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「何で米軍は動かんのかな」伊庭はF15DJの後部座席で前席のパイロットに話しかけた。
「噂では大統領命令が出ているとか……プントラ大統領は中露に弱みを握られてる、ともっぱらの噂ですよ。下手に日本を助けるとアメリカが決定的な危機に陥る要因が何かあるんじゃないか、と、エライさんたちは言ってますけどね。
もうすぐアプローチに入ります」
4機のF15戦闘機はグアムの米軍基地に降りようとしていた。空自の機体だが、日の丸を消して米軍マークを貼り付けてある。
 
F15DJから降りた伊庭と、Cチームのもう一人のメンバー、正宗ジローことマサムネは駐機場のB1B戦略爆撃機に向かった。
「あくまで君たちは荷物だよ。君たちの存在はB1Bの乗員たちにも知らせていない」米軍の担当官は伊庭とマサムネに言った。
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アメリカへ運ぶ航空部品運搬用の細長いコンテナ。その中にまるでカプセルホテルのように人間一人が潜んでいられるスペースが作ってあった。そのコンテナ二つをアメリカ本国へ帰るB1Bに積み、飛び立つ。伊庭とマサムネはコンテナに乗り込み、荷物として爆弾積載スペースに詰め込まれた。
二人の持つ封緘命令の内容をもし担当官が知ったら絶対コンテナごと太平洋に投げ捨てろ、と言っていただろう。日本人が考えるとは思えない悪知恵と奇想天外な計画がそこには記されていた。
 
 
指定の時刻に伊庭とマサムネはカプセルから這い出てコックピットに向かった。
4人の乗員の内、二人を途中の通路で捕まえて拘束具でぐるぐる巻きにして爆弾倉の扉の上に転がした。
伊庭はその二人の哀れな姿をスマートフォンで撮影した。
マサムネがサバイバルナイフを手に先に立ってコックピットに突入した。
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「動くな!」伊庭は中国語で機長と副操縦士に言った。
間髪入れずにマサムネがナイフを素早く奮って副操縦士のスーツの右肩付近を切り裂き、右腕の上半分を剥き出しにした。こけおどしだが、やられた方はマジックに翻弄されたように思う。
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マサムネは刃物の扱いにかけては誰より巧みで、そのせいで◯◯◯◯扱いされ、つい先日まで「日本一の◯◯◯◯病院」と明治の頃より渾名される世田谷区の沢松病院に監禁されていたのだ。
マサムネと伊庭は副操縦士を座席から引きずり降ろすとこれも拘束具で縛り上げ、床に転がした。
「この座標へ飛べ」
伊庭は懐から中国語混じりの経度、緯度が、書かれた紙を機長の目の前に突きつけた。
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機長は信じがたい、という目の色になった。顔面から汗が滲み出ている。その座標はある地点を示していた。現在地から10分とかからない距離だ。
「ここに爆弾を落とせ、とでも言うのか?!」機長は怒鳴った。
「それとも彼らを落としたいかね?」伊庭は英語でゆっくりと言った。作ったような低い声だった。
伊庭はスマートフォンの画面に先程爆弾倉に置き去りにした機長の部下二人を映し出した。
「爆弾倉の開き方は知っているよ」
伊庭はマサムネに顎で示した。
マサムネは嫌みのようにゆっくりとスイッチを一つ操作した。近くのランプが点滅を始めた。
「やめろ、何をする!」機長が目を剥いて叫ぶのに、マサムネがナイフを副操縦士の顔に突きつけて応えた。
「これだけじゃ足りないのかな」
伊庭は感情が渇き切った声をかけ、スマートフォンの画面を切り替えた。別の写真が映し出された。
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夜の室内なのだろう、何の変哲もないリビングに二人の女が拘束されている。中年の女はソファーに押しつけられるように座った状態で背もたれの後ろから屈強な男に肩を掴まれていた。
もう一人、ミドルティーンの娘は上半身裸の東洋人に床に片方の膝で組み敷かれている。
東洋人の片手には大型拳銃が、握られていた。その銃口は女たちではなく、天井に向けられていたが、機長に激しい動揺と怒り、恐怖を感じさせるには十分過ぎた。
 
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二人の女は機長の妻と娘であり、写っている背景は間違いなく彼のハワイにある自宅だった。
副操縦士がナイフを突きつけられ、更に妻と娘が暴力、凌辱の危機にさらされている、というあまりに認めがたい事実を眼前にぶつけられて、機長の精神は完全に安定を失った。
呼吸は荒くなり、「何故こんなことに」「このハイジャック犯たちは何者なのか」と、冷静に考えるべき事ごとも考えるのは無理であった。
「あ、あ、おまえたちは……クレイジーだ!」喉が裏返りそうな息苦しさのなか、そう声を漏らすのが、精一杯だった。
「もう俺たちだけでどうにかなりそうだぜ」マサムネが英語で伊庭に言った。
「じゃあこいつも縛り上げちまうか」
必死で抵抗する機長を他の者同様にぐるぐる巻きにし、マサムネが4人の乗員全員を爆弾倉の開閉床に転がした。
マサムネがコックピットに戻ると、B1Bの進路は「目標」への直線距離に乗っていた。
「行けそうだな」マサムネがやれやれという感じで日本語で言った。
伊庭が英語でたしなめる。
「英語を使え、念のためな。俺たちは中国の特殊部隊員てことになってるんだ」多分、フライトレコーダーごと跡形も無くこの機体は木端微塵になる。だからあまり心配はないかもしれないが。
 
 
伊庭はコックピットでの操縦をマサムネに任せ、哀れな乗員たちにお情けのようにパラシュートを取り付けてやった。運が良ければ助かるよう、開傘索を手元近くに置いてやる。
コックピットに戻ると、目標まではあと十数分の位置だった。
「爆弾倉を開け」伊庭が言うとマサムネが、機器を操作し、爆弾倉が、開かれる。身動きの取れない4人の乗員たちは空中に投げ出された。
彼らの味わう恐怖心を想いながら伊庭はシートに身体を縛り付けた。
「俺たちも脱出だ」
マサムネが無言で頷く。
脱出スイッチが入り、B1Bのコックピットから二つのエジェクションシートが射出された。
B1Bランサー爆撃機は大統領官邸へ真っ直ぐに突っ込んだ。
 
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アメリカ大統領 マイケル・プントラ

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