座乱読無駄話日記

読書や趣味、日常のことなど不定期に語ります

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善い天使、悪い天使

 天使と悪魔  
 これは、よく対比されて、小説や映画のみならず、マンガやアニメなどでも、使い古された感がありますね。
 最近、「マグダラのマリア」や、「処女懐胎」、「アダムとイヴ」、「キリストの身体」で、ハマっていた岡田温司先生の最新刊「天使とはなにかーキューピッド、キリスト、悪魔ー」(中公新書)を、やっと手に入れました。
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 この先生の本は、キリスト教美術史としては、毎度刺激的で、宗教絵画を歴史として楽しめる知識が満杯です。
 この中で、「堕ちた天使のゆくえ」の章が、まさしく、天使と悪魔のお話で、スッキリ説明されていました。
 ここで、再び、ロレンツォ・ロット昨日登場した「受胎告知」の絵も、このシリーズの「処女懐胎」に解説されていましたが、またのちほどふれます)。
 この画家は、とても変わっていて、宗教画に、表面に現われるものだけではない、なにか隠された「意味」があるんじゃないかと、観る者に深読みさせるような要素があるんですね。
 その画家の「ルシフェルを退治する大天使ミカエル」という絵があります。
 この戦う天使と悪魔が、顔がよく似ているし、悪魔がさほど「醜い姿」をしていない。むしろ、天使に剣を折られて、甲冑やら服をはぎ取られ、今まさに天界から落ちて行こうとする・・・・という感じなんですよね。
ロレンツォ・ロット「「ルシフェルを退治する大天使ミカエル」
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 普通、天使と悪魔の戦いといえば、天使は、美々しい甲冑を着て勇ましく、白い羽を大きく広げて光り輝いていて(たいてい金髪巻き毛)、悪魔は、裸で皮膚は黒いか、深緑とか赤茶とか、おおよそ人間的ではない肌触り(触ったわけではないですが)の、気持ち悪い色で、羽は黒い蝙蝠の羽で、頭には角があったり、牙があったり、想像出来る限り醜い姿を画家が工夫をこらして描くものです。
 なのに、対等の戦いののち、負けた方が身ぐるみはがれて落っこちる・・という絵を、この画家は描いているんですよ。羽の色だって、二人とも同じだし、形もさほどかわっていないでしょう?
 ところで、中世の聖人伝説のネタ本といえば、「黄金伝説」(ヤコヴズ・デ・ウォラギネ・平凡社ライブラりー)がありますが、著者は、13世紀のジェノヴァの大司教です。
 この本の中で「すべての人間には、二人の天使、すなわち善い天使と悪い天使が与えられている。」って、司教様もこういうことを言っているのです。
 悪い天使・・つまり悪魔は、もともとは天使であって、神に逆らって反逆したために、天界を追放されたんですね。
 また、人間の女性と婚姻したために「天使の資格」を失って(この場合、悪魔と人間のハーフの子供たちは超人的な力があったために滅ぼさねばならないとされたとか)、天界をはなれ、以後、人類に「悪」がはびこり、ノアの洪水がおきたという説もあるくらいです。
 また、追放されたのではなくて、自分の意志で、人間の中に入って、知恵を授けたり、文化を伝えたりしたとされている者もいたとされるのは、人類に火を与えたギリシア神話のプロメティウス的存在ですね。そのために常に天界からは「敵視」されているわけですが、イヴに知恵の実を食べさせたのは「悪魔」の一人で、そのために姿を醜い蛇に変えられたのだとか。それまでは、輝く黄金の冠とか、羽があって空を飛べたという話があるので、これも堕天使でしょうか。
 天使と悪魔は、本来は「兄弟」であるからこそ、近親憎悪というか、その戦いは果てしがないのでしょうかね。ミカエル・ルシフェル双子説もありますし・・。 
 岡田先生が、「処女懐胎」のなかで面白いことを言っておられます。
 天使と悪魔は裏と表だ・・というのですね。特にロレンツォ・ロットはそれを意識していたんじゃないかというのですが、例の「受胎告知」の絵の、大天使の影が、悪魔めいている・・とか。そういえば、この影は「ガーゴイル」に似ている気がしますが・・。
  ↓ロレンツォ・ロットの天使の影              (私流の「天使と悪魔」・・・・羽は省略)
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閉じる コメント(10)

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わたくし、キリスト教(ってか宗教全般)疎いのですが、「聖おにいさん」シリーズで名前くらいは知っているかも。
ルシファーはなんだか捻くれ者の堕天使ですか?
ガーゴイルってガーグル?

2016/5/10(火) 午後 7:14 アンダンテ 返信する

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今でこそ天使の羽は純白ですが、昔は7色だったり、斑だったり
色んなバージョンがあったみたいですね
ワタクシの好きなウィリアム・ブグローのファーストキスの少女は
蛾のような羽が描かれています

2016/5/10(火) 午後 7:47 [ fay*a*s200* ] 返信する

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善い天使と悪い天使。
複雑ですね〜・・・。
小学生の時、教会に通っていましたが、神様は全能なのに、堕天使は救えないのだろうか?と、疑問でした。
先生は、人に神様か悪魔か選ばせているのだと言いました。
その回答にもやもやした私。
でも最終的に悪魔を選んだ人が地獄に堕ちて、しかも滅ぼされてしまうなら、選ばせてはいないのでは?
否定しているだけでは?
まあ、悪魔を選んだ=滅びの道を選んだという事なのでしょうか?

2016/5/10(火) 午後 10:07 [ ALICA ] 返信する

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> アンダンテさま。こんばんわ。聖おにいいさんは面白いですねえ。あれに出てくる天使たちは、スーツ着てて、普段、羽たたんでますよね。あのアイディアすばらしい♪ルシファーは、魔王サタンと同一視されるので、多分「反逆天使」のなかでは一番、大物なんじゃないでしょうか? ガーゴイル・・まさしく、雨の音がうがいをするみたいだからそう呼ばれるみたいですよ。写真は、ノートルダムのガーゴイルです。

2016/5/10(火) 午後 10:16 [ 乱読おばさん ] 返信する

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> fay*a*s200*さま。蝶の羽はおそらく「妖精」じゃあないでしょうか? 大人ではなく、裸の幼児の姿をした天使は、本来、ギリシャのクピドの系譜を継ぐもので、もともとの天使の概念とは違うらしいのですが、務塚しいですねえ。でも、このブーグローの絵で、蝶の羽の生えたプシュケとかもなかったかしら? あれはちがったっけ? 記憶があいまいで、ヘンなこといいました。

2016/5/10(火) 午後 10:22 [ 乱読おばさん ] 返信する

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> ALICAさん。信ずる者は救われるとはよく言ったもので、多分、信じないと救ってもらえないんじゃないでしょうか? 天使を捨てるってことは、せっかく不老不死の身体を持っているのに、人間の女性などと夫婦になって、死すべき運命を選んだ大ばか者って思われてたりして。でも、多分「悔い改める」ると許される?
でも、そういう理不尽に、近代人たちは、反応して、ミルトンの「失楽園」では、堕天使を、運命を選び取ったものと位置付けて、美術の中でも、変化が現れたようですよ。醜くない、むしろ美しい悪魔が登場するようになりますから。

2016/5/10(火) 午後 10:28 [ 乱読おばさん ] 返信する

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すべての人間には、二人の天使、すなわち善い天使と悪い天使が与えられている。」って、司教様もこういうことを言っているのです。

悪い天使・・つまり悪魔は、もともとは天使であって、神に逆らって反逆したために、天界を追放されたんですね。

善と悪と無関心 人の心の中に潜在する意識
人が救われるのは 天に召されるとき すなわち死す
とき そんな気がする

2016/5/10(火) 午後 10:34 [ 浅太郎 ] 返信する

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> 浅太郎さま。ユング心理学を持ち出すまでもなく、人の心の中には、よい天使と悪い天使が住んでいる・・。日々、そう思います。
人が、死んだとき、体の中にいた2人の天使はどうなるんでしょうねえ。天と地に分かれるんだろうか・・・って、こういうのは中国の魂魄ですねえ。

2016/5/10(火) 午後 10:39 [ 乱読おばさん ] 返信する

まずは、乱読さまの描かれた絵画がとても美しいです。うっとり
そして、良い天使と悪い天使、天使と悪魔の定義や成り立ちについて深く考えました。

天使も人間と似たような危うさの中で存在しているのか... と気づいた時
実は、私も自分の心の中にある明暗や「魂魄」について思いました。

能楽『實盛』の謡の一節に出て来るんです。
♪ 我 實盛が幽霊なるが 魂は冥土に在りながら 魄は この世に留まりて

自分が真っ二つに引き裂かれないためにも、戒めていかなければ
結局は、自分に返ってくることですよね。
美しい悪魔に誘惑されかけても、断ち切って戻ってきました!

2016/5/10(火) 午後 11:52 月の真珠 返信する

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> 月の真珠さま。こちらにも有難うございます。実盛に出てますか!
東洋は魂魄とはじめから、魂の二種類あることを定義していますけれど、西洋人も自分の中に天使と悪魔がいるって、思っていたんでしょうねえ。
外から来る悪魔は「悪霊退散!」ってそれこそ、悪魔祓いすればいいけれど、自分の中にいる悪魔は、強固な意志でもって戦わなければいけないでしょうねえ。

2016/5/11(水) 午前 9:49 [ 乱読おばさん ] 返信する

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