吉が 亀内と名乗る(桂米朝談)。
ねい=「はい」という返事。奴(やっこ)言葉として、昔の芝居なんかによく出て来ます(桂米朝談)。
到来=他人から物が届くこと。特に贈り物が届くこと。
たわけ=戯け:馬鹿者。ふざけた者。
答え=あいさつする。ことわりを言う。
不埒(ふらち)=道理にはずれていて、非難されるべきこと。よろしくないこと。「埒」は馬場の囲いの 意。転じて物事のくぎり、秩序の意。
分明(ふんみょ〜)=ぶんめい:はっきりしていること。明らかなこと。
不埒(ふら)フッタイ=平べったい・厚ぼったい、などのように不埒であることを強調したものか?
間者(かんじゃ)=敵方の様子を探る者。間諜(かんちょう)、スパイ
高野(こうや)=厠(かわや)の異称
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この噺は侍言葉を練習するのに良いと聞きました。侍の言い回しの勉強になるんですね。
よく聞いているとおかしみがでてきます。
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