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Papilio protenor
<分布> 本州・四国・九州・南西諸島に分布する。東北地方北部ではまれ。
国外ではヒマラヤ・カシミール・ビルマ北部・ラオス・中国大陸南半部・朝鮮半島南部・台湾などに分布し、原名亜種はインド北部〜中国大陸産。日本のものは分布の東・北限にあたる。
<生態> 本州などでは通常年3回の発生、4月下旬より姿をみせる。九州南部では3〜4回、南西諸島では4〜5回発生と推定される。
成虫は陽当りのよい地域よりも樹間のややうす暗いところに好んで棲息し、クサギ・トベラ・ネムノキ・ユリ類・ブッソウゲなどの花に吸蜜にくる。湿地で吸水することや汚物を吸うことがある。蛹越冬。蛹は植樹の枝、付近の樹木の枝、塀・垣根などでみつかる。
<食草> サンショウ・イヌザンショウ・テリハザンショウ・ミヤマシキミなどの野生ミカン科のほか、各種ミカン類・カラタチなどの栽培種も食草となる。キハダ・コクサギなどでも幼虫がみつかる。コスモスやクスノキで飼育した報告もある。
<雌雄の区別> ♂は翅全体が黒色で、後翅表前縁に黄白色の鮮明な横帯がある。♀の前翅の地色は淡く、翅脈が黒く目だち、後翅外縁の半月状赤斑は♂よりも発達する。
<変異> 春型は夏型に比べて一般に小型。斑紋は季節による変異が少ない。
台湾や中国大陸に分布するものは後翅の尾状突起がなく、日本産は尾状突起がある。
本州から九州南部にかけてのものは、とくに尾状突起が長く、ssp. demetrius Fruhstorfer とされる。尾状突起の長さは南下するほど短くなる傾向があり、クライン現象を呈している。尾状突起の長短は遺伝的なものと考えられるが、南西諸島南部では有尾、無尾の両方の遺伝形質が混じりあって北へ向かって移行していることが認められ、ここでは尾状突起の長さにいろいろな変化がみられ、ときに無尾のものも採集される。
沖縄本島周辺・八重山諸島のものは尾状突起が短く、後翅外縁の赤斑列は発達し、♀ではこの傾向が著しく、別亜種(ssp. liukiuensis Fruhstorfer)とされることがある。八重山諸島産の♀には赤斑列が二重に発達する個体がまれに採集される。また、八重山諸島産の♀の地色は2型あって、ひとつは通常のもので、もうひとつは地色がこげ茶色をしている。いまのところこの地色の♀は沖縄本島周辺では採集されていないようである。この地色もおそらく遺伝的なものと推察される。
なお、無尾型は本州から九州までの地域でもときどき採集されている。
保育社「原色日本蝶類図鑑」(全改定新版)(4刷) 第7図版1 25頁
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