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落語・楽語・楽娯

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落語や演芸などについて書いていきます。
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 お疲れ様です。
 ホント全部書き出すのは読む方には苦痛ですね・・・。すいません。
 あと少しです。お付き合いください!

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 またガッカリしてしもた。さぁ、その日は床屋を十八軒に、風呂屋を二十六軒と回りまして、日が暮れになるともぉ目ぇも何もゴボ〜ッと落ち窪ましてもぉて……


 ▲ご、め、ん

 ■また来たであの人、いや朝から四へん目やであの人……、何だんねん?

 ▲髭……

 ■髭て、あんたもぉ剃るとこも何もおまへんで

 ▲五分刈りにしてもろて、頭まで剃ってもろて、このへんヒリヒリ・ヒリヒリしてまんねん……

 ■何んしにおいなはったんや?

 ▲一服さしてもぉたら結構で

 ■あぁさよか、ほなまぁ一服して帰っとくなはれ。

 ▲えらい済んまへん……「せを〜〜はやみ」

 ■また始まった、朝から来てはあんなこと言ぅてまんねん。ちょっといかれてんのと違いまっかなぁ

 ▲はぁ、無理もないわい。


    ぼやいてるとこへ飛び込んで来ましたのが四十五、六の頭領風な男で……


 ◆大将、ちょっと頼みたいんやがなぁ

 ▲親方……

 ◆あぁ混んでるやないかい。ちょっと急き前(せきまい)でなぁ、主家(おもや)の用事で走らんならんねや、虎はんえぇとこで会ぉた、ちょっとこれから大急ぎで走らんならん、ちょっと髭だけや、先代わってもらえまへんか?

 ◆万さん済んまへんなぁ、髭だけだんねん、ちょっと主家の用事で走らんならんねん、ちょっと入れたっとくなはれな、済んまへん済んまへん。もし、こっちのお方、見ず知らずのお方に申し訳ございまへんねやけどなぁ、髭だけだんねん、ちょっと先……

 ▲どぉぞ、何ぼでも先やっとくなはれ。もぉ剃るとこも何にもおまへんねん。ボチボチ植えてもらおかしらんと思て。

 ◆「植えてもらう」えらいオモロイ人やなぁ、ほな頼むで

 ■えらいまた、急ぐねやなぁ

 ◆さぁ、主家の用事で大急ぎやねん

 ■あぁ、主家といぅたら、向こぉの嬢はん、どんなあんばいや?

 ◆かわいそぉに、今日あすやと

 ■二十町界隈にないといぅ小町娘や、もぉ親旦那心配してはるやろなぁ

 ◆お父っつぁんもお母はんもなぁ、目ぇもなんにも真っ赤に泣きはらかしてしもて、ぼやいてばっかりや。何の因果でっちゅうて……

 ■そらせやろ

 ◆金のある家にはまた、金では片付かんといぅ心配ごとが出て来るもんじゃわい

 ■せやけど、あの嬢はん達者な人やったけど、何でまた?

 ◆さぁ、それといぅのが今時ありそもないよぉな話でな、わしも聞ぃてビックリしたんやがな。

 ◆何でも二十二、三日前に下寺町でお茶の会があって、その帰り道、気の進まん人、お付きのもんが「いっぺんお参りしまひょ」ちゅうて高津さんへ連れて行ったら、それが因果やわい。絵馬堂の茶店で一服したところが、先からそこに座ってた人がな、どこの若旦那や知らんけども役者にもないよぉな綺麗な人やったんやそぉな。

 ◆うちの嬢さんかて年頃やわい、やっぱり「綺麗な人やなぁ」っちゅうて見てたちゅうねん。それ知らんもんやさかい、お付きのもんが「いにまひょ」と急きたてて行ったところが、やっぱり心が残ったぁったんやなぁ、緋塩瀬の茶帛紗が忘れたぁったんや。

 ◆また、その若旦那が親切な人でな「これ、あんたのと違いますか?」と、手ぇから手ぇへ渡されたときにはゾクゾクッと震えが来たそぉやわ、そらそやろなぁ。あんまり名残が惜しぃちゅうんで、また茶店へ戻って来て「料紙を出せ」サラサラッと歌を書いて渡して帰ったんや。

 ◆その歌の文句がな……、あの、百人一首にあるやろ崇徳院さんの「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の」あれを書いて渡したなり、どっと床について頭が上がらん。

 ◆お医者はんに診せたところが「これは気病じゃ、思い詰めてることがあるに違いない」といぅので、いろいろと聞ぃたがどぉしてもおっしゃらんので、小さい時分にお乳をあげた乳母(おんば)はんが嫁入りしてるのを呼び出して来てやで、枕元へ座らして、なだめたりすかしたりしたところが、耳の付け
根まで真っ赤にして「誰にも言わんといて、お父っつぁんに知れたら怒られる、実はこぉこぉ、こぉいぅわけ」と……

 ◆ここではじめて様子が知れたんや。旦那それを聞ぃてえらいこっちゃがな、一粒種の娘を殺したら大変や「出入のもん皆呼んで来いッ」ちゅうてみんな集めて、とにかくその若旦那を探さないかんさかい「お前あっち行け、お前こっち行け、お前あっち行け、お前そっち行け」

 ◆可哀想ぉに源助はん、きのう札幌行きよったであいつ。わしゃまた紀州の係や。これから行かんならんねん「和歌山の町中で尋んねて分からなんだら熊野の浦へ回って鯨に聞ぃてこい」てなこと言われて、ひっくり返るよぉな騒ぎになったぁんねん

 ■へぇ〜ッ、まぁそんな話聞くっちゅうと、あんまりえぇ男に生まれるっちゅうのも罪なもんやなぁ。

 ◆せやけどやっぱりなぁ、ご大家は違うっちゅうねん。わしらやったら「瀬をはやみ」てな歌書いてもろたかて何のこっちゃ分からんが、ここらがやっぱり我々とは違うなぁっちゅうて

 ■なるほどなぁ……

 ▲チョワ〜ッ!

 ◆な、何ちゅう声出すねん。な、何をしなはんねん、人の胸ぐらつかまえて?

 ▲チョ、チョワ〜ッ、おのれに会おとて艱難辛苦は幾ばくぞや、ここで会ぉたが優曇華(うどんげ)の、親の仇、尋常に勝負、勝負

 ◆何を言ぅねん、こら離せ、離しんかいな

 ▲離してたまるかい。その歌書いてもろていんだんは、わしとこの本家の若旦那や!

 ◆ギャイッ! こらえぇとこで会ぉたぞ、おのれに会おとて艱難辛苦

 ▲おんなじよぉに言ぅな。俺とこ来い

 ◆わしとこへ来い

 ▲おのれ連れていんだら、借家五軒に三百円……

 ◆そら何のこっちゃい?

 
  もみ合う弾みに花瓶がパ〜ンと飛びまして、前の鏡がパラパッチャンパッチャンパッチャン……

 
 ■待った、待ったぁ、おい何をすんねんお前ら。今、話聞ぃてりゃ互いに尋ねる相手が知れてめでたいねやないかい、それを喧嘩せえでもえぇがな。うちの鏡、割ってしまいやがって、これどないしてくれんねん?

 ▲心配すな、崇徳院さんの下の句じゃ

 ■下の句とは?

 ▲(サゲ)割れても末に、買わんとぞ思う。

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 あ〜ああ〜!疲れた・・・。
 と、まあこんな噺ですけどね。奥ゆかしい恋愛話ですね。

 こんな風な場面にあってみたいものです!

 次回からはまた普段通りに行きます!

 お疲れ様でいた・・・。

 お疲れ様です。その3です。引き続き「崇徳院」をお楽しみ下さい。
 長いので、ユックリと読んでください。しんどいと思いますが頑張って!!

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 ▲嬶、今戻ったで

 ●どやった?

 ▲三日だけ暇もろてきた。三日間のうちにこれを探し出したらな、あのご本家の裏の蔵付きの五軒の借家、あれすっくりわしのもんやで。別に一時のお礼が、三百円や!

 ●んまぁ〜、結構やないかいな、あんた家主さんになれるんか。三百円なんて、あんたが手伝い(てたい)仕事一生懸命やったって一日の日当四十八銭にしかならへんねやで。運が向いて来たんやし、しっかりやらなあきまへんで。わてもな、心当たりチョイチョイ尋んねといたげる

 ▲頼むで!

 
 欲と二ぁり連れといぅのはえらいもんでございまして、二日二晩といぅものは大阪の町中をグルグル・グルグルと尋ね回ったが、ど〜しても知れまへん。二日目の晩方になると、欲も得も抜け果ててボケ上がってしまいよった。
 

 ▲あぁ……、こぉなったら若旦那より、わいの方が二日ほど早いで。もぉ腹は減ったし、嬶またボヤキよるやろなぁ……、ただいま

 ●何ちゅう不景気な顔して帰って来んねや、この人。え? 何ぼ探しても分からん……、そぉ、しょがないがな。なぁ、どっち道わてらみたいな肩の悪い夫婦(みょ〜と)がそんな大きな運がつかめるはずがないがな。諦めなはれ、なぁ……、先さんにもご縁がなかったんやし、こっちも運がなかったんやさかい、諦めなしょがないやないかいな。

 ●せやけどあんた、毎日いったいどんなこと言ぅて道歩いてなはったんや?

 ▲へっ?

 ●どんなことを言ぅて道を歩いてなはった? ちゅうねん

 ▲どんなことて……、黙って歩いてたんや

 ●えぇ? ほな、何か。あんたこの二日間、黙〜って大阪の町中歩き回ってたん? それで知れたら、知れる方が不思議やないかいな。

 ●えぇ? あんたそないして道歩いてたら「わてが本人です」て誰が出て来るねやいな? こんな不細工な……、いぃえぇな、そらまぁあんた「別嬪の娘はん居てはらしまへんか?」ぐらいのことは聞ぃて回ったやろけども、そんなことぐらいでは分かるわけがないがな。

 ●えぇ手蔓(てづる)があるやないかいな。その崇徳院さんの「瀬をはやみ」とか何とかいぅ歌。わたしの考えでは先さんも、ヒョッとしたら恋患いなったはると思いまんねん。せやから、その歌あんた詠(うと)て歩いてたら、それを聞いた人が「アッ、どこそこでその歌聞きました」とか「そんな噂が耳に入った」とかいぅて、手掛かりがつかめんもんでもないのに……

 ●黙って歩いてたやなんて、まぁあんた、そんなスカタンやとは思わなんだなぁ……。もぉこれを探し出さんと生涯頭のあがる見込みなし。わてもぉ、ひとまずな、荷物まとめて大和のおばはんとこ帰るさかい……

 ▲ちょ、ちょっと待ってくれおい。よその嫁はん探さんうちに、こっちが夫婦別れしてどないなんねん。あした一日残ってる、あした何とかして探し出すよってにな。今日はもう寝さしてぇな

 ●情けない人やなぁ。ほな、今日はもぉ寝なはれ。その代わりな、あしたの朝早よ起きてブブ漬けでもかっこんで、探しに行くねやしッ。もぉ寝なはれ!

 ▲お休み……

 ●さぁ起きなはれ!

 ▲寝る間もなぁ〜んにもあれへん

 ●さぁ起きなはれ、起きなはれ。そこにご飯の支度がしたぁる。それ早いこと食べて行くねやで。それでなるべくな、床屋さんとか、風呂屋さんとか人さんの大勢集まるところ行て、今の歌言ぅてたらえぇのん。分かったなぁ

 ▲うん……

      **********************************

 ▲えらい嬶やなぁ。噛んで吐き出すよぉに言ぃやがんねん。あの歌詠いながら道歩けやて、んなアホらしぃことがでけるかいな……。せやけどまぁ、黙って歩いてても分からん理屈やなぁ、いっぺんやってみたろか知らん。

 ▲「瀬をはやみ」やったなぁ「せ……、せ……、せを」道の真ん中で、声っちゅうたら出んもんやなぁ「せ……、せ、せを〜〜〜はやみ」

 ★ちょっと、オカズ屋はん!

 ▲こんなもんがオカズになるかい、お前「いわにせかるるたきがわの〜〜〜」何……? チラシ一枚くれ? 違う、違う違う、そんなんとちゃうねん。

 ▲「せを〜〜はやみ いわにせかる〜〜」子どもぎょ〜さん……、ついてくな、こらッ! 何やと思てくさんねん、お前! イタッ、石をぶつけやがったな、あかんこら、いっぺん床屋へでも入ってみたろ。

      ***********************************
 
 ▲ごめんを
 
 ◆へッ
 
 ▲ちょっと髭を……

 ◆大将、えぇとこだ、誰ぁれも居れしまへんじきにかかりま。どぉぞ座っとくれやす

 ▲さいなら

 ◆もしもし、空いてまんねやで、じきにやりまんねやで

 ▲空いてるとこはあかんのじゃ、混んでないと具合悪いねん、こっちわ。いろいろと都合があるわい。

 ▲ごめんやす

 ■へッ

 ▲髭をちょっと……
 
 ■あぁ大将、鈍なこって、ちょっとなぁこの通り四、五人つかえてまんねやけどなぁ。待ってもらわな……

 ▲いえ、それが結構で。待たしてもらいます

 ■あぁさよか、ほなまぁ一服しとくれやす。

 ▲へッおおきに「せ、せ……」へっへっ、今日はえぇお天気でんなぁ

 ◆へぇへぇ、なかなか結構なお天気でんなぁ

 ▲済んまへんけど、ちょっとそこの火鉢をこっちかしてもらえまへんかなぁ……、えらいどぉも済んまへん(スッパァ〜)「せを〜〜はやみッ!」

 ◆あ、あぁびっくりしたぁ。何だんねん?あんた急に大きな声出して。

 ▲いや、別に何でもないんでやすけどな「いわにせかるる たきがわの〜」


 ★そこのお方。あんさんえらい崇徳院さんの歌がお好きとみえまんなぁ

 ▲もし旦那、あんたこれを崇徳院さんのお歌やなんて、えらい詳しぃことをご存知で

 ★別に詳しぃちゅうわけやないが、負ぉた子ぉに教えられてなもんでな、うちの娘が始終そんなこと言ぅてるもんやさかい、親のわたしまでがついつい覚えてしまうてなこって。

 ▲お宅の娘はん、こんなこと言ぅてはりまんのん? えぇとこへ出て来たなぁこら。あのぉ、お宅のお嬢さんちゅな別嬪さんと違いまっしゃろかな?

 ★ま、親の口から言ぅのも何じゃが、親類なんかでもな「トンビがタカ産んだなぁ」ちゅうてくれまんねや。

 ▲トンビがタカ、水が垂れてまんな……

 ★何のこったんねん?

 ▲いや、これはこっちのこった。あの、二十日ほど前に高津さんへ行きはったことはおまへんやろか?

 ★近所だすよってになぁ、高津さんでも生国魂はんでも、始終お参りに行てますが

 ▲おおきにおおきに、水も垂れるよぉな綺麗な人で、年の頃なら十七、八?

 ★いや、まだ九つでんねん

 ▲「せを〜はやみッ」

 ★何やいな、この男わ?


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 さ〜て熊五郎さん大変です・・・・。
 続きはその4で!

 その1の続きです。引き続き「崇徳院」お楽しみ下さい!

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 ▲けッ、もぉ銭のあるやつっちゅうたらしょ〜もないことで患ろぉてけつかんねん、嫌んなってきたホンマにもぉ……、行て来ました

 ■ご苦労はん。どんなこと言ぅてたな? せがれ

 ▲えらいこと言ぅてまっせ、せがれ

 ■お前までが、せがれちゅうやつがあるかいな。

 ▲何でも二十日ほど前に高津さんへ行きなはったやろ?

 ■そぉそぉ、参りたいといぅんでやりましたが

 ▲それがいかんねや、何で生国魂(いくたま)はんへ参らさん

 ■知らんがな、そんな

 ▲その高津さんが業(わざ)しよったんだっせ

 ■業しよったとはどやねん?

 ▲あの高津さんへご参詣したあとへな、絵馬堂の茶店で一服したんでやすと。あこ見晴らしがえぇさかいなぁ、道頓堀までひと目に見えますわいな。腰掛けんなりじきにブブ汲んで持って来ますわ、羊羹持って来るわ、向こぉの羊羹分が厚ぅてうまいねや。何ぼほど食べた? と思うやろ?

 ■そんなこと思やせんがな

 ▲「思やせん」て、ここ思うとこや誰かて、わてかて思たがな。で、そこで休んでると、そこへ入っといなはったんがお供を四、五人連れてお年の頃なら十七、八。ビチョビチョの女ごが入って来たっちぃまんねん。

 ■何や、そのビチョビチョの女ごちゅうのわ?

 ▲さぁ〜、河へでもはまりよったんだんなぁ、体中からこのボタ〜ボタ水が垂れてまんねやて

 ■それも言ぅなら「水も垂れるよぉな綺麗ぇなお人」ちゅうねやないかい?

 ▲はぁ、それでやすわ

 ■何を聞ぃて来たんじゃ……

 ▲それが入って来たんだビジョビジョが、で、若旦那も「綺麗な人やな」と見てたんや。ところが向こぉもこっちをジ〜ッと見てたかと思うと、ニコッと笑ろたちゅうねや、生意気なやつだっせ、わてやったらボ〜ンといたるとこや。で、出て行ったところがあとにな、緋塩瀬の茶帛紗とかいぅもんが忘れてあったんやそぉな。

 ▲ほっときゃえぇのに若旦那の世話焼きやあれ、持ってって「これあんたのと違いますか?」と、こぉ手ぇから手ぇへ渡したげると、丁寧にお辞儀をして、また茶店へ戻って来るなり「良助出ぇ」ちゅうねや。

 ■何やその「良助出ぇ」ちゅうのわ

 ▲こら難しぃんだ、こらわたいも分からなんだ。この良助といぅのはつまり、紙に硯を添えて持って来まんねん

 ■それは料紙じゃ

 ▲あぁせやせや、ほでその、何や歌をなサラサラッと書いて手渡して、サ〜ッと逃げて去(い)んでしもたんやそぉです。

 ▲で、その歌の文句ちゅうのん読んでみたらな「石川や 浜の真砂は」いや、こら違うわ、こら五右衛門の歌や。あの百人一首に「人喰い」ちゅう人がおまっしゃろ

 ■そんな化けもんみたいな人が居るかいな「人喰い」て「崇徳院」と違うか?

 ■そぉそぉ、あの歌は何といぃましたかいなぁ?

 ■どっちが尋んねてんねや分からんがな。崇徳院さんのお歌なら「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の」

 ▲それそれ

 ■「われても末に 逢わんと」
 
 ▲さ、その下の句が書いてない、こぉしてわざと書いてないところをみると、っちゅうやっちゃ。今日は本意ないお別れをいたしますが、またのちには嬉しゅ〜お目にかかれますよぉに、といぅ先さんのお心かいなぁと思たら、わいもぉ恥ずかしながらファ〜ッ、頭が上がらん。あんたの顔が嬢さんに見える……

 ■これッ、何をするのやいな

 ▲つまり、このお方をお嫁にもらいあそばしたら、ご病気全快は間違いなしでおます
 
 ■よぉ聞ぃてきてやってくれた。いやいや、あと五日が持たんと言われてんねやがな。いやぁ、おおきにおおきに。あのな、一人よりないせがれじゃ、何はさて置いてももろてやりましょ。でなぁ、おまはん、仲人といぅわけにはいかんが、ひとつ橋渡しじゃ。ちょっとこぉ瀬踏みがてら、そこのうち下見に行てもらえんかな?

 ▲何ぼでも行かしてもらいますけど……、それがその「分からん」とおっしゃんのんで

 ■え?

 ▲「どこのお方や分からん」とおっしゃる

 ■「分からん」といぅたかて日本人やろ?

 ▲そら、日本人でんがな

 ■日本人なら、これから行って大阪中探しなはれ。大阪探して分からなんだら京都行って、京都探して分からなんだら名古屋、浜松、静岡、横浜、東京。今は日本国中、縦横(たっちょこ)十文字に道が付いたぁんねん。

 ■これを首尾よぉ探して来てくれたら、こないだおまはん借金をしたなぁ、あの貸した金、証文がこっち入ったぁる。あれをそっちへお返し申す、別に一時のお礼十分にさしてもらう。これからじきに行といで、これからじきに行きなはれ。

 ■家へ帰って支度? そんなことしてる場合やない、せがれ、あんなりほっといたら五日があかん。腹が減ってるか? あぁ、そらどんならん。これこれ、熊五郎がお腹が空いてるで、ちょっとご飯の支度をしてやっとぉくれ。お膳も何も要らん、お櫃なりこっち持っといで、お櫃なり。

 ■おかずも何も要るかいな、タクアンを一本洗いなはれ、切らいでもえぇ。お清、ちょっとそのタスキをはずせタスキを……、タスキでな、このお櫃をこぉいぅ具合にくくってな、熊はんこれを首から掛けなはれ。えぇか、必ず茶店なんか入って飯食ぅことならんぞ、道歩いてて腹が減ったら、それ手づかみで食ぅてタクワンかじって探して来んねん、えぇか。

 ■ワラジの紐が切れかけてるやないか、そらどんならん。これこれ、ワラジ二足こっちかし……。これをこぉ結び付けたげるさかい、切れたらじきに履き替えて行くねんで。もっと尻からげを高こぉして、さッ、行っといなはれ!


    **************************************

 ▲こんな格好(かっこ)で、どこ行けるねん? 嫌んなってきたで……。嬶、かか

 ●嬶やあれへんがな、あんたまたなんちゅう格好して帰って来んねん、首からお櫃ぶら下げて、腰にワラジ吊って。荒物(あらもん)屋の化けもんやないかいな。ご本家行たんかいな?

 ●えッ、はぁ、若旦那が……、早やそんなこと言ぅよぉなって。はぁ、でその人を探し出したら……、こないだの借金、あれ気になってんねやがな。あれ棒引きの上、別に一時のお礼。まぁ結構やないか、早よ行といなはれ。

 ▲お前あっさり言ぅけどなぁ、どこの人や分からんのやで

 ●分からんと言ぅたかて、日本人やろ?

 ▲おんなじよぉに言ぃやがんねん……、決まってるわい

 ●日本人なら大阪中探しなはれ。大阪探して分からなんだら神戸行て、神戸で分からなんだら姫路行て、岡山、広島、下関から九州ズ〜ッと回っといなはれ!

 ●今は日本国中、縦横(たっちょこ)十文字に道が付いたぁんねん。ワラジが二足? そんなもん足るかいな。ここに十足有る、これくくりつけたげる、早いこと行っといなはれ!

 ▲おんなじよぉにすな、お前までが……


 半泣きになりまして、家を飛び出します。大阪の町中をグルグル・グルグル尋ね回ったが、もとより雲を掴むよぉな尋ねもんだっさかい、知れそぉな道理がない。日が暮れんなったら……


 ▲かか……

 ●いつまでかかってんねや、もぉ。ご本家から何べんもお使いが見えたぁんねん。早よ行っといなはれ!

 ▲一服もなにもさしよらん……

      ************************************

 ▲熊五郎、ただ今戻りました

 ■おぉ、熊はん帰って来た、足洗う水を持って行ってやれ、それから疲れてるじゃろ、風呂沸かして風呂、お酒の燗、ウナギでも言ぃにやんなはれ……

 ■いやぁご苦労はんご苦労はん、今朝はまた荒い言葉かけて済まなんだなぁ、もぉ親といぅもんは子どものことにかかったらアホみたいなもん……、おい、ちょっと手文庫をこっち持って来なはれ。いやいや、言ぅてたじゃろ、この借金の証文、こんなもの入れぇでもえぇねや、おまはん堅い人やさかいな、いちいちこんなもんキッチリと……

 ■まぁまぁまぁ、これ取っときなはれ。それからな、少ないけれどもちょっと気持ちだけ包ましてもろた。いずれまた改めて礼はさしてもらう、取っときなはれて……。で、最前ちょっと暦を調べたらなぁ、あさってが日がえぇねん。でまぁ、とりあえず結納の下話ぐらいはさしてもらいたいと思うのじゃが、定めて先さんはご大家じゃろなぁ?

 ▲……、それが、その……、へんねや

 ■何じゃちゅうねん?

 ▲その……、りまひぇんねん

 ■ハッキリ言ぅたらどや、ハッキリ……、分からん? 酒の燗ちょっと待て、風呂沸かすことならん、何でお礼を懐へ入れるねん……、これッ、もぉちょっと前へ出なはれ。分からんてなこと言ぅてよぉのめのめと帰って来たなぁ。うちのせがれ、あんなりほっといたらあと五日持たんと言われてるんやで、おまはんにはこぉいぅ時に走ってもらおと思やこそ、常からいろんなことがしてあるはずや。

 ■礼が気に入らんか? いぃや、礼はさしてもらう。裏の蔵付きの五軒の借家、すっくりおまはんにあげる。別に一時金のお礼三百円や

 ▲ギョエ! さんびゃく円ちゅうと……、百円札が三枚の三百円でやすか?

 ■当たり前じゃ

 ▲十円札なら三十枚?

 ■その通りや

 ▲一円札が三百枚……、五銭玉で何ぼある?

 ■知らんがな、そんなことわ。

 ▲こぉなったらわたしも欲と二人連れでおます。へぇ、もぉ命のあらん限り走って探して来ます。来ますがなぁ……、大阪も広い。上町辺をちょっと探したかて、半日やそこらかかりまんねや。どぉぞ、三日だけご猶予を

 ■よろしぃ、三日待ったげる。せぇだい探して来なはれ

 ▲へいッ!

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 いやはや・・・とんでもない親旦さんと奥様ですな・・・。
 その3に続きます。

前回の落語の徒然でお約束した通り、今回は「崇徳院」の全文掲載とさせていただきます!長いので2〜3回に分けての掲載になると思います。メンドくさいかも知れませんが、お茶でもすすりながらお楽しみください。今日全て掲載できるかどうか・・・ちょっと自信ない・・。頑張りますけどね・・。

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 この頃はもぉ、男女の交際の方はいたる所ででけますけどなぁ、カルタあんまりやらんよぉになってしまいました。

 まぁ昔はそんなんやさかい、男女が歩いてると後ろから冷やかしたりするんです。若い娘……、まぁ家にもよりまっしゃろけどねぇ、ちょっと堅いおうちの娘はんやとか、若い娘さん一人で歩くのでも嫌がるてな人があって、

 「何やねん? そんな顔して帰って来て」「そぉかて、うち帰って来るあの道は、若い男の人がいっぱい並んでて、なんやかんや冷やかさはんねやわ」「それやったら、こっちの道から通って帰って来たらえぇやないの」「あっちは、誰も居やはらへんがな」ほなどないせぇいぅのかいな、思いまっけど。

 まぁ、そんな気持ちが誰にでもあった。まだ恋患いと言う様な、のどかなものがあった時分のお噺でございますが、


 ▲熊五郎でやす、えらい遅なりまして

 ■おぉ、熊はんか、待ってたんじゃ、さぁさこっち来とぉくれ

 ▲いえ、朝からちょっと守口さして行っとりましてな、今帰って来たらうちの嬶(かか)が「ご本家から急の使いや、早よ行っといなはれっ」ワラジも脱がんと飛んで来たよぉなこって、何のご用でございますかいな?

 ■またおまはんにな、ちょっと骨折ってもらいたいことがでけた、といぅのは……、せがれ、作次郎のこっちゃ

 ▲若旦那?

 ■ん、二十日ほど前からふとした風邪が元で寝込んでしまいよったんじゃがな、色々とお医者にも見せたんじゃが、どぉにも診立てが付かん。一日いちにち重るばかり、食事も喉を通らんよぉんなってまいよって、えらいことになってしもたんじゃ。

 ▲さよかぁ、ちょっとも知りまへなんだ。ほな、わてこれからお寺へ行て来まっさかい、葬礼(そぉれん)屋は誰ぞほかの方に……

 ■ちょっと待ちぃな、せがれ、まだ死んでへんねや

 ▲まだでやすかいな、埒(らち)の明かんこって。

 ■何を言ぅのや、埒が明いてたまるかいな。まぁまぁ、さるご名医と呼ばれるお方に診てもろたところがな「これは医者や薬では治らん気病(きやまい)じゃ」とおっしゃる「心に何かこぉ、思い詰めてることがあって、病になってる。そのあいだはもぉどんなえぇ薬飲ましても効き目はない。その思い事をかなえてやれば、たちどころに治るが、ほっといたらあと五日は危ないぞ」と、こない言われたんじゃ。

 ■元は分ったんじゃが、さぁ今度はその思い事といぅのを、わしが尋ねても言わん。母親が聞ぃても返事をせん「全体こなたは誰になら言ぅのじゃ」と言ぅたら、熊はん。お前を呼んでくれっちゅうねや。親にも言えんことを他人に、とも思たが、まぁ小さい時分から馴染んでたさかいなぁ、あんた馬が合うのじゃ、かえって言ぃ易いかも分からん。その思い事といぅのをな、お前の口から聞き出してやってもらいたいんじゃ。

 ▲さよか、えぇ何でもないこって。若旦那、奥の離れでやすか。ほなこれからちょっと行って来まっさ。

    **************************************

 ▲ちょっとも知らなんだなぁ、奥の離れこいつや……、薬の匂いがプ〜ンとして、病人の部屋こぉ締め切ったらいかんなぁ。薄暗ぁいがな、若旦那どこに居たはるか分からしまへんやないかい

 ◆誰ぁれも来たらいかんと言ぅてんのに、そこへ来たん誰や?

 ▲熊五郎でやす!

 ◆熊はんか? 待ってたんや。こっち上がっとぉくれ

 ▲あんた、患ろぉてはりまんねやてなぁ!

 ◆大きな声……、頭へ響くがな

 ▲いけまへんで、きょう日の若いもんが思い事して患ろぉてる、そんなん流行らん。しかし、わて喜んでまんねやで。親旦那にさえ言えんことを「熊五郎を呼んでくれ」そこまで信用されてると思たら、わても嬉しぃ。あんたのためやったらどんなことでもやりまっせ。どんなことやおっしゃい。

 ◆おおきに、もぉこれだけは誰にも言わんと死んでしまおと思てたんやけどな。熊はん、おまはんにだけは聞ぃてもらう

 ▲へぇ

 ◆せやけど、わてがこんなこと言ぅたさかいちゅうて、あんた笑たらあかんで

 ◆何の笑いますかいな。あんたの病気の元聞ぃて何で笑わんならん。

 ▲もしも笑われるてなことがあったら、恥ずかしぃて死んでしまうよってに、必ず笑わんといてなぁ

 ▲えらいまた難しぃんでんなぁ。死んでしまうてな大層なこと言ぃなはんな。いや、笑わしまへん。難しぃ顔してまっさかいな、さぁ……

 ◆そんな顔せぇでもえぇねやけどな、実はな。

 ▲へぇへぇ

 ◆そない言ぅても、おまはん……、わたいがこんなこと言ぅたら笑うやろ

 ▲あんたが先笑ろてなはんねん

 ◆ほたら、お前死ぬか?

 ▲何でわしが死なんならん、そんなアホなこと言わんと、あっさり言ぅてしまいなはれ

 ◆しゃ〜ない、思い切って言ぅてしまう。二十日ほど前に、定吉を連れて高津さんへお参りしたんや。

 ▲へぇへぇ高津さん、仁徳天皇、よぉ知ってる、それから

 ◆あぁせわしな。ご参詣を済まして絵馬堂の茶店で一服した

 ▲絵馬堂の茶店、向こぉ見晴らしがよろしぃがな、道頓堀までひと目に見えまっせ。腰掛けんなりじきにブブ汲んで来る、羊羹持って来ますわ。向こぉの羊羹分が厚ぅてうまいねや、何ぼほど食べた?

 ◆ほっときぃなそんなこと……、一服してるとな、そこへ入っといなはったんが、お供を四、五人連れて年の頃なら十七、八、それはそれは美しぃ水も垂れるよぉな綺麗ぇなお方や「世にはうつやかなお方もあるもんやなぁ」とわたしがジ〜ッと見てるとな、先さんもこっちを見てはったかと思うとニコッ
と笑ろてやった。

 ▲そら、向こぉが負けやがな

 ◆睨み合いと違うのやで。あとから来て、先ぃ立たんならん羽目になって出て行きなはったあとを見ると、緋塩瀬(ひしおぜ)の茶帛紗(ちゃぶくさ)が忘れたぁる。わたいが持って行て「これ、あんたはんのんと違いますか?」と手ぇから手ぇへ渡したげるとな、丁寧にお辞儀をしはってまた茶店へ戻って来はって「料紙を出せ」とおっしゃる。

 ▲そんな無理なこと言ぅたらいかんわ。高津さん辺りに漁師が居てますかいな、あらやっぱり浜手の方へ行かなんだら……

 ◆違うがな、料紙といぅたら紙に硯を添えて持って来る。サラサラッと何やら書いて、それをわたしの手に渡すと、逃げるよぉにして出て行きなはった。
 ◆手に取って見ると見事な筆跡でな「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の」としてある

 ▲あぁ、そらやっぱり油虫のマジナイでっか?

 ◆アホなこと言ぅねやあらへん、おまはんなんか知ろまいが、これは百人一首にもある崇徳院さんのお歌で、下の句が「われても末に 逢わんとぞ思う」その下の句がわざと書いてない。
 
 ◆書いてないところをみると「今日は本意ない(ほいない)お別れをいたしますが、いずれのちには嬉しゅ〜お目にかかれますよぉに」といぅ、先さんのお心かいなぁと思たらな、わたいもぉ恥ずかしながらファ〜ッとなってしもて、家へ帰っても、そのまま頭が上がらん。
 
 ◆人のことばっかり思い詰めて寝てると、えらいもんやで、天井へその娘はんの顔がこぉ浮かんで来るねん。欄間の天人の顔がその人に見える、床の間の掛軸(かけじ)の鍾馗(しょ〜き)さんの顔までがその人の顔に、最前からお前としゃべってるやろ、ほたらおまはんの顔が、段々とその娘はんに……

 ▲ネキ寄りなや、この人は。気色悪いなぁホンマに。よぉそんだけ思い詰めたなぁあんた。いやよろしぃ、あんたそこまで思い詰めたんやったらな、わたしも骨折りまっせ。先さんがどんだけのご大家の嬢(いと)はんか知らんけども、ここの家(うち)もこんだけの身上(しんしょ)や、よもや釣り合わんてなことおまへんやろ。どこのお方だんねん、どこのお方だんねんそら?

 ◆それが……、分からん

 ▲分からん? え? どない分からん……? 何にも分からんのん? 抜かったなぁ、何で定吉っとんにでもちょっとあと付けさしてやらんねや。そんな「何にも分からん」てな頼んないこっては……

 ▲いやいや、分からんなら分からんで、また何か手だて考えてみますわ。とにかくなぁ、気を確かに持ちなはれや。そんなもん思い詰めて死んでしまうてなことあきまへんで、しっかりしなはれ、よろしぃな!

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 長い・・・・。ここいらでチョット一休み。その2に移ります。
 お付き合い御願い致します。
 

さ〜て、今宵も一席お付き合い願います。
今回は先日ワタシの友人が結婚したのも踏まえて、恋愛モノ(?)といきましょうか・・。
『崇徳院』です。

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 〜あらすじ〜

 主家の若旦那の病気の元は、高津さんの絵馬堂の茶店で出会うたどこぞのお嬢さん。別れ際に書いて手渡してくれた「瀬を早み岩にせかるる滝川の」という崇徳院さんの御歌の上の句は「いずれまたお目にかかりましょう」という謎だという。恋患いというやつです。

 親旦那から相手のお嬢さん探索の依頼を受けた手伝いの熊五郎は、一日中大阪の街をかけずりまわるが手がかりさえつかめない。このままにしておかば、若旦那の生命が危いというので親旦那も必死です。「三日のうちに探してくれたら蔵付きの借家と三百円」という賞金を出したから熊五郎も大張り切りです。

 ところが二日たっても見つからない。ついに三日目は、女房の発案で道を歩きながらは勿論床屋、風呂屋てな人寄り場所へ入った時は、「瀬を速み」という歌を大声で言うという方法をとります。大阪中の風呂屋と床屋を何十軒とたずねたが反応はゼロです。くたびれ果てて入った床屋で一服していると、五十くらいの棟梁風の男が入ってきて、本家のお嬢さんが恋患いで寝込んでいるとの事。相手の男に崇徳院さんの歌を書いて手渡したことなどを喋るので、ついにここで互いに探す相手が見つかり、めでたく一対の夫婦ができあがります。

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 この噺は長いです。けど、聞いていてとても心温まる感じがします。まあ、熊五郎さんも親旦さんに「蔵付き借家+三百円」と聞いたら走り回らずにおれませんわな。熊五郎さんの御上さんも大した女性です。ちょっとその辺のところを全て書き出してみますね。

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 ●んまぁ〜、結構やないかいな、あんた家主さんになれるんか。三百円なんて、あんたが手伝い(てったい)仕事一生懸命やったって一日の日当四十八銭にしかならへんねやで。運が向いて来たんやし、しっかりやらなあきまへんで。わてもな、心当たりチョイチョイ尋んねといたげる

 ▲頼むで!

 欲と二ぁり連れといぅのはえらいもんでございまして、二日二晩といぅものは大阪の町中をグルグル・グルグルと尋ね回ったが、ど〜しても知れまへん。二日目の晩方になると、欲も得も抜け果ててボケ上がってしまいよった。

 ▲あぁ……、こぉなったら若旦那より、わいの方が二日ほど早いで。もぉ腹は減ったし、嬶またボヤキよるやろなぁ……、ただいま

 ●何ちゅう不景気な顔して帰って来んねや、この人。え? 何ぼ探しても分からん……、そぉ、しょがないがな。なぁ、どっち道わてらみたいな肩の悪い夫婦(みょ〜と)がそんな大きな運がつかめるはずがないがな。諦めなはれ、なぁ……、先さんにもご縁がなかったんやし、こっちも運がなかったんやさかい、諦めなしょがないやないかいな。
 ●せやけどあんた、毎日いったいどんなこと言ぅて道歩いてなはったんや?

 ▲へっ?

 ●どんなことを言ぅて道を歩いてなはった? ちゅうねん

 ▲どんなことて……、黙って歩いてたんや

 ●えぇ? ほな、何か。あんたこの二日間、黙〜って大阪の町中歩き回ってたん? それで知れたら、知れる方が不思議やないかいな。
 ●えぇ? あんたそないして道歩いてたら「わてが本人です」て誰が出て来るねやいな? こんな不細工な……、いぃえぇな、そらまぁあんた「別嬪の娘はん居てはらしまへんか?」ぐらいのことは聞ぃて回ったやろけども、そんなことぐらいでは分かるわけがないがな。
 ●えぇ手蔓(てづる)があるやないかいな。その崇徳院さんの「瀬をはやみ」とか何とかいぅ歌。わたしの考えでは先さんも、ヒョッとしたら恋患いなったはると思いまんねん。せやから、その歌あんた詠(うと)て歩いてたら、それを聞いた人が「アッ、どこそこでその歌聞きました」とか「そんな噂が耳に入った」とかいぅて、手掛かりがつかめんもんでもないのに……
 ●黙って歩いてたやなんて、まぁあんた、そんなスカタンやとは思わなんだなぁ……。もぉこれを探し出さんと生涯頭のあがる見込みなし。わてもぉ、ひとまずな、荷物まとめて大和のおばはんとこ帰るさかい……

 ▲ちょ、ちょっと待ってくれおい。よその嫁はん探さんうちに、こっちが夫婦別れしてどないなんねん。あした一日残ってる、あした何とかして探し出すよってにな。今日はもう寝さしてぇな

 ●情けない人やなぁ。ほな、今日はもぉ寝なはれ。その代わりな、あしたの朝早よ起きてブブ漬けでもかっこんで、探しに行くねやしッ。もぉ寝なはれ!

 ▲お休み……

 ●さぁ起きなはれ!

 ▲寝る間もなぁ〜んにもあれへん

 ●さぁ起きなはれ、起きなはれ。そこにご飯の支度がしたぁる。それ早いこと食べて行くねやで。それでなるべくな、床屋さんとか、風呂屋さんとか人さんの大勢集まるところ行て、今の歌言ぅてたらえぇのん。分かったなぁ

 ▲うん……

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 と、まあ、しっかりした嫁ハンですな。

 ちなみにこの噺のオチ(さげ)はこの熊五郎さんとお嬢さんの所の棟梁があって、熊五郎さんは驚き嬉しくてこの棟梁につかみかかってその男ハンというのはウチの若旦那や!!といいます。するとお嬢さんの方の棟梁も己んとこの若旦那か!ってのでお互いにコッチへ来い!いやいや、お前がコッチへ来い!とつかみ合いになった挙句に床屋の鏡に花瓶が当たって鏡が粉々になります。で、床屋の主人がお互いが探し人見つかってメデタイがな!それよりこの鏡どないするねん!というと熊五郎が「心配するな。崇徳院さんの下の句じゃい!」といいます。下の句とはなんぞ?と聞かれて熊五郎さんが、「割れても末に買わんとぞ思う」となるのです。

 崇徳院上皇の句は「瀬を速み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢わんとぞ思う」です。意味は「今日は本意ないお別れをいたしますが、いずれのちには嬉しゅ〜お目にかかれますよぉに」ってなとこですかね。ナカナカ粋で見事なお嬢さんです。教養がある事を醸し出していますよね。

 「瀬を速み 岩にせかるる 滝川の 割れても末に 逢わんとぞ思う」という句を知っていないといけませんが、噺の中で説明がでます。噺を聞いていると長い噺ではありますが面白いです。実際に聞いていただくほうが良いでしょうね。この噺は。文章化したら難しいです。〜あらすじ〜もかなり私なりに要約したんですけどねぇ・・・・。


 明日は夜間メンテナンスがあるためにお休みしますが、土曜日には復帰いたします。

 土曜日にこの『崇徳院』を全文掲載してみましょう!お約束します!


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