座乱読無駄話日記

読書や趣味、日常のことなど不定期に語ります

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近・現代の女性の礼装

 先日「礼服(らいふく)」のところで、
「礼服ー天皇即位儀礼や元旦の儀の花の装いー」(武田佐知子・津田大輔 大阪大学出版会)
 第14章、「白襟紋付―近・現代におけるドレスコードの変相」について、ちょっと保留にしていましたが、これが、またとても興味深い。
 この「礼服」の本を執筆する経過については、後書きに武田佐知子先生が書いておられるのですが、大病をされて全体的な原稿があまり進まず、武田氏が全面的に執筆されているのが、この第14章ということでした。
 これは「近・現代のドレスコード」の文字が示すように、近代、女性の正装とされる白襟紋付・・つまりは留袖のお話です。

 黒留袖は、現代では結婚式に参列する新郎新婦の親族の衣装・・というほか、あまり着られることがありませんが、これは明治以降に徐々に決まってきた(このあたりがなんとも微妙ですね)女性の正装です。
 きっかけは武田先生が、文化勲章をうけられる脇田晴子先生に、天皇陛下にお会いするのに何を着て行ったらいいのか・・という相談をうけられた・・というところから話が始まります。
 宮中にお伺いするには、一応ちゃんとしたドレスコードがあり、招待状に、こういった服装をしてくるようにと書いてあるらしい(って、縁がないので見たことはありませんが)。その中に女性の和装としては「白襟紋付」と書いてある。
 その白襟紋付こそが女性の「正装」なわけです。
 「白襟」はもちろん、半襟に色ものなんか付けちゃダメよ・・ということでして、男性の正装の下にカラーシャツを着ないのと一緒です。
 しかし、上に着る「紋付」が黒留袖なのか色留袖なのか、諸説が一部にあるらしい。黒留袖は、招待した側が着るもので、招待された側は、黒は着ないのだ・・というような話なのですが、これは、現代の結婚式などの、親族が黒留袖、客は色のもの・・という慣例がそういう説を産んだようですが、もともとそんなに大した根拠があるわけではないようです。
 あ・・現在は、宮中では白襟紋付(黒、色どちらも可)だそうです。
                                            大山捨松↓
イメージ 1
 もともと、西洋諸国と違って、日本は、江戸時代以降、女性の社交界的なものが派手に行われることは、表向きなかったので、男性のように「正装」は特に決まっていなかったということでしょうが、裕福な商人や豪農などでも、男性が黒紋付であるように、女性も黒紋付が一応正装ではあったのですね。
  江戸時代の肖像画に正装した女性が、裾模様のない黒紋付を着て、華やかな帯を合わせているのなどもある。
 明治時代の結婚式の写真には、真っ黒な紋付を着て参列している女性が写っているのもあります。これは喪服ではないの?といわれそうですが、もともと、黒紋付は正装で、吉凶どちらにも用いられたようです。
 さらに言うなら、花嫁の正装とされる綿帽子、白無垢も、古い時代には、葬儀に参列している親族の女性が、まさしくこの綿帽子白無垢の姿をしている写真もあります。更にワンランク上の大正装というところでしょう。 
イメージ 2
 綿帽子も、つのかくしも、女性の髪のほこりよけで、本来は、御殿女中などが、外に出る時に髪が汚れるのでかぶっていたものだそうで、それが、女性の外での正装になったのかも。
 鹿鳴館の頃に、女性の参加があまりになかったのは、男性と違って(男性の洋装については、また別の機会に)、パーティどころか洋装なんてとんでもない貴婦人が多かったので、和服での参加もOKにしたら、現われた女性たちはほとんどが、黒留袖、色留袖少しといったスタイルだったそうです。
 やはり、きちんとした格好というと紋付、という常識は、むしろ上からの押し付けというより、着る側からの選択だったのかもしれませんね。
 明治初年には、黒紋付の模様のあるものでも、褄先に少しとか、衽にちょっととか裾周りに本の少しといった控えめのものから、だんだん華やかな裾模様になって行ったので、現代の留袖のようなものが出来た。 
イメージ 3
 この本に出ていた、女性皇族を囲んだ大勢の女性たちの集合写真には、真ん中にいる皇族だけが洋装で、周りは、物の見事に黒留袖ばっかり(中には、模様のない黒紋付の人も交じっている。多分年配者でしょう)。
明治30年頃(内田写真館)右から二番目の男性とその前の女性が新郎新婦。

イメージ 4
イメージ 5
  ↑ つのかくしをしているのは花嫁だけではない。
     黒紋付の裾模様のない女性もいる。
     でも、当時、写真は、女性が椅子に腰かけ、男性は立つ      ものと決まっていたのかしら? 
     座ってるのは花婿だけですよね。

←明治初年の茶道の先生。

 以前、私の母が、西本願寺の法要に参加した時には、黒留袖に半袈裟をかけて嬉しそうに記念写真を撮っていましたが、そういった儀式はともかく、普通、子供や孫などが結婚式をしない限り、黒留袖は着ることないですねえ。最近は、結婚式もしない人増えてるし。
 庶民の「正装」はリクルートスーツみたいな黒スーツだってことになれば、なんだか、寂しいですねえ・・・・。

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黒留袖、私も着たことがないです。
周囲でも着たことがある人、見ないです。
絶滅危惧種では!?

2017/1/16(月) 午後 10:22 [ ALICA ] 返信する

色留袖どころか、黒留袖すら持ってませんわ…着付けはできるけど、和服は我が家には一枚もない〜まあ、宮中によばれることないだろうからいいか…(爆)黒のリクルートスーツすらない。正装どころか普段着と仕事着の区別すらない。あ〜少は身なりを構わないとダメだわ。お茶の席にすら、普段着で行ってしまうから完全に変人だと認定されてるかもしれない。

2017/1/17(火) 午後 5:31 むにゅ 返信する

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> ALICAさ間。自分の子供の結婚式か、仲人をしないと着ないかも。本当に結婚式も簡略化され、なにしろ少子化で結婚する人が減ってきたら、そういった機会は失われていますねえ。多分、おっしゃるとおり絶滅危惧種なんでしょうねえ。

2017/1/17(火) 午後 6:51 [ 乱読おばさん ] 返信する

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> むにゅさま。普段着と仕事着の区別・・わ〜・・それ分かります。
さらに、以前勤めていた時は、職場に制服があったので、通勤着なんて本当に普段着でしたわ。しゃれたパーティにお呼ばれすることもなくなってきて、今は家の中と、外に出かけるときも着替えないくらいだもの・・。一日に何度も着替える「貴婦人」にはなれそうもないし・・・。

2017/1/17(火) 午後 6:57 [ 乱読おばさん ] 返信する

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そうなんですよね、武田先生ご病気で苦労されているとか、あの闊達な先生が・・・と思うと気分が滅入ります。
出来の悪い教え子としては服装史は苦手なんて言ってないでもっと色々と教えを請うべきだった反省しています。
そういえば先生の「いにしえから架かる虹―時と装いのフーガ 」という本はお読みになりましたか?服装史を絡めたエッセイ集なので読みやすい本です。あまぞんで中古で送料別80円で売っています。

2017/1/17(火) 午後 7:54 [ おけら ] 返信する

脇田晴子先生はお能も舞われていたので、お舞台はもちろんのこと
そのお稽古をそばで拝見したことも何度かあります。
おシテが晴子先生、御主人は間狂言でご夫婦共演をされていました。

装束は能の家からお借りしますが、着物や袴もたくさんお持ちでしたから
なんでもご存知と思っておりましたが、確かに、皇居へ天皇さんに会いに行く時
なにを着れば良いのか… 素直な疑問だったのでしょうね。黒留お召しでした。

能舞台では留袖を着る方もいらっしゃいますが、訪問着よりも
紋付(女性の場合は女紋)の色無地が一番格が高いとされます。

上村松園の作品『人生の花』で花嫁の娘に付き添う母も、角隠しのようなものをしています。
また、歌舞伎役者の妻などは夫の葬儀に全身白い着物ですね。
女としての死に装束という意味なのでしょうか。

2017/1/17(火) 午後 8:56 月の真珠 返信する

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> おけらさま。題名は聞いたことがありますが、直接服飾関係ではないかなと思っていました。面白そうなので、探してみます。ありがとうございました。ん

2017/1/17(火) 午後 10:54 [ 乱読おばさん ] 返信する

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> 月の真珠さま。脇田先生、能の催しのチラシなど頂いたことあるんですが一度も舞台を拝見したことがありません。今となってはとても残念なことでしたね。この脇田先生の黒留袖に、文句を言った人がいたようで、武田先生は、「いや、黒留袖は日本の正装だよ!」という勢いがあったかも。
葬儀の白装束は、本来、日本の・・というか東アジア圏の喪服では正装だと思います。天皇家の葬儀は、昔の絵などでは白い装束なのですが、今は普通の黒喪服になっていますね。明治になって、外国帰りの人たちが、西洋の葬儀を見て黒喪服を採用したようです。
以前、韓国の人の葬儀に参列したことがあるんですが、喪主や親族が、古来の白装束(素服)だったので、ちょっと感動しました。
確か、映画の「イヤーオブザドラゴン」(ジョン・ローンのやつです)では、ニューヨークの中華街の葬儀が、一族は白いスーツだった。こんなところでアジアの伝統なんや、とちょっと面白かったですよ。

2017/1/17(火) 午後 11:06 [ 乱読おばさん ] 返信する

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こんにちは、訪問ありがとうございます。


ブログ毎日、更新してるので、読んでいただけると嬉しいです。


失礼致します。

2017/1/20(金) 午前 10:49 [ T 〔ティー〕 ] 返信する

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> T 〔ティー〕さま。ご訪問ありがとうございます。創作は大変ですよね。私など、ヒトコママンガですら、ものすごく苦労しています。ストーリー性を持つなんてすごいなあと思います。がんばって下さい。

2017/1/20(金) 午後 7:09 [ 乱読おばさん ] 返信する

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