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根付生活(旧)
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私の中でのランキング的に、「印籠と根付」「カウンティ美術館図録」に続くおすすめ本です。

この本は根付というものを、本来の姿というか、もっと引いて見る事ができます。
根付だけに興味が行ってしまい、「とにかく根付!」と鼻息荒くしてた昔の私にとってこの本は、
それこそハンマーで頭をぶん殴られたくらいのショックでした。何年も根付を見ていて、それなりの
知識もあるつもりだったんですが、正直全くわかっていなかったわけです。非常に視野が狭かった。
考えてみれば、あの「印籠と根付」にも見事な印籠がたくさん載っていましたが、根付は根付、印籠は
印籠、と分かれて載っていたので、なんとなく別物として考えていて、彫刻品としての単体での根付、
蒐集物としてしか根付を見ていなかったんですね。

あくまで私的な好みで言うと、武士が使っていた印籠と、それに付いている根付っていうのは、職人の
技術は凄いけどちょっとつまんない。だいたい印籠のフォーマットは決まっていて、それに施す絵の
センスの勝負。面白いのは商人や町衆が付けていた嚢物と根付。それこそ形から材質から意匠から
色から殆どオーダーメイドで千差万別、本当に面白い。この本はそんな嚢物を存分に堪能出来ます。

そしてこの本がとくに素晴らしいのは、その写真の美しさで、普通の印刷物の4倍の線数で印刷されて
いて細密な金具や細かな布の質感の違い、色の再現度など他の本を圧倒していて、提物を見たい場合
これ以上のものは無い!と断言します。よくぞこういう本をこういう体裁で出してくれた、と
拍手を送りたい。
とにかくカッコいい。面白い。題材、色の組み合わせ、センスが素晴らしい。こういうものを
江戸時代の町人は颯爽と腰にぶら下げていたのだと思うと、本当に羨ましいです。時代劇などで
ちょこっと写るだけの巾着、提物の世界がこれほど豊かなものだとは想像もしませんでした。

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で、いくつか紹介する訳なんですが、当然の事ながらここでこういう画像を見せても伝わるわけは
ないので、そのへんは割り切ります。是非本を見て欲しいです。

左/金唐革に、紐ではなく非常に凝った金具で締めるようになっている巾着。獅子の根付。赤い緒締
も全体のアクセントになっていて上手いです。ワイルド系ですね。
真ん中/当時貴重なインド木綿に江戸切子の変わり瓢箪の根付、前金具は金の打ち出しで蝉。羽には
七宝という非常に凝ったもの。透明すぎない江戸ガラスの質感が逆に良い味を出してます。
右/落ち着いた赤い縞唐木綿に、珍しい金属の打ち出しでのお多福根付。渋い色合いに根付と金具の
金属光沢がカッコいい。

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左/鮮やかなオランダ更紗と籘編みの煙草入れに、犬の根付。カラフルなんだけど、彩度が
抑えてあるのでセンス良く見えます。気分によって、たまにはこういうのも付けてみたいのかも
しれませんね。
右/オランダ更紗に焼き物の瓢箪根付。このふっくらとした形、いいですねー。ちなみにこういう布は
輸入されていた珍しいものなので、どの部分をどういうふうに切って使うかは、嚢物師のセンスの
見せ所でした。この組み合わせはとてもいいと思います。

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左/根付は鯛を抱えた恵比寿、金具は大黒様に緒締は小槌というおめでたい意匠。このふくらみが
良いです。こうして見ると、提物はシルエットが非常に大事ですね。きちんと作って形が崩れない
ようにしてあります。
真ん中/これまたお洒落な煙草入れですね。やっぱり、お洒落に見えるかどうかっていうのは色も
あるけど、全体のシルエットで決まるような気がします。わずかに反った肩と赤い糸の縫製、江戸
ガラスの瓢箪根付に、加納夏雄のあっさりとした瓜の前金具がとてつもなく粋です。
右/鉈豆の香木製煙管筒が未完成で残されたものに、あとから名人懐玉斎が白檀で蓋を彫ったもの。
こういう、エピソードを読んでも面白いです。よく見ると、鼈甲のなめくじが這ってます。ニクイ。

この本に載っているひとつひとつが、職人の手抜きの無い仕事ぶりが伺えて素晴らしいです。
まさに当時の腕の立つ職人達のコラボ品で、根付師や、嚢物師、金工師、組紐師、さらには
籘編やガラス職人、革や紙や布やその他の様々な職人達が腕を振るった品を組み合わせているのです。
是非、江戸時代にこういう世界があったという事を知ってもらいたいものです。

私もこの本を見てから、自分で根付を使って袋を提げたいと思いましたが、現代作られている物では
良い袋が見つかりませんでした。まあ、この本であまりに目が肥えすぎたせいもありますが・・・。
この本を見て思うのはやっぱり、袋がかっこ良く見えるか否かは、まずシルエットがばちっと
きまっているかどうかだと思います。袋を作っている人に聞いてみると、実用するにあたって、
容量であるとか、形であるとか、「実用にあたっての便利さ」を求められるから仕方が無いという
事らしいのですが、わざわざ根付と提物を今あえて腰に付けるのならファッションとしての格好良さ、
それのみを求めたほうが良いと思います。入れるとすれば、携帯かipodか、せいぜいそのくらい。
現代の色々なモノを袋に入れて根付で提げるというのは、ちょっと無理があります。

根付は作る人がたくさんいますが、嚢物は作る人はいないですかね?江戸時代の提物のテイストを
現代のバッグなどに取り入れてる人はいないのか?和物ブームで、取って付けたような和風な
バッグや財布なんかよく見ますが、こだわりが全然感じられないです。って、そう思うのも
この本を見たせいですね。でも、そういうのがあったら欲しいです。作った人に会いたくなるような
袋が。

次回は金具編です。


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    本のハイビジョン画像ですね。鞄作りの人がこの本を欲しがっていました。縫い目のかがり方など細かい仕事は今では至難の技だそうです。良い袋物には良い根付や緒締、表金具がつきものですね。どれか一つでも違っていたら後付けでセットにしたものかも知れません。こういったセットを骨董店で見つけることは今では皆無だそうです。

    [ net*uke*o*ch* ]

    2010/12/5(日) 午前 5:59

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    詳しい解説ありがとうございます。
    シルエットが綺麗ですね。

    武珍

    2010/12/5(日) 午前 8:58

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    netsukeyoichiさん、この本の存在を教えて頂いてありがとうございました。初めてページをめくって開いた時の事は忘れられません。根付を見ていましたから、それまで煙草入や提物を散見してはいましたが、こういう世界だとは予想を超えていました。鞄作りの人も是非参考にして貰いたいと思います。いろいろなモノ作りの人に刺激を与えると思います。

    楽虫

    2010/12/5(日) 午前 11:52

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    武珍さん、この本、点数という意味でも凄いけど、ひとつの写真から受け取れる情報量が凄いんですよね。職人のこだわりが感じられる物はやっぱりいいなと思います。

    楽虫

    2010/12/5(日) 午前 11:55

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    話を聞いただけでも欲しくなる内容ですね。
    こういう物は一職人の力では成し得ない事ですよね。
    自分もいつかこういう仕事に関われるように腕を磨いておきたいです。ありがとうございます。

    [ ねこすけ ]

    2010/12/5(日) 午後 2:30

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    着物を着ていて思うのですが、すぐに取りださなければいけない物って意外と嚢物に入れるといざという時に取り出しにくくて。だから、結局携帯とかは袂に入れてしまうんですよね〜。一度側面にジッパーを付けて実用性を・・・とか考えましたけど、結局使いにくくて^^;そういう意味でも、実用性というよりもスタイル重視で根付と緒締めとセットで誂える事が出来たら素敵だな〜って思いますね♪

    時計に合わせてスーツを仕立てる。

    靴とベルトを同じコードバンで仕立てる。

    西洋のこういう感覚に通じるお洒落なのかもしれませんね。

    よんろく

    2010/12/5(日) 午後 6:29

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    根付を鑑賞用でなく実用とする時代を復活させたいと思っていますが、立派な根付に相応しい袋物を作る人がいなくて。誰かやってくれませんか?

    [ net*uke*o*ch* ]

    2010/12/5(日) 午後 7:59

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    ねこすけさん、分業の良さが極限まで生かされてる世界ですね。今は個人の作家の時代なので、なかなか難しいのかもしれません。かといって、自分でやれる事も限界があります。

    楽虫

    2010/12/5(日) 午後 11:05

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    46.3さん、和装される機会があるんですね。そういう意味では、もうネクタイみたいに、使わないけどお洒落のアイテムとしていつも腰に付けるもの、と割り切った方が良いのかもしれませんね。和装の方は時々見ますが、提物を提げるところまで気が回っている人を見ると「お!」と思いますし、カッコいいですよね。

    楽虫

    2010/12/5(日) 午後 11:11

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    netsukeyoichiさん、根付は好きで作る人もそこそこいますが、釣り合うような袋物作れる人は見当たりませんね。今まで需要も無かったから無理も無いと思いますが、ただ物が入れられるだけじゃなく、「おっ何だろう」と目が留まるようなものが欲しいですね。関係ないですけど前に教室の方が持ってきたティーポット型のバッグは通じるものがあると思いました。

    楽虫

    2010/12/5(日) 午後 11:16

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    あ、革装のハードカバーの本を模した嚢物があったらいいな、と思いついちゃいました。
    スマートフォンが入るくらいの。

    [ あしゅりん ]

    2010/12/6(月) 午後 10:35

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    あしゅりんさん、いいですね!この人本が好きなんだろうなあと伺えます。根付と緒締は何がいいかなとか、考えたら楽しいですよね。誰か作ってくれないかなー。

    楽虫

    2010/12/6(月) 午後 11:58

  • 文具尽くしの根付に緒締は地球儀、金具は眼鏡でいかがでしょう?(笑)

    よんろく

    2010/12/7(火) 午前 0:26

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    楽虫さん・・・娘道成寺見立て煙草入れ!?
    どこかで?見た覚えないですか??
    現在は私の所有物!ですよ!! 許可取って下さいょ!!(@−@)

    [ 宮組 ]

    2010/12/7(火) 午前 1:08

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    46.3さん、それもいいですね。使う人の好みで皆違うものになるっていうのは、贅沢ですよね。

    楽虫

    2010/12/7(火) 午前 1:48

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    宮組さん、大変申し訳ありませんでした。

    楽虫

    2010/12/7(火) 午前 1:52

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    ごめんなさい・・・冗談ですよ!
    気にしないで下さい

    [ 宮組 ]

    2010/12/8(水) 午前 0:26

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